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88.カイワレ大根の種子にO157.  3-30-98.

その1.米国産種子がO157汚染源.

 新聞やテレビなどのマスコミの報道によると、「カイワレ大根の米国から輸入された種子が病原性大腸菌O157に汚染されていたと厚生省が調査結果を発表」といっせいに報じていた。

 2年まえ大阪府堺市の学童に起きた学校給食による集団食中毒で突然話題になった病原性大腸菌O157は、皆さんもご存知のように、その後全国的に猛威をふるった。発生時には、カイワレ大根が原因と疑われたか、結果的としてはカイワレ大根からO157は見つからなかった。

 今回発表された調査は、厚生省の食品衛生調査会 食中毒部会 食中毒情報分析分科会が担当し、愛知県蒲郡市と横浜市の患者の二人が食べたカイワレ大根を生産した神奈川県内の業者から米国オレゴン州産の種子14袋、計350キロを入手し、うち120キロについて調べた。

 通常の培養検査では、O157を検出できなかったが、遺伝子レベルの検査をしたところ70検体中14検体からO157などが出す毒性の強いベロ毒素遺伝子を検出した。さらに感度の高い検査を実施し、一部からO157に特有の遺伝子も確認した。

 種子には生産段階でO157が付着した可能性が強く、厚生省は近く米国に生産段階の衛生状態の再点検を要請し、国内でも栽培前に種子を一律殺菌処理する必要性があり、農水省に対し衛生管理の徹底を求めた。種子の大半は輸入だが米国産は食中毒事件をきっかけにほとんど使われなくなっているという。

その2.栽培前に種子を殺菌処理

 「遺伝子レベルの検査をした結果」と報道されていたが、厚生省の発表には、今回の調査で見つかったO157の遺伝子が、食中毒になった患者から分離されたO157と同じなのか、似ているけれど違うのか、または全く別物なのかについての報道はなかった。少し物足りなさを感じた。

 種子を購入したら、栽培する前に殺菌処理をするように要請したらしい。この殺菌処理をすることは大いに結構と思いますが、私個人ははなはだ疑問に思うことがあります。どのような方法で殺菌処理をすれば種子は安全になり、安全の確認は誰の責任で行うのであろうか、という疑問です。

 食中毒とは全く無関係ですが、「モヤシ」はカイワレと似ている方法で栽培されているようです。似ているというのは、モヤシにする豆の種子に水を散布して発芽させ、適当な大きさまで成長させる点です。光にあてないことは、カイワレの場合と違う点です。

 ところが、このモヤシの栽培で、時としてモヤシに雑菌が繁殖してモヤシが腐って商品にならないことがあるようです。この雑菌はヒトに病気を起すことは無いのでヒトに対しては安全なのですが、モヤシの生産業者としては施設全体に広がりモヤシが全滅する大変な問題となります。

 モヤシにする種子に付着している雑菌汚染の問題に取り組んでいた人が偶然身近にいましたので、この問題解決の難しさを多少見聞きしていました。どうして雑菌を単に殺すだけのことが難しいのでしょう。私が見聞きしていたケースでは、次のような事柄が問題解決を難しくしていました。

 「種子に付着している雑菌」と簡単に表現しますが、種子の表面に付着している雑菌は問題になりません。多分通常の消毒薬または殺菌処理で解決できるでしょうから。ところが、種子にはカタイ膜が外側にあり、この膜が種子を守っています。問題は、このカタイ膜(殻)の内に潜んでいる細菌を殺すことは、モヤシをだめにしても良い場合は例外で、膜(殻)を通過し内部にいる細菌を殺せる適当な薬品があれば簡単かも知れません。しかし、強力な薬品は、多少なりとも毒性と残留性の問題が有ります。

その3.抜本的な解決法?

 新聞に掲載されていた厚生省の発表には、「種子の殺菌処理の必要性」とありましたが、消毒ならはできるかも知れませんが、殺菌は大変に難しいことではないかと思われます。試してもいないで推測で発言するのは科学的ではないのですが、農産物である種子の殺菌処理は一般に考えるほど簡単ではないと思うからです。

 カイワレ大根の生産者は、ある意味で先輩格のモヤシの生産者に解決法を伝授してもらうことが得策と思います。しかし、時間と金銭をかけて築き上げた企業秘密に該当する情報でしょうから、相談するにもそれなりの対応が必要かと思います。

 カイワレ大根の種子を取るための米国での栽培法がその他の国の栽培法と違うのでしょうか。違うのであれば米国以外の国より種子を輸入すれば、問題は解決するのかも知れません。

 カイワレ大根に限らず農作物は、本来無菌である筈がありません。土壌や大気中に存在する微生物が付着していても全く不思議ではないのです。例えば、麦ワラに納豆菌が付着しているから、ワラで納豆ができるのです。問題は、動物の腸管に生息する病原性大腸菌がなぜ種子に付着していたかです。米国に向けては、米国内の農業用水がO157に汚染されて無いことを確認する必要がありましょう。

また、厚生省に向っては、国内の患者から分離されたO157とカイワレ大根の種子から検出されたO157の遺伝子にかんする情報を是非公開して貰いたいと思います。全く違う遺伝子を持つO157であったと仮にすると、米国の種子は汚染されていても、国内で発生した集団食中毒とは無関係であったことが判るはずです。

 新聞記事を読み返してみると、新聞によって表現が微妙に異なりますが、米国のカイワリの種子がO157の汚染源と書いてあることに気がつきました。しかし、汚染と汚染源とでは意味は違います。記事を書く記者も新聞を読む人も、汚染か汚染源なのかを区別するべきでしょう。O157に汚染されていたことは事実として認めても、汚染源になるのか、又は汚染源であったのかは、現時点では全く解らない筈です。

 米国では、決定的な物的証拠が無くても、公的な機関が疫学的に原因と判断すると、そのものは原因物質と決定されるそうです。殺菌処理法の推奨から安全の保証に対して誰が責任を取るのかが決まらないと、抜本的な解決法は得られないかも知れません。厚生省も持っている情報を全て明らかにすれば、米国も日本政府に協力できる可能性が生まれると思います。本質的な解決法は、情報公開かも知れません。

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