333. アスピリンと黄色ブドウ球菌. 10-16-2003.
解熱、鎮痛剤として世界的に広く使われているアスピリン(化学物質としてはアセチルサリチル酸)が黄色ブドウ球菌に有効であるとの動物実験の成績が報告されている(J. Clin. Invest. 112:222-233,2003 )。
多剤耐性菌である黄色ブドウ球菌MRSAは、依然として減少することなく増加しており、その結果重度の院内感染や市中感染に対して有効な薬剤がみつかりにくい。ところが黄色ブドウ球菌の感染により実験的心内膜炎を発症させたウサギをアスピリンで治療すると、非治療の対照群に比べて膿瘍の大きさおよび膿瘍ごとの細菌数が減少し、重度な感染症になりにくいことが確認された。黄色ブドウ球菌に有効に作用するのは、投与したアスピリン(アセチルサリチル酸)ではなく、代謝過程で産生されるサリチル酸であることが判った。
サリチル酸が黄色ブドウ球菌の宿主組織に対する接着能力を阻害し、結果として致死的感染症のリスクを低減した。また黄色ブドウ球菌は、他の組織へと増殖・拡散していくために毒素を必要とするが、サリチル酸はこの毒素の産生能力も破壊した。
アスピリン投与で動物組織での感染症が治癒したのではなく、黄色ブドウ球菌の感染能力が低下したのである。つまり黄色ブドウ球菌の毒性は低下したが、殺菌作用によるのではない。
アスピリンは、化学物質としてはアセチルサリチル酸で、多くの製薬会社から発売されています。物質が同じならどの製薬会社のアスピリンも効き方が同じかというとそうではなさそうです。薬学には製剤学や錠剤学という科学があります。有効な錠剤を作るための科学です。アセチルサリチル酸の結晶の並べ方で有効性に差が生まれるようです。