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66. クローン人間の誕生はいつか? 10-31-97.

 その1.クローン羊の誕生の衝撃

  性質が全く同じであるクローン羊が英国で作られたとのニュースが流れ、その直後こんどは米国でクローンのサルも誕生したとの話でした。しばらくの間テレビを初めマスコミで大変な話題になりました。皆さんも良くご存知のことと思います。

 マスコミで流された情報の概略は、次のようでありました。

 「成長した羊から取り出した細胞を使って、もとの羊と遺伝的に全く同一のクローン羊を世界で初めてつくることに英国・エディンバラ近郊のロスリン研究所が成功したことが2月23日に発表された。つくり出されたクローン羊は「ドリー」と名付けられ、生後七カ月の現在も無事に育っている。

 クローン動物づくりは、受精後間もない胚(はい)から取り出した細胞を別の未受精卵に移植する方法が確立され、優秀な牛の繁殖に応用されているが、成長した動物の細胞からクローンをつくるのに成功したのは初めて。

 生物学上の画期的な成果といえる一方で、理論上は人間にも使える技術だけに今後、議論を呼びそう。クローンづくりに成功したのは同研所のイアン・ウィルムット博士らで、博士らは成長した羊の乳腺(にゅうせん)から取り出した細胞からDNA(遺伝子の本体)が入った核を採取し、ほかの羊の未受精卵に移植。化学処理で刺激した後、代理母の子宮に移した。昨年七月、もとの羊と全く同じ遺伝子を持った羊が生まれた。

 実験の成功で、優秀な家畜と全く同じ子供を大量に生産したり、 成長に伴って遺伝子がどう変化していくかを親の遺伝子と比べることで、老化の研究が進むなどの成果が期待される。

 一方、専門家らによると、同様の手法を用いれば、ある人間と遺伝的に全く同一のクローン人間をつくることも理論的には可能。しかし、ウィルムット博士は、倫理的に許されないし、そのようなプロジェクトに参加する気は全くない、と話している。」という報道です。

 羊と猿でクローンが作られたことから、この技術を使うとすぐに人間にも応用が出来る可能性を示唆しました。それを受けた形で、例えば、米国のクリントン大統領もクローン人間に関する実験は行わないように科学者に注文を付け、更にこの類の実験には研究費を出さないと宣言したようです。日本国内でも、多くの方々による論議がなされているようです。果たしてクローン人間は、今後絶対に誕生しないのでしょうか。

 今年はバイオの先端技術のある意味での新しい時代の幕開けとして、歴史に残るクローン動物元年であります。私達は新しい歴史の劇的な変換点に生きている事を肌で感じる事ができる時代に生きていることを意味します。

 ここで言うクローン動物は、微生物と関係はありませんが、科学に関係する面白い情報ですから、本日はクローン人間に関する田口個人の情報を提供致します。少し長い話になりそうですが、最後まで我慢してお付き合い下さい。

その2.バイオ先端技術は何でも作れる?

  20世紀最後に華々しく登場してきた、俗に言う“バイオ先端技術”は、大きく分けて3種類の技術に支えられています。

 遺伝子であるDNAを増幅させたり結合させたりする“組換えDND実験技術”、異種の複数の細胞から1個の新しい細胞を作る“細胞融合技術”と受精直後のまだ細胞が分化してない分割期の状態にある受精卵を操作して新しい性質の細胞を作る“前期胚操作技術”とに分類できると思います。

 その1.でも紹介したように、クローン動物を作る技術は、3番目に記載した“前期胚操作技術”に属します。しかし、今回衝撃的に報道されたのは、羊の受精卵を用いたのでは無く成長した動物の細胞からクローンを創ったこと、およびこの実験の成功で、優秀な家畜と全く同じ子供を大量に生産したり、 成長に伴って遺伝子がどう変化していくかを親の遺伝子と比べることで、更に老化の研究が進むなどの成果が期待されるからです。

 現在のバイオの技術を駆使すると、原則的にはどのような新しい細胞も創れる可能性があります。例えば、サルの神経細胞とニワトリの筋肉細胞の合いの子細胞、ホルモンを作る細胞と免疫抗体を作る細胞との融合体、老化しないで永遠に生き続ける細胞、更には“男でも子供を産める”などです。

 遺伝子であるDNAの発見の簡単な歴史を、「北里柴三郎の秘話」の欄に「DNA発見小史」として掲載する予定で、ただ今原稿を準備・整理しています。興味のある方は、期待していて下さい。

 その3.最初のクローン動物は1981年に作られた

  人間が創造した科学技術でクローン動物として最初に報告されたのは、クローンマウスの誕生で、1981年のことでありました。

 スイスのジュネーブ大学のイルメンゼー教授とアメリカのジャクソン研究所のホップ博士は、核を取り除いたマウスの受精卵に別な細胞の核を移植する技術を用いて3匹のクローンマウスを作りました。従って、クローン動物を作る技術は、今日になるとそれほど新しく珍しいことではありません。

 それよりも驚くことは、細胞が融合して新しい細胞を創り出すという現象は、地球上に生物が誕生して以来、自然界では営々と行われてきている、ごく普通の現象であることです。その最も適切な例は、卵子という細胞と精子と呼ばれる細胞の受精という、特別な技術を用いない自然な細胞融合であります。細胞同士の融合は、太古の昔からの伝承であります。

 その4.クローン人間はいつ誕生するか?

  「クローン技術は、倫理的・宗教的な問題、および人間の尊厳等の側面から、人間にだけは応用しない、応用させない。」と科学者が良心的宣言を行ったとしましょう。

 学生に質問してみました、「クローン人間は今後永遠に誕生しないと思うか?」、または「いずれ誕生すると思うか?」、誕生してしまうとしたら「いつ頃になると思うか?」、「そのいつと言う時は、来年なのか、それとも21世紀になるのか?」等を聞いてみました。私の奇妙な質問に対して「全員アキレタ顔」をして無言でありました。

 私の回答は、「現実に多くのクローン人間が存在する」であります。誰一人として自分の身近に存在する生きているクローン人間に接していても「彼等・彼女達はクローン人間だ」と考えていないだけなのです。

 太古の昔から「一卵性双生児」は存在します。この一卵性双生児は、1個の受精卵から生まれたのでありますから、まさにクローン人間なのです。もって生まれてきた遺伝子は全く同じです。それですから、親でも二人の子供を識別出来ない程、外観的性格的によく似ています。

 その5.クローン人間から学ぶこと

  一卵性双生児だけを入学させている学校が何処の国にも存在します。かなり昔から一卵性双生児は、研究されているのです。どのようなことが具体的に研究されているのか知りませんが、しかし、クローン人間としては、認知されていないようです。

 聞いた話ですが、例えば、一卵性双生児の一人が「前の晩に見た夢について話し出し、恐かった夢のなかでの出来事を途中まで話し出す」と他のもう一人が「その夢の展開を結末までもを語りだし、ここで目を覚ました」と終わ等競ることも可能なのだそうです。夢みたいな不思議な話です。一卵性双生児は、遺伝子や肉体的特徴などが同じであるだけでなく、「見た夢までもが同じ」なんだそうです。遺伝子の働きとはなんなんでしょう。不思議な現象と思いませんか。この遺伝子は、脳の神経細胞の遺伝子を意味し、例え同じでも皮膚や髪の毛の細胞の遺伝子の働きではないのです。

 その6.環境の遺伝子への影響

  ところが、一卵性双生児の二人でも異なる環境で育つと、肉体的な特徴などには変化はないそうですが、多少異なる個性が育つことがあるのだそうです。環境が違うと同じ夢を見ることは無いし、さらに、衣服の色を初め多少趣向的な事柄も違ってくるのだそうです。

 例え一卵性双生児で遺伝子が同じであっても、「育つ環境が異なると違った個性が生まれる」。これを遺伝やDNAの専門家は、どのように説明されるのでしょうか。まことに生命や遺伝という営みは、不思議で大変に面白いと思います。脳の神経細胞が面白いのです。

 環境が健康に与える影響については、別な項目に掲載する予定で準備中です。

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