143.健康をおびやかす健康食品。5‐30‐99.
米国の疾病管理センターCDCの研究者が、「アルファルハァがサルモネラ感染症の有力な運搬役である」と米国医師会雑誌に発表しました(JAMA,281:158)。そのなかで、感染するリスクは多分低いであろうが、抵抗性が弱いとみなされる高齢者や乳幼児はアルファルハァを避けるべきと指摘しています。 サンフランシスコやロサンゼルスから軽飛行機に乗ってラスベガスかグランドキャニオンに観光旅行した経験のある方は、眼下の砂漠にミドリ色の大きな円が点在していた光景を記憶していると思います。このミドリの円に見えたのがアルファルハァの栽培地なのです。 「アルファルハァ」と聞いてすぐに何に使うかが解る人達もいるかも知れませんが、多くの方々は「アルファルハァ」が健康食品である意味も判らないと思われます。アルファルハァは、通常モヤシとしてサンドイッチのトッピングやサラダの材料として使われます。日本国内では、カイワレ大根と呼ばれるモヤシのことです。
1995年に北米でサルモネラ菌による集団食中毒が何回も発生した。アメリカのオレゴン州とカナダのブリティシュコロンビア州での集団サルモネラ感染症の症例では、133人が確認されたが、北米全体では2万人にのぼるアルファルハァによるサルモネラ菌による感染者がいると推定されているそうだ。原因となるアルファルハァの種は、流通業者からモヤシの生産者を経て消費者に届くまえに、単一の感染源で汚染された可能性が高いと推察されている。種はモヤシ生産者に渡る前に、サルモネラ菌の好む低温・低湿度の環境下に保存されるため、多分保存中にサルモネラ菌は種の裂け目に入り込んでいると考えられる。サルモネラ菌の多くが種の裂け目に潜んで殺菌消毒を巧みに逃れ、発芽時期に増殖するのであろうと、研究論文は説明しています。
出来合い食品の細菌学的な安全性は大問題であるが、それは「家畜の糞便で灌漑用水を汚染するなど、不適切な農業慣行が作物による食品媒介性疾患の原因」になっいてる。しかし、農産物による汚染は、畜産物による汚染によるリスクほどではない。 砂漠地帯にミドリの円を眼下に見たとき、軽飛行機のパイロットにあれは何ですかと質問をしたとき、「アルファルハァ」で家畜の飼料にすると答えてくれた。しかし、それは大分前の話で、現在は家畜の飼料ばかりではなく人の健康食品としても消費されているのでしょう。何年前からカイワレ大根が日本人の食卓に上るようになったのかは定かではありませんが、カイワレ大根にする北米産の種は、O157のみならずサルモネラ菌も潜在的に汚染されている可能性が考えられます。 この論文で発表者である研究者達は、「アルファルハァのモヤシを食べることは今後も止める積もりはない」と付け加えています。 病原性大腸菌であるO157とサルモネラ菌は、赤痢菌やチフス菌などと同じ腸内細菌属に分類され、物理化学的要因に対する抵抗性は似ています。「水道水の殺菌力」に書きましたように、例えサルモネラ菌がカイワレ大根に付着していたとしても、水道水に漬けおきすれば、多分水道水中の塩素によって殺菌されると思われます。水道水を上手に使い健康を守りましょう。
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