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97.生カキのウイルス汚染の意味. 6-30-98.

その1.生カキによる食中毒.

 生カキの美味しいシーズンは、10月初旬から翌年の3月下旬頃までで、今年の賞味期間は終わりました。好きな人には、レモン等をちょっと掛けて食べる生カキのあのジュースが何ともたまらないようです。またカキ鍋でもカキの粒の中まで火が通る前に食べるのか美味しくいただくコツのようです。

 ところが、この生カキが原因で食中毒が全国で頻発していると聞きます。ある地方では、老舗の料亭のメニューからも、生カキが全く姿を消してしまったとも聞きました。また、ある生カキの養殖産地では、重要な地場産業であるにもかかわらず、年間の売り上げが激減しているとも聞きました。

 本当に生カキは食中毒の原因物質なのでしょうか。もし本当だとしても、なぜ最近話題になるようになったて来たのでしょうか、特別な事情があるのでしょうか。

その2.貝類のウイルスによる汚染状況.

 食品衛生法が改正されて、ウイルスも食中毒の原因物質に定められました。それまでは、例えば生カキが食中毒の原因であると考えられたケースであっても、原因と考えられる細菌が見つからない場合には、原因不明の食中毒として扱われていました。決して、生カキのウイルスによる食中毒とはなりませんでした。そのため、食中毒として届けられませんから、食中毒の原因ウイルスを調査する必要もありませんでした。

 ところが、ウイルスによると考えられる食中毒が頻発する傾向が強くなりましたので、厚生省はウイルスも原因物質に指定した次第です。食品による食中毒は、患者が散発することよりは集団で発生することが特徴の一つにあげられます。その結果、数十人もの人が同じような症状を訴えて入院するような状況になりますと、その患者を診た医療施設は食中毒として保健所に届出を提出する義務があります。届出を受け付けると、保健所は原因を調査する義務があります。このようなことから、生カキのウイルスによる食中毒が話題になりやすい状況になりました。

 生カキは、それほどまでにウイルスを持っているのでしょうか。カキは殻の付いたまま輸入できる時代になりましたので、現在国内で消費される生カキは、国産品と輸入品とがあるようです。東京都の調査結果の一部を以下に紹介します。

その3.二枚貝類のウイルス保有状況.

 東京都内で販売されている二枚貝または東京湾から採取した二枚貝のウイルス検査結果について、簡単に説明します。驚かないで最後まで読んで下さい。

 調査対象品目は、店頭から買い上げたカキ(殻つき、ムキミ)、アサリ等の二枚貝19種類の204検体と東京湾内6地点からアサリ、シジミ、ハマグリのほか通常は食さない二枚貝を含め11種類の54検体でありました。

 ウイルス検出状況を簡単に纏めると次のようでありました。市販流通の二枚貝204検体中60検体、および東京湾産二枚貝54検体中43検体から食中毒の原因ウイルスと考えられる小型球形ウイルス(SRSVと略称されることもあります)やA型肝炎ウイルス等ヒトの糞便由来の水系感染を起す可能性のあるさまざまなウイルスが検出されました。東京湾内の二枚貝では、検体が1検体と少なかったサラガイとヒラガイを除き、全ての種類の二枚貝から何らかのウイルスが検出されました。これは東京で売られている二枚貝の驚くべきウイルス保有状況を示しています。

 市販二枚貝では、アデノウイルスは19種類の二枚貝中16種類、コクサッキーウイルスは10種類、小型球形ウイルスは8種類、A型肝炎ウイルスは7種類、エコーウイルスは7種類の二枚貝より検出されました。東京湾内の二枚貝では、コクサッキーウイルスは11種類の二枚貝中10種類、アデノウイルスは8種類、エコーウイルスは8種類、 A型肝炎ウイルスは7種類、 小型球形ウイルスは6種類の二枚貝より検出されました。尚、ポリオウイルスは、いずれの検体からも検出されませんでした。

 以上の結果は、東京都内で市販されている二枚貝および東京湾内で採取された二枚貝のウイルスの保有状況を示すものです。この結果は事実です。しかし、それでは二枚貝を食べるとすぐに全ての人が食中毒になってしまうのかと恐ろしくなる人も多いかと考えますので、ここで少し説明を加えます。

 二枚貝をそれほど恐怖に考えないで下さい。その理由は、二つあります。二枚貝の内臓を調べたら、上に記したような成績になりました。二枚貝の内臓は、普通私達は食べないのです。通常食べる部分は貝の筋肉で、そこには殆どウイルスは存在しません。二つ目の理由は、二枚貝の殆どは普通生で食べません。加熱調理して食卓にあがりますから、加熱によりウイルスは死滅しています。これで多少は安心できたことと思います。

その4.二枚貝のウイルス汚染は何を意味するのか?

 東京都内で販売されている二枚貝の産地を特定することは、一般消費者には少し難しいことです。東京湾内で採取される二枚貝が保有しているウイルスは、どこから来たのでしょう。別な言い方をすると、どうしてウイルスを保有しているのでしょうか。

 二枚貝から検出されたウイルスは、動物や自然環境由来のものではありません。全てヒトのウイルスで、特に腸管内で増殖し、糞便とともに排出され、比較的抵抗性の強いウイルスです。なぜヒトの腸管内ウイルスが東京湾内の二枚貝から検出されるのでしょうか。

 都内の下水から検出されるウイルスの種類を調べると、都民が罹っているウイルスが良く判ります。下水のウイルスは、ヒトのウイルス感染の動態を良く反映しているのです。生活排水は適切な処理をされ、塩素などで殺菌された後、微生物学的にある基準値に達したことが確認されて初めて河川等に放流されます。

 この微生物学的な基準にウイルスという項目はありません。いろいろな関係官庁はウイルス学的な安全対策を検討していますが、いまだ規則としてはなんにもないのです。従って、ヒトが糞便と共に排出された腸管内ウイルスは、現行の水処理技術では抜け落ちてしまいます。

 河川の流水は、例外なく最終的には海へと流れ出ます。魚介類は、水中の溶存酸素を取り入れるために、オビタダシイ量の水を吸ったり吐いたりしています。海水にウイルスが存在すると、魚介類の吸い込む海水からウイルスは魚介類の体内にだんだんと蓄積されていきます。魚介類は、ウイルスの濃縮機の働きをしていることになります。

 生カキ等の二枚貝からウイルスが検出されることは海水にウイルスが存在する事を意味し、海水にウイルスが混入していることは生活排水の水処理がウイルスに対しては不十分であることを示しています。普通の二枚貝は生で食べないので良いのですが、カキは内臓こど丸ごと生で食べるところに、食中毒という悲劇がうまれる要因が存在します。

 安全な生カキを食べたければ、河川や海に放流する下水をキレイにする必要があります。生カキを食べて食中毒になるとしても、カキの養殖業者と調理者のみが悪いのではありません。水処理技術も悪いのです。また、全てのカキがウイルスに汚染されている訳でもありません。ある特定の生産地のカキは、調べている限りウイルスは検出されません。現在年間を通してウイルスの有無を監視している優良な養殖地区も存在します。そのうち、安全で美味しいカキと疑わしいカキが区別されて店頭に並ぶ日が来ると思います。その日が速く来るためには、消費者は先ず生カキが国産品か輸入品かを確認し、国産品であっても産地名を聞くことから始め、食中毒になったらその産地の商品は二度と買わない努力も必要かと思います。

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