166 .湿度に弱いインフルエンザ.11-11-99.今年は冷たい北風のふく寒い冬になるのか暖冬なのか現時点での肌で感じるところからは良く判りません。しかし、過去 2回の冬には連続してインフルエンザが大流行し、百万人以上の患者がでました。その上多くの犠牲者がでたことはまだ記憶にあると思います。アット言うまに広がる恐ろしいインフルエンザに備える生活様式について、知って得する情報を紹介します。インフルエンザウイルスは、湿度の高い状態よりは乾燥している状態の方が生き残る率が高いことが、かなり以前から判っていました。これは、単なる言い伝え的な情報ではなく、れっきとした学術論文としての報告に基づいています。 実験で空気中にウイルスをミストとして均等に浮遊させること、および空気中に浮遊しているウイルスを定量的に捕捉することが意外と難しいために、その後この類の実験はあまり行われていないようです。報告があまり見当たらないために、正確な情報として一般の人達に紹介するには充分でありません。 そこで私達は、湿度とインフルエンザウイルスの生存率との関係を調べて見ることにしました。試験方法などを含めていろいろ難しいことがありましたが、この冬将軍の到来前に結果を出せましたので、ここにその概略を紹介します。 A.湿度でインフルエンザウイルスを殺せるか. 私達が開発した試験法でウイルスを霧状のミストにした場合、ウイルスを含むミストの平均的な水滴の大きさは、細菌の大きさより小さく約0.3ミクロンになります。しかし、室内の湿度はいとも簡単に測れますが、湿度を与えている水分としてのミストの大きさは、ものすごく微小らしく粒子の大きさを計測する機器でも計ることができません。このことは、水が自然に蒸発してできるミストは、計測できないくらいに小さいことを示していると思われます。ウイルスを霧状のミストにしてある容積の試験箱内に噴霧すると、約0.3ミクロンの水滴が湿度を与えることになります。そのため、計測できない位に微細なミストが湿度に関与する実験環境を作ることは、私達の技術では不可能です。 そこで、いろいろ考えた末にたどり着いたことは、極めて簡単な方法で自然状態と同じ大きさのミストを作ることができました。簡単に方法を説明します。プラスチック製の密閉できる箱に水を入れて、ある温度に放置すると、 30分も経過すると箱内は何処を測っても一定した湿度を得ることができます。この原理を用いて、プラスチック箱内の湿度を任意に変えることができました。次ぎに、特殊な静電フィルターにインフルエンザウイルスを噴霧して付着させます。条件を一定にすると付着させるウイルス量を任意の量に制御できます。ウイルスが付着しているフィルターを食塩液に浸して軽く振ると、静電気が消えるためにウイルスは食塩液に振り落とされます。その食塩液のウイルスの量を定量することは、私達にすると極めて簡単な技術です。ウイルスを付着させたフィルターを適当な温度と湿度に設定したプラスチックの箱内に一定時間放置し、その後残存するウイルスを定量し、最初に存在したウイルス量と試験時間経過後のウイルス量を比較して、ある湿度でのウイルスの残存率を算出することができます。 このような方法で行った試験の結果は、試験を実施する前に抱いていた私達の期待値をはるかに超えるものでした。簡単に纏めると、次ぎのように表現することができます。一定の湿度では時間が長くなると生残するインフルエンザウイルス量は零に向かって減少し、また一定の温度では 湿度が高くなるほど生残するウイルス量は減少しました。これからの話は、少し宣伝的になりますが、正確性を期すために必要なのでお許し下さい。私達の試験は、水の自然蒸発により得られるミストによる湿度のインフルエンザウイルスに与える影響を観察したことになります。 この私達の試験成績に基づいて、インフルエンザウイルスの生残率を一番低くする(別な表現をするとウイルスを殺せる条件となります)湿度条件を自動制御するシステムを三菱電気の技術陣が完成させることに成功しました。 これを搭載した加湿器が三菱電気から発売されている「のどガード」です。ここでは細かな条件や成績に付いては述べませんが、興味のある方は、 「優良認定」の13番として掲載されている「のどガード」を開いてください。「のどガード」は、希望の温度に室内温度を設定するとインフルエンザウイルスを最も減ら(殺)せる湿度にコントロールする自動装置が付いている新商品です。室内温度を出来るだけ低めに設定し湿度を高めに保持するとインフルエンザウイルスは減少するのです。湿度がどうしてインフルエンザウイルスを殺せるのか、その理由は私達にも判りません。とても不思議な現象と思っています。 インフルエンザは、インフルエンザウイルスを吸い込んで罹るウイルス性の呼吸器の病気です。ウイルスは、ホコリに付着して存在していると考えられています。冬の期間は、一般に空気が乾燥します。空気が乾燥すると、ホコリが舞い上がりやすくなります。室内の湿度をある程度高くすると、ホコリの舞い上がる量が少なくなり、ホコリに付着しているインフルエンザウイルスを吸い込むことも少なくなり、その上インフルエンザウイルスが死にやすくなるようです。湿度は意外な作用を示しているようです。 一寸注意しなければならないことは、湿度をあまり高く長時間保持すると、カビが生え易くなりましよう。カビの生育に最適な温度は27℃から30℃程度と考えられますから、20℃程度に室温を維持することが賢明と思われます。 インフルエンザが流行る冬季は、外から帰ってきたときは手をよく洗い、ウガイをして口腔内も洗い、更に鼻の内を清潔に保ちましょう。その後室内湿度をある程度高めに保持すると、室内に舞い込んだインフルエンザウイルスを減少させるため、インフルエンザに罹る確率が低くなるかもしれません。過信は禁物ですが、これが誰にでもできる簡単でお薦めできるインフルエンザ対策と思います。 |