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290.乾燥に強いセラチア菌.7-19-2002.

関西のある医療機関がセラチア菌による院内感染を起した事件があり、マスコミでも大きく報道されました。一般にセラチア菌は、水まわりを中心に生存していると考えられています。しかし、この事件では院内感染の伝播経路が不明であったようで、その感染経路を探る目的で、セラチア菌が乾燥した状態でどのていど生存するのかを、市の衛生研究所と保健所が調べました。その結果が感染症学会の機関誌に報告されていますので、概要を紹介します。

  実験には、患者から分離した2株、環境由来2株と医療従事者由来2株、計6株のセラチア菌が用いられました。良く増える栄養液で一晩培養し、充分に増殖した菌液を適当な菌数にまで希釈し、数10万個(CFU/ml)の菌液0.5mlをシャーレに入れ、25℃のフラン器内に入れた。48時間後には完全に乾燥した。それを2週間毎に取り出し、そのシャーレに栄養液を加えて生き残っている菌を殖やすために24時間培養した。その後培養液を寒天培地で培養してセラチア菌の生残を確認した。

  この試験の結果として驚くような成績が記載されています。患者由来の2株、環境由来と医療従事者由来の各1株の計4株は、5カ月末で死滅した。残りの2株は6カ月を経過しても生存していたのです。これらの結果からセラチア菌は、乾燥した条件下でも長期間生残することが明らかになり、医療従事者の白衣や医療器具などを介して菌が伝播することが予測されると述べています。

  細菌も生き物ですから生きていくためには水分が必要なことは判っていますが、湿度と温度が細菌の生残にどのように影響するのかを試験した結果は、意外と少ないのです。試験に用いたフラン器内の環境は、25℃の温度と13%の湿度であったようです。ここに紹介した成績は、間違いではないのでしょうが、私としては少し信じがたいような数値に映ります。

  なぜならば、栄養液で増殖した菌液を食塩水で多分100倍程度(詳細は不明)に希釈して、その食塩水中の菌をシャーレに入れて乾燥させています。乾燥の途中では食塩水中の食塩が濃縮されて濃度がかなり高くなっていたはずです。報告書には詳細な条件は記載されていませんが、湿度13%の乾燥度と食塩が結晶化するような高張液にもセラチア菌は耐えたことを意味するからです。細菌の種類と実験条件によっては、不思議な成績が得られるようです。

  細菌ではありませんが、インフルエンザウイルスは、湿度が高い条件では生残率が低くなります。夏カゼを起すコクサッキーウイルスは、湿度が高くても特に生残率が低くなることはないようです。微生物の種類によって湿度や温度に対する抵抗性は各々違うのかもしれません。破傷風菌や納豆菌などのように芽胞を作る菌はそもそも耐久性に富みますが、芽胞を作らない細菌でも乾燥状態で6ヶ月間も生き残れることがあるようです。微生物って不思議な生き物ですね。

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