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120.微生物と仲良くなる本. 12-17-98.

 @微生物でおきる病気の本

 ホームページを開いてから微生物や微生物による病気に関心や興味をもっている方が以外に多いことを知りました。素人でも解るように微生物についてやさしく解説している図書を探している人も多いようです。残念ながら一般人を対象に書かれた本は多分ないと思います。

 そこで、一般の人でも読めると思われる微生物や病気についての書籍をジャンル別に紹介します。ここに紹介する図書の選定基準は、書籍店で購入できるもの、または地域の図書館でも備えていると思われるもを選びました。この中には少し古い図書もありますが、どこかで手にとることが可能と思います。

 ジャンルの分類や記載順序は、重要性や面白さには無関係で、私の独断によります。

 

 A微生物学の先覚者について知る本

 先覚者とは、一般の多くの人々がまだ床のなかで眠りについているときに、先ずひとり目覚めて働きだすまたは考えだす者をいうのでしょう。こうした先覚者なしには科学の進歩や発展はないのですが、他の人々より先立って動き出す時は、必ず人々の安眠を多少なりとも妨害し、その結果反感を招いたにちがいありません。微生物学の先覚者についての書籍を紹介します。

 

1.『微生物の狩人』

 ポール・ヘンリー・ド・クライフ著、秋元寿夫訳、

 世界ノンフィクション全集2、筑摩書房、1960

 この「微生物の狩人」は、神々のめでし人、スエズ運河、中江兆民奇行談と一緒におさめられている世界ノンフィクション全集 2のヒトコマです。著者のド・クライフは、米国ミシガン大学で医学をおさめた細菌学者で、1926年に出版した本『微生物の狩人』により一躍有名になり、文筆活動に転じた人です。本書の内容は、微生物学を創り出したレーウェンフック、ローベルト・コッホ、メチニコフ、ウォルター・リードとパウル・エールリヒの5人の先覚者を描いた物語です。先覚者とは、一般の人々がまだ眠りの床にあるとき、先ずひとり目覚めて働き出す者でしょう。こうした先覚者の存在を抜きにして新しい科学や医療の発展はありません。その先立って歩み出す当時は、必ず人々の安眠を妨害し、その結果反感を招いたに違いありません。先覚者は、その悪条件をいかに克服し、いかにして勝利を勝ち取り、その成功と業績をどのように活用したかなどをまとめた一般書です。

 

2.『パストゥール 世紀を超えた生命科学への洞察』

 ルネ・デュボス著、長木大三、田口文章、岸田綱太郎訳、

 学会出版センター、1996

 著者ルネ・デュボスは、アメリカで活躍したフランス人の微生物学者、環境科学者で、その上著作者としても世界的に著名な科学者です。パストゥールの崇拝者としても有名でもありす。本著は、学生と教師を対象に書かれたパストゥールの伝記「Pasteur and Modern Scienceパストゥールと現代科学」の訳本です。パストゥールは、物理学、化学と生物学の分野で大活躍した巨人ですが、どの科学分野にあっても、対象を注意深く観察し、考え、実験し、優れた洞察力で結論を導き出しました。「パストゥール博士はいままでに会った最高の科学者」と北里柴三郎博士に言わせた最高の科学者を知る最高の読み物です。

 

3.『ローベルト・コッホ 医学の原野を切り拓いた忍耐と信念の人』

 トーマス・ブロック著、長木大三、添川正夫訳、

 シュプリンガー・フェアラーク東京、1991

 著者のトーマス・ブロックは、米国の著名な微生物学者です。コッホは真の科学の革命者の一人です。独りの田舎医者としてスタートしたコッホは、ノーベル賞受賞者として、また19世紀末から20世紀初頭における医学研究、特に感染症と微生物学における傑出した存在です。このコッホ物語は、科学界から孤立して暮らし、かつ研究した独りぽっちの医師がいかにして自分をとりまく環境から抜け出し、巨大な医学者となったかをまとめたもので、原著は英文によるコッホについての最初の出版物です。

 

4.『増補・北里柴三郎とその一門』

 長木大三著、慶應通信、1995

 日本の近代医学の父てある北里柴三郎は、細菌学の世界的な研究者であり、医学の偉大な教育者、医政者として素晴らしい足跡を残しました。先覚者北里柴三郎の一生は、決して平坦なものではなく、絶えず渾身の力をふりしぼって難関に立ち向かう怒涛のごとき生涯でありました。彼は長い生涯を通して、よき師、強力な庇護者、よき弟子に恵まれました。北里が育てた高弟「北島多一、志賀潔、秦佐八郎、宮島幹之助、野口英世、高野六郎、金井章次、高木友枝」の8人を紹介する日本の科学発達史のヒトコマを紹介したものです。

 

5.『藤野・日本細菌学史』

 藤野恒三郎著、近代出版、1984

 日本細菌学史は、世界的な細菌学史の中の日本という地域の郷土史です。しかし、先人の業績をひもといてゆくと、日本新記録がそのまま世界新記録として国際的に承認されているものが多いのに驚きます。日本細菌学研究の開祖・緒方正規の言葉を現代人に伝えたい、最初の世界記録樹立者・北里柴三郎の原著論文を現代人に読んでもらいたい、ペスト菌発見にまつわるもろもろの話を詳しく伝えたい・・・・と著者の藤野恒三郎は考えました。要約すると、緒方・北里以前の明治初期の細菌学輸入状況から始め、終戦直後までの日本新記録・世界新記録というべき日本人による細菌学知識発展の経過を解説しようと試みたものです。本著作は、別名「藤野の日本細菌学史」と呼ばれ、日本で最初の総合的な細菌学史を纏めた労作・名著です。日本の細菌学の発達史を知る最高の図書として推薦します。

 

6.『伝染病研究所 近代医学開拓の道のり』

 小高健著、学会出版センター、1992

 かつてはペスト、今はエイズと伝染病の脅威は断えることがありません。明治の初め、コレラ、天然痘、そして赤痢と、伝染病の制圧と衛生環境の改善は国家的急務でありました。福沢諭吉らによって創立された「伝染病研究所(伝研)」を舞台に、北里柴三郎、志賀潔をはじめとする先人達の活躍が始まります。以来100年、いくたの成功と誤りを織りまぜながら、今日の医学が拓かれました。その間、北里研究所―慶大系と伝研―東大系の確執を抱え、時には政争の具に使われ、あるいは軍需生産や大陸防疫に動員されるなど、社会変動の波に翻弄されるなかで、去来するあまたの研究者によって人間模様がつづられています。著者小高健は、東京大学伝染病研究所(現医科学研究所)で37年の研究生活を送り、所長を勤めた科学者です。それだけに、紆余曲折した学問と研究所の発展過程が克明に画かれ、期せずして「内部からの批判」にもなっていると思います。

 B恐怖の微生物とうまく付き合う本

 細菌やウイルスなどの非常に小さなミクロの生命たち、彼らは歴史上の数多くの場面に登場し、世界の形成に大きな影響を与えたこともあります。そして今、この社会のさまざまな場面でもその驚くべき能力を発揮しています。その恐怖の微生物とうまく付き合う本を紹介します。

1.『細菌の逆襲』

 吉川昌之介著、中公新書、1995

 東京大学の細菌学教授であった著者吉川昌之介が時代を反映し話題になっている細菌学を平易な物語にしたのが本書です。細菌が原因の病気は、抗生物質の誕生により消滅の道をたどっていると、一般人のみならず科学者・医療人も思い込んでいました。ところが、現実にはペストの突然の大発生が起こり、免疫系を撹乱する病原菌やハイテク武装した新顔が出現しています。本書は、ヒトと細菌の長い生存競争のなかで産み出された巧妙な攻防の体制を紹介し、多くの疫病の発生を考察し、さらに抗生物質への過信と濫用の結果生じたMRSAなどり耐性菌の驚くべき実状と対策にまで言及しています。

 

2.『ホットゾーン』

 リチャード・プレストン著、高見浩訳、

 飛鳥新社、1994

 1980年に米国で起きたエボラウイルスによる汚染事件は、極めて衝撃的なできごとでした。このウイルスに感染した人間は、体の穴という穴から血を流して突然死を迎えます。エイズさえも鼻カゼに思えてくる殺人ウイルスが米国の首都ワシントンに出現し、その対応に米国陸軍の特殊部隊が出動したのです。人類がいままでに経験したことがないエボラウイルスによる脅威を克明にレポートした戦慄のノンフイクションです。

 主婦であり職業軍人でもあるナンシー・ジャックス中佐は、アメリカ陸軍伝染病研究所の学者で、エボラウイルス消滅作戦の第一線で活躍しました。皮肉にも彼女の夫であり上官でもあるジェリー・ジャックス中佐は、特別チームの指揮官を勤めました。自分の部下である妻ナンシー・ジャックス中佐のエボラウイルス消滅作戦への参加を拒みました。しかし、夫・上官の反対、万が一にも自分の生命が絶たれたと仮定して残された母親なしの子供の将来をも考慮しても、微生物のプロとしての自分以外にP4レベルの殺人微生物消滅作戦を成功させられる人はいないと決心し、彼女は命を掛けた作戦を展開しました。米国で発売後たったの2週間で38万部も売れたベストセラーの日本語訳です。

 

3.『死の病原体・プリオン』

 リチャード・ローズ著、桃井健司、網屋慎哉訳、

 草思社、1998

 パプアニューギニの山奥にフォア族という石器時代の生活を営んでいる裸族の存在が偶然のことから発見されました。約300集落で3万人程のフォア族語を話す人達の成人女性の多くは、1本か2本の杖を支えにしてやっと立っている状態で、常に身震いをしていることがアメリカ人医師ガイヂュセックによって観察されました。この観察からフォア族語で身震いを意味する「クル」の発見、同時に「クロイツフェルト・ヤコブ病や狂牛病」などの世にも不思議な「うつるボケ」の存在が明らかにされました。ガイヂュセックによる現在プリオンと呼ばれる「遺伝子のない病原体」による痴呆の発見から、ガイヂュセックとプルシナーの二人の科学者がノーベル賞を受賞するまでの経緯、およびプリオンというタンパク質がどうして病原体と考えられるようになったのかまでを著者リチャード・ローズが関係者に直接インタビューして集めた衝撃のレポートが本書です。

 

4.『殺人病ファイル 最も危険な56のウイルス・細菌・寄生虫』

  21世紀感染症研究会編、

 日経BP出版センター、1995

 医学雑誌の著名な編集者や記者達が「21世紀感染症研究会」を結成し、そもそもウイルスとはどうしてできてきたのか、簡単な構造をしている割りには知恵もののウイスルに関して、多くの疑問をもちました。殺人病原体の感染を受けたが最後、病原体は人の体をもてあそぶ。ある菌は2−3日で健康であった体を死に導き、あるウイルスは何年も体の奥底で眠り続けた後突然死神をたたき起こします。エイズ・エボラだけではない、ある日突然現れる未知の死病、天然痘も黒死病も忘れられかけた時代にひたひたと忍び寄る無数の病原体、最も危険な56の病原体を取り上げ紹介する一般書です。

 

5.『ケネディを大統領にした微生物』

 バーナード・ディクソン著、堀越弘毅・浜本哲郎・浜本牧子訳、

 シュプリンガー・フェアラーク東京、1995

 科学雑誌の編集者のバーナード・ディクソンが書いた微生物科学の物語です。細菌やウイルス、カビなどの小さなミクロの生命たち、彼らは歴史上の数多くの場面に登場し、世界の形成に大きな影響を与えてきました。そして今、この社会のさまざまな場面でもその驚くべき能力を発揮しています。本書は、こうしたさまざまな性質を持った、ときには信じられないような微生物についての75の話をまとめたものです。読者は、この世界を動かしているのは霊長動物の頂点に立つ人類ではなく、小さな微生物であることを思い知ることでしょう。

 

6.『図解雑学 ウイルス』

 児玉浩憲著、ナツメ社、1998

 科学記者であった科学ジャーナリストの著者児玉浩憲が、一般人を対象に書いたウイルス学の入門書です。人類は200年前から目には見えない病原体と果敢に戦い、病気の予防法を考案してきました。最初に登場した予防ワクチンは天然痘に対する種痘で、このワクチンのおかげで約20年前に天然痘という恐ろしい病気は地球上から姿を消しました。免疫システムを破壊するエイズウイルスが新たに登場してきました。この本では、動植物の生命を脅かし続けるウイルスの構造、生きざま、そして人間側の対処法などをやさしく図解したものです。

 

7.『院内感染ふたたび』

 富家恵海子著、河出書房新社、1992

 権威ある医師集団が大勢いる大学病院に軽い気持ちで入院し、また簡単で安全なものと信じて受けた手術であったが、実は返す返すも残念な夫の死を招いてしまった。著者も著者の夫も大学病院で病気を貰ってしまい、その結果命を奪われることなど考えてもいなかった。これが院内感染という医原病で、人の命を奪った張本人はMRSAと呼ばれる多剤耐性黄色ブドウ球菌でした。現代医療の落とし穴を赤裸々に問い掛ける問題作品です。

 

 C自己防衛のための学術書

 これまでに存在しなかった新しい病原体に起因した新たな感染症、また将来的に再び問題となる可能性がある恐ろしい感染症について,少し専門的ですが勉強しましょう。また海外で健康な生活を送るための本を紹介します。

 

1.『新興再興感染症』

 山口恵三編、日本医事新報社、1997

 新興・再興感染症とは、世界保健機構WHOが提唱した概念で、次のように定義されます:新興感染症とは、「過去20年の間に、それまで明らかにされていなかった病原体に起因した公衆衛生学上問題となるような新たな感染症」を言い、現在までに約20種以上が知られています。再興感染症とは、「かって存在した感染症で、近年再び増加してきたもの、または将来的に再び問題となる可能性がある感染症」を指します。感染症の専門家が各専門分野を分担して書き上げた「新興再興感染症」の解説書です。

 

2.『世界の感染症入門』

 感染症研究会編、菜根出版、1985

 感染症を専門とする著名な病院長や教授など10数名が「感染症研究会」を結成し、自分たちの専門から「世界の感染症」を易しく解説している入門書です。この入門書は、現在我が国が交流している熱帯地方を中心に途上国の感染症を取り上げ、海外渡航をする一般の人にも理解できるように実用的な入門書となっています。内容は、感染症とは、症状からの疾病分類、世界の感染症の動向、熱帯病の世界分布、細菌性疾患、ウイルイス性疾患、寄生虫病、性病等を網羅しています。

 

3.『海外で健康にくらすための手引き―先進国・途上国への出国準備より帰国まで』

 渡辺義一著、近代出版、1992

 海外での生活が長くまた外国での感染症にも経験と知識が豊富な著者渡辺義一が、多くの方々からの問い合わせや質問に応えたのが本書です。著者は、北里研究所から米国テキサス大学に転出し、その後スイス・ジュネーブの世界保健機構WHOで感染症部長を長年務め、さらにクエート国の厚生省とクエート国王の特別医事顧問を勤めた経験のある数少ない感染症の専門家です。この専門家が海外へ赴任される方々に対する相談に今ものっており、海外のどの地区にどのような病気があるのか、それを予防するにはどうするか、また海外で病気になったらどうすれば良いのか等を解説している珍しい本です。

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