220. 猫ひっかき病.11‐15‐2000.ペットブームにのった新しい病気の一つを紹介します。それは、ネコから感染する「 猫ひっかき病」と呼ばれる細菌による感染症です。猫ひっかき病(cat scratch disease)は、猫によるひっかき傷や噛まれた傷が原因となって、傷部近くのリンパ節の腫れや発熱を特徴とする病気です。1992年になって、グラム陰性の桿菌(大腸菌と同じ)であるバルトネラ・ヘンセレェBartonella henselaeが病原菌であることが判明しました。一般に予後は良好な細菌による感染症ですが、細菌のペット(伴侶動物)ブームに伴って増加している新興感染症および人畜共通感染症の一つとして注目されています。バルトネラ・ヘンセレェは、猫のノミによって猫に感染し、口腔粘膜や爪に存在するようになります。しかし、猫は、不顕性感染で終わってしまい、症状がでないようです。国内の猫の 15%程度が感染しているようです。アメリカでは、毎年4万人の人が猫ひっかき病と診断されています。日本国内では患者総数は良く判らないようですが、稀な病気ではなさそうです。国内での猫ひっかき病の症例を調べてみると猫との接触が95%を占め、特に子猫との接触が72%にもなるようです。季節的には7月から12月に多く発生している。猫との接触の内訳は、ひっかき傷(45%)、噛まれた傷(11%)、接触のみ(34%)、猫のノミに刺された直接感染(5%)で、犬との接触で感染した例(5%)もあるようです。また同じ猫によると思われる家族内感染例もあるようです。 猫にひっかかれると、数日から2週間後に傷口の皮膚にやや盛り上がった赤紫色の発疹が、約半数の人に見られます。さらに数日から数週間後、傷口近く、手を噛まれたとすると腋の下のリンパ節がやや硬く痛みを伴い腫れあがり、数ヶ月続くこともあるようです。リンパ節の腫れあがりは、直径が2センチを超えることが多く、鶏卵大以上になることも少なくないようです。殆どの人に発熱があります。 感染を予防するには、ペットとの過度なスキンシップを避け、猫のノミを駆除するなど猫を衛生的に飼育する注意が必要であるようです。折からのペットブームにより、猫ひっかき病は増加することが予測されます。あなたの可愛い子猫の爪には毒が潜んでいるかも知れません。 |