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231.胎児に感染するウイルス.232001

胎児や新生児の感染。

不純な性行為によって感染が拡大する性感染症が若者集団に流行しています。この流行り病は、日本人に限らず世界的な傾向です。女性が妊婦である場合は、大人の女性にとっては単に性感染症で済むかも知れませんが、生まれてくる生命体にとっては他人事ではありません。なぜならば、無責任な妊婦の体内で育ちつつある胎児への新たな感染が起こる可能性があるからです。体内での感染を垂直感染、子宮内感染、母子感染等と呼びます。

母親から感染する可能性のある微生物は、多種数多です。例えば、水頭腫のトキソプラズマ・ゴンディー(寄生虫)、膣炎の膣トリコモナス(原虫)、梅毒のスピロヘェータ・パリダ(ラセン状の原虫)、非リン菌性尿道炎のクラミジア・トラコマティス(クラミジア)、リン病のリン菌(細菌)と多くのウイスル(風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、成人T細胞白血病ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトパルボウイルス等)が知られています。ウイルスによる病気の多いことが判ると思います。細菌による病気と違ってウイルスの感染症は、治す薬がないのですから、病気になってしまうと治ることを期待する以外になす術がありません。

垂直感染。

垂直感染の感染経路や感染時期は、子宮、産道、母乳と唾液など病原体により多様です。垂直感染は、母親の血液を介する感染と母親の産道を通過する際に感染する経路があります。感染の時期は、受精から妊娠2ヶ月くらいまでの胎児が未完成な胎芽期の感染と、すでに胎児がある程度できあがっている胎児期の感染に分けられます。

胎芽期は、胎盤の機能が未完成なので、母親の血液を介して直接胎芽に感染が起こります。胎芽の免疫機能も未完成ですから、慢性の持続感染になることが多く、重要な臓器の障害が起こりやすく、流産、死産、子宮内発育不全、先天性異常など多彩な結果になります。

胎児期の感染は、別名胎盤感染とも呼ばれます。母親がウイルスに感染していてウイルスが血液中に存在し(ウイルス血症と呼ぶ)、そのウイルスが胎盤に感染し増殖する、胎盤の障害から母親の血液が胎児に流れ込み、または感染したウイルスが胎盤を通過し胎児に感染し、胎児がウイルス血症になり、ウイルスの感染と増殖により障害が現われます。胎児期の感染も、慢性持続性の感染が多いようです。無症状で経過するケースも多くありますが、生まれた後の新生児期または乳幼児期に症状がでてくることもあります。

死産は、ウイルスが感染細胞を破壊し、その程度が激烈であると死産となります。例えば、パルボウイルスB19の感染を受けると、胎児の高度な貧血、胎児水腫等をともない死産になる例があります。

子宮内発育不全は、例として、母親が妊娠3ヶ月前後に風疹に罹ると、風疹ウイルスは未熟な胎盤を通過して胎児に感染します。風疹ウイルスによる感染細胞の増殖が遅くなり、細胞数の減少が認められます。

先天性異常は、感染した細胞を破壊する力が弱いウイルスが各器官の形成される時期に感染すると、いろいろな先天性の異常が起こります。先天性異常の例として、風疹ウイルスの感染を受けると、聴覚障害、白内障や心臓奇形を高頻度に起こることが知られています。

主なウイルスの簡単な説明。

1).風疹ウイルス:

ウイルス粒子の直径は60ナノメーターで、遺伝子としては一本鎖RNAをもつトガウイルス(外套を持つという意味です)科に属するウイルスです。風疹(俗に三日ハシカという)は、幼稚園や小学校で流行すると、感染の拡大を防ぐために学級を閉鎖します。気道より感染し、潜伏期は2から3週間で、上気道で増殖したウイルスは、血液流にのって全身のリンパ節に達し、軽度の発疹と前後して発熱が診られますが数日で下降することが多いようです。妊娠5ヶ月までの妊婦が風疹に感染すると、目、心臓や耳に回復不能な障害(先天性風疹症候群と呼ぶ)を持った子が一定頻度(70%程度とも言われます)で生まれます。1994年からは、幼児に風疹ワクチンの定期接種が行われ、その効果で風疹流行の抑制と先天性風疹症候群の減少が現われてきています。

2).ヒトパルボウイルスB19:

動物のウイルスとしては最小で、直径が約20ナノメーターで、遺伝子としては一本鎖DNAをもつパルボウイルス科に属するウイルスです。気道より感染し、潜伏期は4日から20日で、ウイルスは口腔内に多く、尿中にも存在します。伝染性紅斑(俗にいうリンゴ病)の病原体で、発疹は顔面から始まり、数日のうちに全身に拡がる紅色の斑点が現れます。顔面の蝶形の紅斑が特徴で、妊婦が感染をうけると希に胎児の感染も起こり、胎児水腫、流産や死産を起こします。赤芽球系の前駆細胞に感染し、高度の貧血や肝臓障害によるアルブミン低下、一部心筋障害なども加わり、循環不全が起こり胎児水腫の原因となります。胎児の輸血により治療されることもあります。

3).B型肝炎ウイルス:

直径が約42ナノメーターで遺伝子としては二本鎖DNAをもつヘパドナウイルス(肝炎のDNAウイルスの意味)科に属するウイルスです。注射などを介して経皮的または性的接触から侵入し、潜伏期は50日から60日(ウイルスが多いと最短30日、少ないと最長150日)て、感染初期には、軽い風邪様の症状を示します。不顕性感染も少なくありません。HBs抗原やHBe抗原が陽性の妊婦の場合、胎盤の障害により胎内でも希に感染し、出生時既に胎児がHBs抗原陽性であることもある。

4).成人T細胞白血病ウイルス:

直径は80から120ナノメーターで、ウイルス遺伝子として感染性のない一本鎖RNAをもち、細胞に感染した後、ウイルス粒子がもつ逆転写酵素(RNAからDNAを作る酵素)によってDNAに逆転写され、二本鎖DNAとなって感染した細胞のDNAに組み込まれて増殖するウイルスです。感染しても発症する頻度は2から6%程度とされあまり高くはありません。白血病を発症すると2年以内に死亡するようです。主に母乳中のリンパ球を介した感染、ごくまれに完全母乳栄養児にも感染が成立することもあるとも言われています。

5).単純ヘルペスウイルス:

直径は約200ナノメーターで遺伝子としては二本鎖DNAをもつヘルペスウイルス(疱疹のウイルスの意味)科に属します。生後5年以内に多くの人は初感染をうけます。しかし、母親の膣内での産道感染と口唇に疱疹をもつ付添い人からの新生児感染もあります。感染しても症状が顕れない不顕性感染のことが多いようです。顕性感染の多くは、全身感染、中枢神経感染、皮膚粘膜感染などになります。欧米では2型、国内では1型が原因として多く、妊婦の1型ウイルスに対する抗体陽性率が徐々に低下し現在は50%前後と言われています。

 

大人がウイルスの感染を受けて病気になる場合の多くは、自分にある程度の責任があります。しかし、母親の胎内で感染して生まれてくる垂直感染や母児感染では、胎児または新生児に責任はない訳です。子供に感染させないようにするのは、母親の責任ですから、母親が賢くなる必要があります。あまり神経質になることは良くありませんが、性感染症は自分で防ぐことは可能な筈です。これから妊娠する可能性のある若い女性達は、これから母親となるのですから、健康について良く考えて貰いたいものです。

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