294. 空気清浄器によるアレルゲンの除去.8-22-2002.
イオンが躍る.
数年前には「イオン式空気清浄機」が大々的に宣伝され、広告によると数百万台も売れたようです。一部のイオン式空気清浄機は、アレルギーや脱臭にたいしても効果があると謳われていました。今度はマイナスイオンの発生機能がついた機器が多く売り出されているようです。宣伝文を読んだり宣伝の映像を見たりしている限りでは、マイナスイオンそのもの、その量的な関係や効果について正直なところ私は良く理解できないでいます。高電圧をかけるとマイナスイオン、プラスイオンもオゾンも発生するでしょう。マイナスイオンの言葉だけが躍っていますが、その他のイオンはどうなっているのでしょうか。
アレルギーを引き起こす原因物質については、これまでに「157.羽毛ふとんもアレルギーの原因に?と233.ネズミや馬の毛が喘息に関与.」を掲載してあります。更に室内のアレルゲンを除去するには、乾燥したスチームと電気掃除機の使用が良いとの米国からの報告を「272. アレルゲンを減らす方法」に紹介しました。アレルゲンの除去に対する空気清浄機の有効性にいてドイツ・ボン大学の研究者の論文をアレルギーという雑誌(25:147‐156,2002)に見つけましたので、そこに記載されている成績の概要を紹介します。
アレルゲンの除去に空気清浄機は有効?
ダニの排泄物、カビ類や動物の毛なとの室内アレルゲンを空気清浄機で取り除ければ、多くのアレルギー患者には魅力的でありましょう。空気清浄機の原理は、室内空気を吸い込み、アレルゲン粒子がプラスの荷電を帯び、マイナス荷電の吸着除去フレートで分離した後、再び空気を室内に送り返す仕組みとあります。ここで使われているドイツの空気清浄機は、「イオン式」であるように読み取れます。
空気清浄機の使用に意味があるのは、大量のアレルゲン粒子が空気中に長時間浮遊している場合のみである。ダニの排泄部が空気中に存在するのは、シーツの交換などでホコリを舞い上がらせる作業をした直後だけで、ダニの排泄物の粒子は大きいので直ぐに床に落ちてしまう。ペットなどの動物由来のアレルゲン粒子は、とても小さいので空気中に長時間浮遊している。従って、最も重要な室内アレルゲンであるダニの排泄物の場合は、空気清浄機の有効な成果は認められなかった。動物のアレルゲン粒子は取り除くことができた。
アレルギー患者に対する空気清浄機の実際の効用はどうであろうか。成人のダニアレルギー患者を対象にカーペットを敷いた寝室で行われた研究では、臨床的な改善は認められなかった。これに対して、ペットアレルギーの小児ゼンソク患者を対象とした場合、寝室とリビングルームに空気清浄機を設置し、カーペットの使用を中止したところ、3ヶ月後の検査では、良好な成績が得られた。 結論として、「小児の動物性のアレルギーでは、ペットを手放すことが最も重要なことで、補助的手段として空気清浄機の使用は意味があるだろう」と述べています。
空気清浄機の広告では、ホコリ、ダニの死骸やカビ菌なども取り除くように謳っている場合があります。広告で宣伝するからには、自社の検定試験では有効性が認められるのだと思います。しかし、カーペットに付着したダニの死骸やカビなどを空気清浄機で実際に取り除くことは難しいのではないでしょうか。検定試験の成績と使用効果との差は、どうして生まれるのでしょう。試験方法を知りませんから、正確には記せませんが、もしかすると「検定試験はプラスチック製の箱などで行われている、別な表現をするとアレルゲンなどの粒子があまり付着しない材質を用いた試験条件の成績」なのかも知れません。企業秘密に属する事柄かも知れませんが、空気清浄機の検定条件を教えてくださる企業はありませんでしょうか。
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