100. 24時間風呂のヌルヌルはなんでしょう?. 7-21-98.
その1.快適な24時間風呂. 千葉県在住の方より24時間風呂について、ありがたい情報の提供と質問を受けました。この方の手紙には、24時間風呂を6年間も愛用し、現在は2台目の新しい機種を使っています。湯船のヌルヌルも水垢ぐらいにしか考えていませんでした。最近になってレジオネラ菌問題で通産省のホームページを覗いたら、次のような記載がありました。続いてかなり詳細に通産省の要望事項が説明されていました。この部分を要約すると、レジオネラ菌を含む細菌等の増殖によって「生物膜」が形成され、その生物膜の内部でレジオネラ菌を含む細菌が増殖すること、ヌメリを多少とも感じたらその日のうちに拭き取ること、生物膜内のアメーバーの数は浮遊生物量の10倍とも一説ではいわれていること等でありました。ヌメリとは、どうも生物膜と呼ばれ、細菌の巣窟らしいことが解った、と付け加えてありました。 そこで、私への質問が書いてありました。その質問とは、「曖昧模糊」の「暮らしと微生物」の2番「 2.24時間風呂は本当にきれい? 12-24-96.」に「◆ 追 加 ◆11-8-97」があり、そこで、横浜在住の24時間風呂利用者から「ヌルヌル」に関しての質問があったと書いてあるが、それに対して「私がヌルヌルは何であるかについて、お答えできませんと返事をだした」とは意外であった。「それは微生物の塊まりですよ」となぜ答えてやらなかったのでしょうか?.微生物の専門家であれば、「ヌルヌルが細菌の塊であることを知っていたのではないか」と言うものでした。 その2.湯船につくヌルヌル. 千葉県在住の方に、概ね次のような内容の返事を書きました。半年前の私には、確信が無いことが一つありました。確信・確証がないので、そのことには触れたくなかったのが本音です。それで、簡単に「ヌルヌルが何であるかについて、お答えできません」と返事をだしました。触れたくなかったそれとは、「ヌルヌルはレジオネラ菌を含む細菌の固まり」でないかという危惧の念でありました。 普通の風呂と24時間風呂の「ヌルヌル」は、多分成分が多少違うと思います。普通風呂の湯船の壁や床に付着しているヌルヌルは、確証はありませんが、体から出たゴミ、アカ、洗剤の残さや雑菌(アメーバーはいないと思われる)等の類だと思います。一方、24時間風呂の「ヌルヌル」は、雑菌と一括されますが、その雑菌の種類が普通の風呂のとは違うのではないかと思いました。仮にアメーバーを含む雑菌の巣であると仮定すると、その雑菌の巣にはレジオネラ菌がたくさんいても当たりまえかも知れません。 そこで、「湯船のお湯にレジオネラ菌が少なくなって良かった」と思っている人たちに、確信も無いのに「ヌルヌルはレジオネラ菌の巣」であるかも知れない、とは言いにくかったのです。私たちの分野では、物に付きやすい微生物が集まった膜状の物を「生物膜またはバイオフィルム」と一般的に呼ぶことがあります。生物膜を構成する微生物は、おかれた環境によってまったく異なります。ヒトの体内に留置した医療器具には、緑膿菌のバイオフィルムができ易く、できてしまうと薬物の透過性が悪いので、治療が難しくなることがあります。また下水処理場で流入して来る生下水を処理するのに生物膜を使っています。そこには、細菌のみならず原虫などの大型な生物まで混在し、共生しています。下水処理施設での生物膜には、下水中に混入してくるヒト由来のウイルスが付着します。ヒトのウイルスは、細菌などからできている生物膜では殖えることはないのですが、だんだんと蓄積しますから結果としては増量します。生物膜は、微生物屋にとっても厄介な代物であります。 その3.ヌルヌルの本体. 微生物を扱える人で24時間風呂を使用している方にお願いして、ヌルヌル中のレジオネラ菌を調べて貰いました。私の知りたかった事は、1.ヌルヌル中にレジオネラ菌は検出されるか?、2.検出されるとすると湯船のお湯より多いのではないか?、また3.ヌルヌルから腸管由来のウイルスが検出されないか?の3点でした。 ヌルヌルを定量的に一定量採取することは、意外に難しいらしいことが分かりました。ヌルヌルの量は、湯船の壁に均一に付着しているとは限らず、採取場所の特定から難しいようです。従って、お湯中の菌数とヌルヌル中の菌数を定量的に正確に検出・比較することはできませんでした。しかし、結論として、大きな誤差を含む数値ですが、「ヌルヌルからレジオネラ菌は検出されました」、「お湯とヌルヌルとどちらがより多くレジオネラ菌を含んでいるのかは、良く分かりませんでした」ということが判りました。それで、「ミズよりヌルヌルの方が常に多くのキレジオネラ菌を含みます」ということは、結論できませんでした。 ウイルスについては、検査試料の採取の仕方や調べ方に問題があって、ウイルスが存在するのか存在しないのかについて、結局のところなんの結論も得られませんでした。湯船につかる前にどの程度身体をよく洗うかによると思いますが、湯船のお湯には腸管で増殖するウイルスが、量的な関係は解りませんが、キット混入していると思われます。お湯と共に循環しているうちに、ウイルスは生物膜に取り付き、そこで安定な状態になる可能性がうかがえます。糞便とともに排出されるウイルスは、一般に物理化学的な抵抗性が強いので、42℃程度のお湯の温度では死滅させることは難しいと思われます。ビロウな話になって申し訳ありません。 その4.通産省からの要望. 千葉県在住で24時間風呂の愛用者の方から、ヌメリを気にしている24時間風呂愛好者に、またこれから購入を考えている人たちにぜひ通産省のホームページを紹介して下さいとのお願いがあり、親切にも通産省の24時間風呂に関するホームページのURLを教えて貰いました。次に記すところにアクセスして、内容を読んでいただきたいと思います。 http://www.miti.go.jp/topic-j/e39705ij.html また、この親切なお方は、自分で実践しているヌルヌル対策もあわせて教えて下さいました。抗菌とか制菌と銘打っているセラミックスがたくさん売られているので、それらから3種類をミックスして、効能書の2倍量の約1.5キロを網目状の袋に入れて、それを湯船につるしている。セラミックスは、1.水の腐敗防止や殺菌・抗菌効果があるもの、2.藻、アオコの発生を抑制効果、界面活性効果・防錆効果のあるもの、と3.十数種類の金属元素を約千百度前後で長時間焼成したもの、を使用しているそうです。結果として「ヌメリ」は、感覚的にいって50パーセント位はクリアーされたそうです。 1.5キロは、狭い浴槽ではチョット邪魔ですが、ヌメリの解消を考えれば、我慢できる程度と言われています。ヌメリが気になる人は、レジオネラ菌対策として何がしかを試みることも良いのではないでしょうか。一般の方々でも、お互いが持ち合わせている情報は些細でも交換することにより、また少し勉強することで、お互いが少しづつ賢くなれることを、今回強く意識させられました。千葉賢人バンザイ!
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