▲▲ ▼▼

186.看護婦と微生物学.3-25-2000.

 立派な病院の人間ドックを利用して検査をうけたらMRSAに罹ってしまった、手術をうけたら緑膿菌による難治性の感染をうけてしまった、輸血を介して肝炎ウイルスに罹った等の院内感染と呼ばれる医原病は、本来あってはならないことです。しかし、いくら優秀な抗生物質が医療の現場で使われていても、院内感染は現実に存在しているようです。院内感染がおこる原因は、いろいろあって、完全に防止することは難しいのが現状のようです。病院には「院内感染対策委員会」という専門機関が設けられ、院内での感染を未然に予防する方策が検討され実施されています。

 英国では、院内の感染を監督するインフェクション・コントロール・ナース【微生物と感染について特別な訓練を受けている感染を管理する看護婦(士)】という専門職をはやくから養成しています。この特別な看護婦(士)を病院内に常駐させし、抗生物質の使用規制や院内感染の発生予防に対処させています。欧米での看護婦教育については、別な機会に紹介したいと考えていますので、ここではこれ以上には触れないことになします。

 厚生省は、看護婦、臨床検査技師や医師などをはじめとする将来医療従事者となるべき学生の教育カリキュラムの大綱化を推し進めています。これまで文部省や厚生省からの強い指導により画一された教育しかできなかった固定化されたカリキュラムが規制緩和されたのです。各教育施設で特色ある教育ができるようになりました。これは大変に結構なことと思います。

 看護婦教育のカリキュラムから微生物学が消えてしまったけれど知っていますか、とある友人から質問を受けました。まさか看護教育の教科目から微生物学が削除されることはないでしょうと言いながら、北里大学の看護学部のカリキュラムを調べてみました。驚いたことに確かに「微生物学」という文字は見当たりませんでした。それで、微生物学の教授に「微生物学」が看護婦の教育カリキュラムから無くなったのですかと電話で聞いてみました。

微生物学は、以前より時間数は随分と少なくなりましたが、講義も実習もあります。しごく当たり前の返事が帰ってきました。しかし、カリキュラムのどこにも「微生物という文字は見つかりませんが」と聞き直すと、「教育カリキュラムの大綱化」によって「生活環境を健康との関連でとらえた科目群」のなかにある「生物学的環境論、1単位」で微生物をやっていますとの返事でした。

 臨床検査技師国家試験の受験資格を得るには、昨年提示された「教育カリキュラムの大綱化」によって時間数は三分の二に削減されましたが、学生たちは毎週1コマの微生物学講義を通年(4単位)と実習(1単位)を最低でも履修しなければなりません。昨年までは、講義が6単位と実習が2単位の微生物学と臨床微生物学が国家試験を受ける学生には必修科目として課せられていました。

 6単位の講義か4単位に削減されましたので、今までとおなじ内容の教育は出来ませんから、来年からどうしようかと頭を悩ませているところです。それが看護婦(士)教育の現場では1単位の講義ですから、微生物学のなにを教えられるのでしょうか。新しい教科目をどんどん取り入れなければならない現状なので、古い教科目は時間がすくなるなるのはある程度は私にも理解できます。しかし、看護婦(士)の教育で微生物学が1単位の教育で充分なのでしょうか、はなはだ疑問に感じるところです。

 医療の現場では、常識的には考えにくい事故が次々と明るみにでています。その上に院内感染による事故や抗生物質が効かない微生物が多くなる傾向を考えると、看護学部での教育はこれで良いのでしょうか。基礎教育が充分でない看護婦(士)に大学院修士課程で特別な教育を多少施してインフェクション・コントロール・ナース(微生物と感染について特別な訓練を受けている感染管理看護婦)を養成しているとしたら(間違っているかも知れませんが)、院内感染などは減少するのでしょうか。

 曖昧模糊の「136.栄養士と微生物. 3-6-99」で学校給食などが原因で集団食中毒がおこる可能性を考えると、栄養士の教育に微生物学をもう少し教えて貰いたいとの文を書きました。栄養士や看護婦(士)は、近い将来に微生物学の科学者となるような学部学生と同じような知識と技術を授けれられる必要は毛頭ありませんが、少なくとも農学部での微生物学についての教育に近いものであった方が良いのではないかと思います。看護婦(士)教育に携わっている方の微生物学教育に対する意見をうかがえれば幸いです。

 身内を非難するかのごとき「オゾマシイ」ことを書きました。直ぐにオシカリのメールが届くことでしょう。そんなつまらないことを書くなと、私を叱っても現状はなにも変らないと思います。すべての人が安心して身体を託せる医療現場を構築するにはどうすれば良いのでしょうか。みなんで考える必要がありそうです。

▲▲ ▼▼



Copyright (C) 2011-2017 by Rikazukikodomonohiroba All Rights Reserved.