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280 結核の予防液BCGは有効か.

結核専門医からの指摘.

曖昧模糊に掲載した文の一部を集めた「微生物がいっぱい」という表題の文庫本を筑摩書房から今年2月に発行して貰いました。順調に売れていますとの連絡を出版社から受け嬉しく思っています。ところがこの本を買ってくださった方々からもいろいろな連絡を頂きつつあります。結核病棟のある大病院の呼吸器科の先生からもメールを頂きました。

「薬が効かない結核」という小見出しの文のなかで、結核の予防液であるBCGについて触れているところがあります。ほぼ同じ内容の文は「曖昧模糊」にも掲載してあります。この文の原稿を書いた当時のことをいまも私は良く記憶しています。私の秘書をしていた女性がある時、「小学生の息子がツベルクリン反応が陽性になった」と言い、いまにも息子さんが結核になって死んでしまうかのように取り乱していました。ツベルクリン反応が陽性になったからすぐに結核を発症するとは限らない旨を説明しても聞き入れて貰えませんでした。そのような事件(?)がありました時にある記事を見つけ「薬が効かない結核が流行している」という内容の文を書きました。

私は「微生物がいっぱい」という本に次ぎのような文を記載しました。「・・・日本は世界的にまれに見る安全・平和な国でしたので、ワクチンなどの予防対策を軽んじる風潮があります。ツベルクリ陰性の人が多剤耐性結核菌の感染を受けると大変に危険です。・・・ツベルクリが陰性である人は、BCG(結核菌を用いた生ワクチン)を接種して免疫をつけ、ツベルクリ陽性になっておくことが必要です。・・・」

呼吸器科の責任者であるお医者さんからの2通のメールには概略次のような内容が書かれていました。めったに聞かれない貴重な専門医の意見ですから転載します、少し長くなりますがお読みください。

「微生物がいっぱい」を楽しく読ませていただきました。その本の216頁、結核の予防に関しBCGが重要と書かれていますが、BCGは小児では重症化をある程度防ぐ可能性があるのみで、成人ではBCGの結核予防効果はないように認識しています。現にWHOの勧告でもBCGを2回接種することは無意味である旨日本政府に勧告されたようです。結核は空気感染しうるのですが、特殊な状況以外では、普通のガーゼのマスクでほぼ完全に感染を防げるとことを強調していただければ、結核に対する不当な世間の差別待遇を払拭するのに役立つのではないかと考えます。

結核は、特にマスコミなどで感染と発症を混同しています(新規感染者の5%が感染から1年以内に、5%が死ぬまでに発病し、残り90%は生涯発病しません)が、感染と発病は全く意味が違います。その点が他の急性感染症と大きく異なります。この混同がパニックを引き起こすことを何らかの形で言及していただければ幸いです。結核は喀痰によって感染します。従って飛沫感染を防ぐ意味から患者がガーゼのマスクを着用することは周囲への感染防止に非常に意味が大です。もちろん結核菌は乾燥に抵抗性が大きいため、空気感染もしうるのですが、実際は発育速度が非常に遅いため、感染が成立する以前に排除されてしまいます。空気感染が確認されている事例は殆どなく、飛行機内での集団感染の例くらいのように認識しています。十分換気がなされた部屋では、喀痰による飛沫感染さえ防げれば感染予防になるのですから、ガーゼマスクで十分なはずです。

日本国内では毎年数万人の結核の届出があります。「新規感染者の5%が1年以内に発病する」とのご意見を拡大解釈すると、数万人の患者が届けられることは、その20倍近い100万人程度が毎年感染していることを意味するのかもしれません。発病した数万人のその後の状況について私はなにも知りません。しかし、「過去約4年間に薬剤耐性結核を12例経験したが、3例死亡した以外は6ヶ月以内に全て排菌の停止を認めています」との言葉がメールに書かれていました。

 

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