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192.呼吸器のウイルス感染. 5-5-2000.

1.上気道感染.

  インフルエンザ様患者の届出数は、1月下旬の1週間で十六万人であったのが3月下旬では二千人に減少し、流行がようやく終息したようです。今年のインフルエンザは、A型ウイルスが主で昨年のようにB型ウイルスの感染が続いて起こらなかったのて患者数も昨年ほど多くなく流行期間も短くて済んだようです。

  例年のことですがインフルエンザの季節になると、インフルエンザとカゼはどのように違うのかという質問を多く受けるようになります。今回も質問として送ってこられた知りたい事柄に返事として簡単な情報を提供しましたが、ここでは少し思考を変えて患者さんを毎日診ている小児科のお医者さんから聞いたことを書くことにします。

  呼吸器感染症は、簡単に説明すると鼻から肺の入り口までが冒される上気道の感染と肺の入り口から肺臓が冒される下気道の感染に分けられます。鼻水や咳きがでて、カゼを引いたと感じるのは「上気道がウイルスの感染を受けて炎症がおきている上気道炎または上気道感染」であることが多いと思われます。

  日常の外来診察では、いわゆる「感冒」と「上気道炎」の患児が最も多く、3歳になるまでの子供は年間に数回から十回ほど罹るといわれます。その後は加齢とともに感染する頻度は少なくなります。その原因は、ほとんどがウイルスによる感染です。

2.患者年令とウイルスとの特徴的な関係.

  呼吸器感染をおこすウイルスは数多く知られているので、原因ウイルスを診断するのは難しいのですが、その地区での病気の流行状況、季節と年令から原因ウイルスを予測することができます。年令別に多くみられるウイルスと主な症状を下の表にまとめました。

  乳幼児には、アールエス(RS)ウイルスの感染が最も多く、一歳になるまでに約70%の子供達が罹り、二歳までには半数の子供達が2回以上の感染を受けている。次いで多いのがパラインフルエンザウイルスによる感染で、一歳までに約40%が罹り、二歳までには約60%が感染を受けている。インフルエンザウイルスは、学童に感染のピークがあるが、乳幼児から高齢者までの全ての人達が感染を受ける。アデノウイルスは、乳幼児と学童が多く罹るが全年令層の人達にも感染する。ライノウイルスとコロナウイルスは、検査法が限られているので不明な点が多いが、広い年令層に感染し、上気道炎の主要な原因ウイルスとなっている。

 

表年令別に多くみられるウイルス

ウイルス名     好発年令          主な症状
インフルエンザ    学童        発熱、悪寒、咽頭痛、関節痛、
                        筋炎、頭痛
アールエス      乳幼児       喘鳴、呼吸困難
パラインフルエンザ 乳幼児       咽頭痛、喘鳴、呼吸苦
アデノ         乳幼児・学童    咽頭炎、扁桃炎
ライノ          全年令       軽症の上気道炎
コロナ         全年令       軽症の上気道炎

3.流行季節とウイルスとの関係.

  呼吸器感染症というとインフルエンザを思い起こす人は、いわゆる風邪は冬に流行る病気との印象を持っていると思われますが、原因ウイルスが多様ですから特に呼吸器感染症は冬に流行るとは限りません。

  毎年11月頃から3月頃までアールエスウイルスが流行し(夏に流行する年もあります)、12月頃からインフルエンザウイルスが流行りだし、通常は3月または4月に流行が終息します。インフルエンザ様の患者が減少する4月頃から7月頃にかけてパラインフルエンザウイルスが流行ります。ライノウイルスによる鼻かぜは冬に多いようです。アデノウイルスによる感染は、特定の季節に関係なくいつでもみられます。

4.その他.

  夏場には、細菌に分類されるが通常の細菌とは少し性質が異なるマイコプラズマと呼ばれる細菌による肺炎の流行があります。さらに細菌として位置付けされるがウイルスに近い細菌にクラミジアがあります。比較的最近になって見つけだされた新しいクラミジアに肺炎クラミジアがあります。この肺炎クラミジアによる上気道感染が現実には相当に多くあるようです。正確なことはまだ不詳ですが、上気道感染の半数近くは当該クラミジアによるのではとも言われています。

  世界的に多い病気は、いわゆるカゼと下痢で、その原因となるウイルスだけでも、カゼも下痢も100種類を超えます。インフルエンザウイルスにはA型、B型とC型の3種類があり、パラインフルエンザウイルスにはT型、U型とV型の3種類、アールエスウイルスにはA亜型とB亜型の2種類、アデノウイルスには少なくとも49種類、ライノウイルスは100種類以上の血清型(抗原)の違うウイルスが知られています。

  これらの100種類以上のウイルスが入れ替わり立ち代り次ぎから次ぎとヒトを襲ってきては、感染・発症して上気道炎を引き起こします。そのため人によっては、今年のカゼはシツコクテなかなか治らないとつぶやきます。これは「シツコイ」のではなく、何種類かのウイルスによる感染が継続して起こっている可能性が考えられます。

  麻疹は一度罹ると二度と罹らないといわれるのに、どうして上気道感染は何度でも罹るのでしょう。秘密は、こんなところにあります。麻疹は全身感染と呼ばれ、麻疹ウイルスは血液の流れにのって全身を駆けめぐり、強い免疫を作り出します。ライノウイルスによる鼻炎は局所感染と呼ばれ、ライノウイルスは鼻粘膜に感染し炎症を起こします。ライノウイルスの感染する鼻は、身体の外側ですから免疫抗体を作るリンパ細胞はなく、そのため局所感染では強い免役は作られません。その上ウイルスの増殖を抑制する免疫抗体も身体の外側にまではなかなか出てこられません。

  但し、「のど」と「腸管」には分泌型と呼ばれる免役抗体の存在が知られています。

  上気道感染症の新しい原因体としての肺炎クラミジアは、上気道炎、中耳炎や肺炎を起こしますが、それ以外に動脈硬化の原因ともなる可能性が指摘されています。いわゆるカゼを防ぐと動脈硬化にも成りにくくなる、即ちカゼは万病のもとかも知れません。

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