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134.インフルエンザの症状. 2-22-99.

はじめに.

 インフルエンザは、紀元前のヒポクラテスの時代からすでに現在の表現で感染症と考えられていた記載がある。日本においても毎年冬になると流行がみられ、個人においても社会全体においてもはなはだしい損失を受けつづけています。インフルエンザに罹りひどい場合は、脳炎、脳症、心筋炎などを併発することもあり、決して単なる風邪ではなく、人類にとっても手ごわい相手なのです。

 

インフルエンザの感染経路

 インフルエンザは気道からの感染で起こり、咳きやクシャミで空気中に放出されたウイルスを含む微細な粒子を鼻や口から吸い込むことにより感染します。ウイルスで汚染されている手指から感染することもあります。ウイルスが気道の粘膜の上皮細胞に吸着すると、細胞内に取り込まれ数時間で増殖します。一個の感染細胞から数百個のウイルスが放出され、その数百個のウイルスがまわりの数百個の細胞に感染し増殖すると数百万のウイルスになります。最初に吸い込んだウイルスの数は幾らでもなくてもこれを繰り返すうちにウイルスの数は莫大になります。インフルエンザは、感染が即発症となりますから、20−70時間の潜伏期で症状が現われます。発症したときには、一億個以上のウイルス数になり、一回のセキで10万個程度のウイルス粒子が周囲に飛び散ると言われています。(小児科診療54:769-777,1991)。

 マスクをすることは、インフルエンザのウイルスを吸い込むことに対してはあまり意味がないと思われますが、咳きやクシャミでウイルスを撒き散らすことを多少抑制することでは意味があると思われます。

 アマンタジンというインフルエンザウイルスの増殖を抑制する薬が20年位まえからあります。このアマンタジンは、不思議なことにA型のウイルスにしか効き目がありません。日本国内では、精神科の領域では盛んに用いられますが、インフルエンザではあまり使われていません。インフルエンザの治療に用いると耐性なウイルスが発生すると言われています。しかし、インフルエンザを予防するには、アマンタジンは有効だとの報告が多くあります。これから新型のウイルスによる大流行が予測されるときには、予防に使うことは有効かと思われます。

     

インフルエンザの症状.

インフルエンザの症状は、発熱、上下気道症状、消化器症状、神経症状など多彩で、突然発症し全身的な症状が現われることが特徴とされています。一般の人達が考えている以上に多彩で、それも年齢によっても大いに違うし、また流行した年によっても違いがあるようです。年長児や成人では比較的典型的な症状を呈するが、5歳以下の年少児は多彩な症状を呈し脳炎や脳症などはこの年齢層に多いようです。乳児期の症状は典型的ではないが、一般に軽症のようです。流行した年によって症状が異なりますが、それはその年に流行したウイルスの病原性の強弱の違いにるようです。

内科の専門書からインフルエンザの臨床症状を抜粋して記載します。

発熱:

 インフルエンザは、39―40℃以上の突然の発熱で発症することが多く、急激な体温の上昇に続き悪寒・戦慄、小児では熱性けいれんを示すこともある。発熱の持続期間は、4―5日前後が多いが、7―10日続くこともある。

上・下気道症状:

 咽頭痛、咽頭違和感、咳き、クシャミ、鼻汁、鼻閉、胸痛などの症状がみられる。喘息発作や無呼吸発作も起こることがある。

消化器症状:

 嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状を呈し、食欲不振や脱水症状を伴うこともある。

全身倦怠感:

 発症早期に強い倦怠感で起きあがれない、または乳幼児ではぐったりして機嫌が悪くなることがあります。

神経系症状:

 けいれん、意識障害、めまい、脱力感などがみられます。

その他:

 眼痛、頭痛、筋痛、関節痛や身体のふしぶしの痛みなどある。

 

Cインフルエンザの合併症.

上気道炎:

 気道上皮細胞でのウイルスの増殖により、粘膜が侵され咳き、クシャミ、鼻汁などで発症する。咳きは、段々と乾性から湿性になる。

気管支炎・肺炎:

 インフルエンザに関連した合併症の死亡原因として肺炎が最も多い。

熱性けいれん:

 急激な体温の上昇を伴うことが多いため、乳幼児では熱性けいれんは稀でない。

筋炎:

 解熱後にふくらはぎやひざの裏の痛みによる歩行困難が多くみられる。数日から1週間で回復する。

心筋炎・心膜炎:

 重篤な合併症の一つで、不整脈や急性心不全により突然死の原因となることがあります。

神経系合併症:

 脳炎、脳症、ライ症候群などの中枢神経系合併症が知られている。

 

D細菌による二次感染.

 インフルエンザの10%程度に黄色ブドウ球菌や肺炎連鎖球菌などによる気管支炎、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎の頻度が高い。細菌による二次感染は、インフルエンザを重症化させる可能性を高くします。

 

参考図書

 「インフルエンザ?人類最後の大疫病?」、

 林雄次郎訳、岩波書店、1978年発行

 

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