340. ダニ不透過性のベッドカバーはダニアレルギーに有効. 11-18-2003.
アメリカのマンチェスター大学とオランダのエラムスム医療センターの2医療施設から、「ダニを透過させないベットカバーがアレルギー性の喘息と鼻炎に有効性を示すか」を検討した結果が同じ学術雑誌に同時に報告されました(NEJM 349:225-236, 237-246, 2003)。
国内でも清潔志向から抗菌や脱臭をうたい文句にした商品、更にはバイキンやダニを寄せ付けない寝具類も多く売られています。宣伝文に記載してあるような効能が僅かでも発揮されるのであれば、ある程度のお金を支払っても意味はあるでしょう。一般人には真偽のほどを科学的に証明する術がありませんので、アメリカとオランダからの報告を紹介することに意味があると考え、ここに概略を示します。
喘息に対する調査は、1,120例の成人喘息患者をダニアレルゲン透過性のベットカバーの使用群560例とダニアレルゲン不透過性のベットカバーの使用群560例 の2群に無作為的に分けて、喘息に臨床的な効果がダニアレルゲン不透過性のベットカバーにあるかを12ヶ月間の試験期間を通して調べた。ダニアレルケンに対して、ダニアレルゲン不透過性ベットカバーを使用した患者では65.4%で、通常のカバー使用患者では65.1%が感受性でした。使用開始して6ヵ月間でのヒョウヒダニ濃度は、不透過性群では0.58マイクログラムであったのに対して対照の透過性群は1.71マイクログラムで、不透過性ベットカバー群でのダニ濃度は有意に低かった。ところが12ヵ月の使用結果は、不透過性群で1.05マイクログラムに対して透過性群が1.64マイクログラムと有意差がなくなった。更に、12ヵ月目における吸入ステロイド薬の使用中止あるいはステロイド服用量の平均減少率にも両群間で有意差は認められなかった。不透過性のベッドカバーのみでは、喘息成人患者における臨床的効果はなかったとの結論でした。
一方、アレルギー性鼻炎に対する調査は、ダニ感受性の患者279例を対象に抗ダニベッドカバーがアレルギー性鼻炎の症状におよぼす影響を解析した。不透過性と透過性のマットレスカバー、枕カバー、羽毛フトンあるいは毛布カバーをランダムに割付、12ヶ月後に患者が使用したマットレスおよび寝室と居間の床でのヒョウヒダニの濃度を測定した。試験を完了した232例では、対照の透過性群では44.07マイクログラムから32.32マイクログラム(73.3%)へ、不透過性群では49.64マイクログラムから38.74マイクログラム(78.0%)へと減少した。しかし、鼻炎特異的視覚尺度、鼻アレルゲン誘発、日常症状スコアには有意差は認められなかった。結論として、マットレスのダニに対する曝露のレベルが有意に減少してもマットレス、枕、羽毛フトンの抗ダニカバーが鼻炎の症候、症状を軽減するなどの臨床効果は認められなかったとの結論でした。
アメリカからの喘息患者への効果並びにオランダでのアレルギー性鼻炎患者に対する影響の調査結果は、不透過性カバーおよび抗ダニカバーともに臨床的に認められるような効用はなかったというものです。ダニ濃度は、統計処理すると有意の差は認められないとしても、多くなることは無いようです。しかし、ここで問題なのは、ダニ濃度が多少低くなっても患者に対する効果は認められないのでしょう。読者の皆さんは、この報告に対してどのような印象を受けられましたでしょうか。