199 .HIVが陽性である母親の母乳は危険か?. 6‐5‐2000.1.母乳を与えるな. 白血病やエイズである母親から産まれた新生児には母乳を与えず人工乳を飲ませるのが原則です。それは、母乳にウイルスやウイルスの感染したリンパ球が含まれるからと言われています。 ところが貧しい環境の人または地域では衛生的で栄養価の高い人工乳の購入代金がないか、または一般に売られていないので手に入れることが難しい場合が多く、産まれた赤子に母乳のほかに与えるものがないのが現状のようです。経済的な環境が良好な先進工業国などの一部では、調整した人工乳の安全性が高いので、母乳を与えないほうが善いと考えられているようです。 本来貧しい地域または国では、栄養状態と衛生状態が劣悪であるため、全世界で年間九百万人以上の小児が肺炎や下痢などの感染症で死亡しています。このように小児の死亡率が高い地域や国でも母乳を与えないほうが良いのでしょうか。 「母乳にはエイズの原因ウイルスであるHIVの母親から子供への感染を起こす危険もありますが、乳児の感染症による全死亡率を大きく低下させる効果もある」ことを示す報告を見つけました。 2.母乳は偉大である. 約 1,200例の二歳以下の乳幼児死亡例について感染死亡率と母乳との関係を調べたものです。この研究の目的は、母親がHIV陽性であるか、またはHIV感染率が高い地域に居住していて感染の有無が不明な場合に母乳を与える恩恵とリスクのどちらが大きいかを判断するシミュレーション・モデルをつくることにありました。今回の研究によると、母乳を与えられなかった乳児は、母乳を与えられた同じ月齢の乳児と比較して、出生後の 2ヶ月間における感染死亡率が6.1倍も高かった。母乳を与えられなかった生後2〜3ヶ月の乳児の感染死亡率は、母乳を与えられた同じ月齢乳児の4.1倍、生後4〜5ヶ月の乳児の場合では2.6倍、生後6〜8ヶ月の乳児では1.8倍、生後9〜11ヶ月では1.4倍であったそうです。結論として、母乳には感染防止効果があり、月齢が進むにつれて母乳による効果は低下する、最も月齢の低い乳児が最も大きく母乳の恩恵を受けていることを示しています。 これまでに母乳の恩恵については、 「122母乳の恵み、188母乳に白血病の予防効果」などで触れてきました。母乳は、栄養分のみならず免疫抗体を含むことから、いかなる食品よりも乳児には最も適した飲み物であるようです。若いお母さん! 乳幼児には母乳が最大の恵みです。不思議な飲み物である母乳の恵みを最大限に活用する賢い母親になりましょう。 |