350. 虫歯の細菌. 3-10-2004.
口腔内に色々な形の雑菌がウヨウヨしていることを最初に観察した人は、意外に大昔の人なのです。その人は、アントニー・レーウェンフックAntonie Leeuwenhoek(1632-1723)というオランダ人です。この歴史的な人物について興味のある方は、「北里柴三郎博士の秘話」のなかの「志賀潔の細菌学を創った人々」の一番初めにアントニー・レーウェンフックが掲載されています、参考にしてください。
口腔内に生息するレンサ球菌は、虫歯との関係で口腔レンサ球菌と総称され、口腔内の歯の表面、舌の表面、頬の粘膜表面、歯肉や唾液のような色々な場所で検出されます。
虫歯は、一部の例外的な人を除いて多くの人がその痛みを経験したことのある歯の病気です。この虫歯は、ミュータンスレンサ球菌と呼ばれるレンサ球菌の感染によって引き起こされます。ミュータンスレンサ球菌(mutans streptococci)とは、Streptococcus mutansやStreptococcus sorbinusなどの7菌種の総称で、ヒトからはここに記した2菌種が検出されることが多いようです。7菌種のうちの他の5菌種は、サル、ハムスターやラットなどの動物から分離される菌種とされています。
ミュータンスレンサ球菌は少し変わり者的な細菌で、歯の表面が唯一の生息場所で、口腔以外にはほとんど常在しないのです。またその感染は、2歳前後の乳幼児期に母親の唾液を介して起こると考えられています。いったん歯の表面にミュータンスレンサ球菌が定着すると、砂糖を利用して歯の表面に強固な歯垢を作り、生涯にわたり生息し続け、時に虫歯の原因となるのです。
ミュータンスレンサ球菌は、砂糖などの糖分を分解して酸を作ります。この酸が硬い歯の表面を少しずつ溶かすことで虫歯ができるようです。ところがミュータンスレンサ球菌に限りませんが、キシロースやキシリットールなどの糖を分解できる細菌は少ないのです。そのため虫歯にならないガムやエネルギーゼロの飲料水などが作られているようです。
日本人の歯に対する考え方は、欧米の人々と少し異なることがあります。歯並びが悪く犬歯が飛び出しているのをヤエバと言い、特に忌み嫌う風潮は少なくとも国内には無いものと思います。しかし、欧米人は歯並びが悪いのは親の責任と考えられていますから、歯医者さんの費用は決して安くありませんが、子供のうちに矯正してやるようです。日本人のようなヤエバはドラキュラの歯のようと言い忌み嫌います。歯の手入れが悪くて歯槽膿漏にでもなってしまうと歯医者さんに支払うべき費用は高額になりますので、始終歯医者にかかって歯の手入れをしているようです。日本人でも虫歯に悩まされている人は、結果として歯槽膿漏にまでなる人は少ないようです。普段から歯医者と縁遠い人が歯槽膿漏になり、場合によっては若い人でも総入れ歯の世話になるようです。あなたはどうですか。