▲▲ ▼▼

178.ガンの新しい治療法.12-1-10.

  1. インターフェロンの発見。
  2.   ウイルスの増殖を抑制する因子(ウイルス抑制因子と命名)の発見にかんする論文が1954年に東京大学・伝染病研究所(現在は医科学研究所と改名されている)の長野と小島によってフランスの学術雑誌に掲載されました。1957年になるとアイザックとリンデンマンがウイルスの増殖を干渉する因子(インターフェロンと命名)を発見したとイギリスの雑誌に発表しました。

      生きている細胞によって作られ「ホルモン」のように微量でウイルスの増殖を抑制する因子として登場したインターフェロン(INFと略称する)は、その後の研究からウイルスのみならずガン細胞の増殖も抑制することが明らかにされました。インターフェロンは、ウイルスやガン細胞に微量で作用する特徴を持っていますが、それは同時に生きている細胞はホルモンのように微量しか作らないという工業化に向かっては難しい問題を明らかにしました。

      現在の花形科学である遺伝子を組換える遺伝子工学とも呼ばれる組換えDNA実験手法を用いると、インターフェロンは大腸菌で作らせる可能性が実証されました。この世界で最初の仕事は、日本人の谷口の快挙でした。これが遺伝子工学の世界最初の成功例となりました。インターフェロンは、遺伝子工学の手法で大量生産が可能となったのです。

      ガン患者やC型肝炎ウイルスによる肝炎患者などの治療に大量のインターフェロンを投与することが可能になった結果、大量に投与すると意外にも副作用があらわれたり、またC型肝炎のように患者によってはあまり有効でない症例が見つかってきました。

  3. インターフェロンによるガンの新しい治療法。
  4.   これでもかこれでもかと大量に注射するよりは、少量のインターフェロンをある間隔をあけて間欠的に投与すると意外に有効なケースの存在も明らかにされてきました。

      長野泰一先生がウイルス抑制因子を発見した当時から京都府立医科大学の岸田綱太郎教授は、インターフェロンの示す抗ガン作用についての研究を精力的に展開してきました。私が個人的に尊敬している岸田教授は、京都府立医科大学を定年で去った後、私財の一部を投入して財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターを京都に創設し、インターフェロンについての基礎研究と臨床への応用研究を実施しています。

      ガン患者から血液を採取し、リンパ球を取り出します。そのリンパ球にインターフェロンを作用させると、ウイルス増殖の抑制に働く25A合成酵素と呼ばれる特殊な生物活性が有意に上昇し、またガン細胞を攻撃する作用も強まることが、これまでの研究で判っていました。

      そこで、特殊な大型の連続遠心機を導入して、患者の血管から血液を直接チューブで遠心機に連結し、体外に導き出した血液からリンパ球のみを取り出し、赤血球などを含まないリンパ球のみをインターフェロンに生体外で接触させ、その他の血液成分と同じく患者に戻す密閉式のシステムを完成させました。このような新しい治療法に「IFNANK療法」と岸田先生の研究グループは命名しました。

  5. 抗腫瘍効果が期待できるIFNANK療法。

  今年京都で開催された日本免疫学会でルイ・パストゥール医学研究センターは、これまでの研究成果を発表しました。発表された内容の概略を紹介します。

  実施方法の概略は、2本のチューブで血液を体外で循環させる。90分にわたり連続遠心機でリンパ球を分離する。分離したリンパ球に400 500単位/mlのインターフェロンを接触させる。30分間室温で混和した後に体内に戻す。全工程は約2時間半で終了し、2週間に一度実施する。これを6回以上繰り返す。

  末期症例を含む60例のガン患者に実施した結果は、腫瘍を手術して取り除いた後再発しないケースが18例、腫瘍が消失したのが1例、腫瘍が縮小したのが12例、変化が認められなかったのは12例(20%)でした。

  以上のことから、IFNANK療法は有る程度の抗腫瘍効果があり、使用するインターフェロン量が全身投与の場合の100分の1程度の微量であり、腫瘍細胞に直接インターフェロンが接触しないので腫瘍細胞が抵抗性にならなく、重い副作用がない等の特徴があると指摘されています。

  IFNANK療法および財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターでのガン治療に興味のある方に、文献一編と問い合わせ先を下に記します。直接連絡をとってみてはいかがでしょう。

  IFN最新の知見と臨床応用への可能性 IFNANK療法

  谷川 真理、岸田 綱太郎

  ライフ・サイエンス 1998年8月号

  (財)ルイ・パストゥール医学研究センター
     京都市左京区田中門前町103−5
     電  話 075−712−6009
     ファクス 075−712−5850

▲▲ ▼▼



Copyright (C) 2011-2024 by Rikazukikodomonohiroba All Rights Reserved.