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299. ヒトの病気が野生動物に感染10-3-2002.

動物から人間に感染する病気.

人間にも動物にも共に感染する病気を「人畜共通感染症」と呼びます。狂犬病は、人畜共通感染症の一つの例です。狂犬病で凶暴になった狼に人間が咬まれる様子を子供の頃に見たパストゥールは、科学者になってから狂犬病の治療と予防に使えるワクチンの研究を開始します。ワクチンの安全性が未確認のときに、狂犬病の狼に襲われた二十人近い農夫がはるばるロシアの地からパリのパストゥールのところに治療して貰いたさ一心で訪ねてきました。46歳のパストゥールは、不幸にもちょうどそのとき脳出血で倒れ半身不随となりましたが、車椅子に乗ってロシア人の治療を指揮しました。誰が診ても助からないと思われた農夫の大方は、奇跡的な回復の喜びと感謝の気持ちを体全体で表しながら、郷里に帰っていきました。この劇的な場面が人畜共通感染症の治療の最初といわれています。

米国疾病管理センターは、数年前から「新興感染症Emerging Infectious Diseases」という学術雑誌を発行し、世界中の科学者に無料で配布しています。今現在世界の各地でどのような感染症が流行っているのか、どのようにして感染が拡大するのか、対策としてどうすべきか等の新知見や情報が世界の科学者から寄せられ、それを編集発行しているきわめて今日的な学術雑誌です。

人畜共通感染症とは「動物から一方的に人間が感染する病気」と感染症の研究者や医師たちは考えていました。ところが、近頃は感染している人間から野生の動物が感染する二つの事例が、「新興感染症Emerging Infectious Diseases」に同時に報告が掲載されています。ある意味でこれは私達にとって「青天の霹靂」であります。珍しいケースかもしれませんが、概略を紹介しましょう。

野生動物にヒトの結核菌が感染.

アフリカ資源保存センター(ボツワナ)のAlexander博士は、ケンブリッジ大学、南アフリカ国立獣疫研究所の研究者との共同研究(Mycobacterium tuberculosesAn Emerging Disease of Free-Ranging Wildlife. Vol.8, No.6, 598601, 2002)で、ヒトの主要な死因の一つであるヒトの結核がアフリカの野生動物の間で感染が広まっていることを認めたと初めて報告しています。

マングースmongooses (Mungos mungo)やスリカタsuricates (Suricata suricatta)などか結核に感染していた。マングースは、結核患者が居住する地域のゴミ置き場で餌を食べていることが確認されており、スリカタは同じ地域でヒトの痰をナメテいた。感染が疑われる動物を捕獲して調べたところ、結核菌が検出された。

Ecotourism(意味不詳)は1999年だけでも89,000人を超える訪問者を国立公園に導きいれ、と同時にEcotourismは莫大な経済的な利益をもたらすと同時に野生動物でのヒト病原体による感染の脅威を増大させている。ヒトの病原体に野生動物がさらされることを防ぐ手立てを考える必要があると、結論しています。

ペットのサルも被害者(獣)?

インスブルック大学のHuemer博士は、ウイーン獣医大学とアラブ首長国連邦大学の研究者との共同研究で、ペットのサルがヒトのヘルペスウイルスに感染して死亡した調査結果を報告した(Fatal Infection of a Pet Monkkey with Human herpesvirus 1. Vol.8, No.6, 639641, 2002)。このサルは、重度の胃炎、嘔吐、食欲不振を示して六日後に動物病院に担ぎ込まれた。

このペットのサルの飼い主は、サルと濃密な接触を持っており、カゴを使用せずに抱いて運んでいた。米国では室内で飼育されるペット用サルが増えており、これはヒトにとっても危険である。なぜならば、サルのヘルペスBウイルスと呼ばれるサルヘルペスウイルスは、ヒトに致死的な脳炎を引き起こすからである。

インターネットでは多種多様な動物のサイトが激増しているが、健康被害、特に子供たちの健康被害について述べているのはきわめて少ない。ペット用サルはサルのヘルぺスウイルスが人間に脅威を与えるが、逆にペット用サルはヒトのヘルペスウイルスで感染の脅威を与えられている。このように動物の種を超えて感染が起こると双方に極めて危険な関係となる。哺乳動物の飼育は、病害などの知識があるヒトに限るべきで、グローブ、ゴーグル、マスクを使用すべきであることを警告したいと結論している。

結核の病原体である結核菌や脳炎の病原体であるヘルペスウイルスは、ヒトに限らす多くの動物にも存在します。ニワトリの結核菌やカエルのヘルペスウイルスは、健康なヒトには通常は感染しません。しかし、人間に近縁なサルは、ヒトの病原体の感染を容易に受けることがしばしば認められます。例えば、ヒトのハシカウイルスは、サルに自然感染が起こります。

いま話題になっている西ナイルウイルスは、日本脳炎を起すウイルスと近縁関係にあります。これらのウイルスは、蚊(イエカ)によって媒介される特徴があります。西ナイルウイルスは、イエカと鳥類間のサイクルで維持され、アフリカ、地中海沿岸やインドなどのきわめて広い地域に分布しています。

西ナイルウイルスによる通常型の感染では、急激な熱性疾患として発症し、患者は第37病日に解熱し、短期間に回復するようです。しかし、脳炎型では、重篤で高齢者によくみられ、中央アフリカでは激症肝炎を併発した症例や心筋炎や膵炎を併発した例もあるようです。日本国内に生息しているコガタアカイエカに西ナイルウイルスが定着すると大変な事が起こる可能性が危惧されています。

人畜共通感染症と呼ばれる感染症は、ペットが感染することを考える必要があり、動物との接触はある程度の距離をおく必要が大切なようです。尚、国立感染症研究所のHPに≪ペットから感染する病気について≫というページがあります。URLは、<http://idsc.nih.go.jp/index-j.html>です。ペットを飼われている方は、なにかの折に開いてみては如何でしょうか。

 

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