146.コンタクトレンズは清潔に保ちましょう.5-30-99. 眼科領域で恐れられている 新しい病原体としてアカンソアメーバがあります。このアカンソアメーバは、眼の角膜にできた傷口から感染し、角膜炎や感染のし方によっては脳が侵され予後の悪い病気を引き起こします。日本国内ではこれから問題となる新しいアメーバーで、一般にこの名前はまだ馴染みが薄いと思います。このアカンソアメーバについて、簡単な話題の提供を試みたいと思います。
アカンソアメーバは、土壌、淡水中や冷却水中等の 自然環境にも生息する自由生活性のアメーバですが、日和見感染症として角膜炎や稀に脳膜炎の原因となります。日本国内での症例報告数は数十例と少ないようですが、世界各地で多くの報告がだされています。猛烈な耐えがたい痛みをともなう角膜炎を引き起し、場合によっては失明にまでおよぶ予後の悪い感染症のようです。詳しいことはまだ良くわかっていませんが、ビルの空調施設の冷却塔水中で肺炎の原因菌であるレジオネラ菌の格好の宿主となっているようです。レジオネラ菌がこのアメーバの中で増殖するようです。レジオネラ菌が分離される水にはこのアメーバが生息していると考えた方が良いのかも知れません。このアメーバ性角膜炎は、現在までのところ専ら コンタクトレンズ装用者に限られているようです。アメーバを分離する検査材料は、角膜患部の擦過物、患部の洗浄液、コンタクトレンズの保存液、稀には鼻腔洗浄液などです。本症のリスクファクターは、角膜の傷、汚染水による暴露およびコンタクトレンズの装用の3つで、中でもコンタクトレンズとの関わりが強いことが指摘されています。コンタクトレンズの装用者は日本国内だけでも900万人を越えるそうで、これらの人達の角膜はコンタクトレンズの着脱で傷が着き易く、冷房用の冷却水、24時間循環風呂の水やコンタクトレンズの保存液が傷のついている角膜に暴露されることにより本アメーバーの感染を受ける可能性が考えられます。
手指が汚染されるケースは、角結膜炎などではアカンソアメーバ等に汚染されている水やコンタクトレンズによる汚染が考えられます。元気良く運動したり増殖している状態のアメーバーを栄養体と呼び、環境が悪くなって休止状態にあるアメーバーをシストと呼びます。アカンソアメーバに限らずアメーバーのシストは、一般に栄養体よりは消毒剤、殺菌剤や紫外線などの刺激に対して強い抵抗性を示します。栄養体およびシストとしてのアカンソアメーバに有効な消毒薬はまだ判っていないようです。 コンタクトレンズの装用者は、角膜に傷を付けないように注意すると同時に、また24時間循環風呂の水やコンタクトレンズの保存液が傷のついている角膜に暴露されることのないよう注意した方が良いと思われます。 |