▲▲ ▼▼

145.インフルエンザウイルスの名前の付け方 .6-6-99.

@インフルエンザ台風。

 インフルエンザのシーズン中には、各地の老人ホームでインフルエンザによると考えられる死亡例がつぎづきと報道されていました。 このインフルエンザ流行期間中には私のホームページのアクセス数は、毎日大変な数になりました。多いときには1日に600を軽く超えていました。この期間限定の激増は、インフルエンザに対する興味または疑問を一般の多くの方が持たれていたことを示すものと解釈しています。従って、インフルエンザについての質問も必然的に多くなっていました。インフルエンザウイルスの型と病原性に関する質問が特に多かったように記憶しています。

 マスコミの報道でもA香港型、Aソ連型とかB型インフルエンザウイルスという記載が私達の目にとまりますので、インフルエンザウイルスの分類の仕方と名前の付け方について、送られてきた質問に書いた返事をまとめて簡単な解説をしたいと思います。

 

Aインフルエンザウイルスを解剖する。

 微生物学の専門書やインフルエンザの専門家の話には、A香港H3N2やAソ連H1N1のウイルスという言葉が頻繁に用いられています。普通の方にはなんのことやらさっぱり解らないでしょう。そこでウイルスを解剖してみましょう。

 インフルエンザウイルスは、発見された順番にA型、B型とC型に分類されます。世界的に大流行するのはA型のウイルスが多いのですが、C型のウイルスはインフルエンザのウイルスではないのではと思われるくらいA型やB型のウイルスとは性質も異なり、大流行を起こすこともないようです。

 インフルエンザウイルスを解剖すると、次ぎのような部品から出来ていることが解ります。外観的に見えるウイルス粒子は、イガをかぶっている(表面に突起のある)栗のような構造になっています。表面には長短2種類の突起があり、長い方をH突起、短い方をN突起と呼びます。H突起はウイルス粒子が細胞の中に入り込むときに必要で、N突起は増殖したウイルス粒子が細胞の外に飛び出すときに必要であると考えて下さい。H突起もN突起も糖タンパクから構成されています。H突起はタンパクの種類から15種類に、N突起は3種類に分けられます。内部には糸状の構造をしている核タンパクが存在します。ウイルスの遺伝子としてのRNAと核酸を合成する働きの酵素としてのタンパク質とが結合している複合体です。

 少し難しい専門的な話になりますが、記号と思ってください。ウイルス粒子を構成しているタンパクは、免疫学的に抗原と呼ばれる性質を持っています。抗原物質は、抗体を免疫担当細胞に指示して、免疫グロブリンと呼ばれる抗体を作らせる機能があります。抗原と抗体は、カギとカギ穴のような関係にあり、良く反応し結合します。

 抗原と抗体とが反応して結合した状態は、肉眼では通常は見ることが出来ません。抗原と抗体の結合物を探し出すセンサー(または物指)に相当する手段を抗原抗体反応と呼びます。ここでインフルエンザウイルス(抗原)を説明するのに必要な抗原抗体反応には、NT(中和)反応、CF(補体結合)反応とHI(赤血球凝集抑制)反応の3種類があります。個々の反応の説明は、別な項目に譲ることにします。

 NT反応は、ウイルイスの違いを識別するのに用いられます。例えば、インフルエンザウイルスと夏カゼウイルスの違いを確実に検出できます。CF反応は、ウイルス粒子の内臓に相当する核タンパクを検出するのに使います。この反応は、感度が少し鈍いのが特徴で、A香港とAソ連との違いを識別する能力はありません。A型、B型とC型の違いは確実に区別できますが、それより細かい違いを検出することはありません。専門的にはウイルスの型(血清型)別に用います。HI反応は、ウイルス表面にトゲのように存在する突起としてのタンパクの識別に用いられます。同じA型のウイルイスでも香港型とソ連型は違うという結果を出せるほど鋭敏な反応です。H突起のタンパクがHの1番とかHの5番とかの区別に用いられます。この3種類のセンサー(抗原抗体反応)を組み合わせて用いるとインフルエンザウイルスの各部品を正確に見つけ出すことができます。

 

Bインフルエンザウイルスの名前の付け方。

 私は現在インフルエンザウイルスをヒトから分離する仕事はしていませんが、ウイルスの名前の付け方を理解して貰う為に仮定の作り話をします。

 相模原市内の小中学校でインフルエンザが流行し、学級閉鎖が相次いでいる。私が衛生研究所の担当者として、市内の学童百人のウガイ液を用いて当該ウイルスを検索します。ウイルスが分離されたので結果を厚生省に報告します。その報告書には、コトし最初に分離されたウイルスの名前は次ぎのように記載されています。

 A/相模原/66/99(H3N2)

この文字列の意味は、「相模原で1999年度に66番目の患者から分離されたインフルエンザウイルスA香港型」であることを示しています。

 担当者としては、分離したウイルスをCF反応で血清型を調べたらA型であった。次ぎにHI反応でH突起とN突起のタンパクを調べたら、H突起は3番でN突起は2番であった。NT反応でインフルエンザウイルスであることが確認された。H3N2は香港型である(H1N1:はソ連型H2N2:はアジア型)。それで学童から分離したインフルエンザウイルスに「A/相模原/66/99(H3N2)」という名前を付けたのです。

 

 難しい話ですが、インフルエンザウイルスの名前の付け方が少しは理解してもらえましたでしょうか。名前は、単に識別記号で、病気を起こす力の程度とは全く無関係です。

▲▲ ▼▼


Copyright (C) 2011-2017 by Rikazukikodomonohiroba All Rights Reserved.