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278.温暖化とウイルス感染. 3-11-02.

インフルエンザは冬に流行する.

 かつて猛威を振るっていた日本脳炎は夏になると多くの患者かでました。日本脳炎を引き起こすウイルスは、一昔前までは「アルボウイルスと呼ばれる群に分類されていました。アルボという新造語は、節足動物により媒介されるという意味で、主に蚊が感染の仲立ちをするウイルスにつけられた名前でした。コガタアカイエ蚊は、馬や豚の血を好む習性があります。周りに馬や豚などが存在しない場合、ヒトの血も吸うようです。

日本脳炎と違って猛暑の夏場にインフルエンザが流行することはまずないと思われます。インフルエンザは冬になると流行りだします。どうして寒い冬になるとヒトからヒトに感染が広がるのでしょう。この理由についてはここでは触れない事にします。機会がありましたら少し考えて見ることにしましょう。

冬にどうしてインフルエンザが流行るのかその原因は別にして、寒い冬と暖かな冬では病気の広がりに違いがあるのでしょうか。平成14年の冬では11月頃は寒さが厳しい日々が続きましたが、その後は異常なほどの暖冬でした。卒業式に桜が満開で、入学式の頃には桜の花は散ってしまっていました。別な言葉で表現すると温暖化はウイルスによる感染にどのような影響を与えるのでしょうか。

温暖化はウイルス感染に影響するか.

 東京慈恵会医科大学の小児科学を専門とする浦島充佳先生は、Medical Tribune(平成14年2月14日発行)という医学週刊誌上で「温暖化の感染症に対する影響の予測」という興味ある研究結果を報告しています。その概要を紹介します。

地球の温暖化が進めば気温、水温、雲量、降水量が変化するため、生態系などか変化する。人間も直接間接に影響をうけることになる。その間接的な影響の1つとして、小児の感染症である手足口病、ヘルパンギーナと無菌性髄膜炎の変化を検討した。

手足口病は、多くは夏に流行するが、秋から初冬にかけて発生することもある。口内炎や手・足などに水泡などの症状が見られる。原因ウイルスは、コクサッキーA16ウイスルやエンテロウイルス71が知られている。ヘルパンギーナは、夏から秋にかけて流行する。口内に丘疹性、水泡性、潰瘍性の口内炎像を呈する。原因ウイルスは、コクサッキーA群ウイルス、コクサッキーB群ウイルスなどが報告されている。無菌性髄膜炎は、夏に流行のピークを示す。発熱、頭痛、嘔吐が3大症状である。原因ウイルスは、コクサッキーB群ウイルス、エンテロウイルスなどが報告されている。

これらの疾患は、臨床診断が付けやすく、おもに夏に流行すること、原因ウイルスがエンテロウイルスであることが共通している小児に多いウイルス感染症である。

1℃上昇で発生率10%増加の可能性

 1987年〜1997年の11年間にわたる日本各地の手足口病、ヘルパンギーナと無菌性髄膜炎の報告数を国立感染症研究所感染情報センターから入手した。週間発生頻度は、各都道府県の毎週の11年間の平均に対する相対比に変換し、同県同時期の気象条件(気象庁発表の地上観測データ)と多変量解析により比較した。

ヘルパンギーナの発生頻度は、気温17℃を超えると急に増加し、25℃をピークにそれ以上気温が高いとむしろ減少した。手足口病は、気温の上昇とともに比較的直線的な関係を示していた。そして気温が22℃を超えると減少に転じた。無菌性髄膜炎と気温との関係は、手足口病の場合と類似していた。

気温に加えて湿度が高いと3疾患とみも発生頻度は増加したが、日照時間が増加する、あるいは降雨量が一定以上になると発生頻度は低下した。無菌性髄膜炎では、相対湿度と降雨量に加えて平均雲量も流行に関与していた。これらの結果より、浦島充佳先生は、気温を含む気象条件が手足口病、ヘルパンギーナと無菌性髄膜炎の発生に関与していた、年間平均気温1℃の上昇はこれらの疾患発生頻度をおよそ10%押し上げることが予測されると、結論付けている。

気温、湿度、日照時間、降雨量、平均雲量、風速などの気象条件をコンピュータ分析したら、ヘルパンギーナでは90%以上、手足口病では80%以上の発生頻度の予測が可能であった。また逆に「夏に発生の少ないインフルエンザは温暖化によってこんご減少するかもしれない」と浦島先生は言及しています。

「病は気から」とよく言いますが、気力や体力も気温を含む気象条件によって左右されます。「高温多湿は健康によくない」、それではエアコンや除湿機を最高に働かせた「低温乾燥は健康に良い」と考えるのは少し早合点となりましょう。低(冷)温乾燥はインフルエンザの発生頻度を高めてしまいます。インフルエンザウイルスは、高湿度に弱く乾燥に強い傾向があるからです。

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