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355. 動物由来の感染症. 4-20-2004.
 
感染症法の改定
制定されて100年にもなる伝染病予防法や性病予防法および後天性免疫不全症候群(エイズ)予防法などの法律を統廃合して「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(旧感染症法)」が1999年4月1日に施行された。
日本は、公衆衛生対策の徹底と地理的に島国であることなどから、動物由来の感染症に限らず世界的に感染症の清浄国なのです。それでも近年は莫大な数の動物が毎年輸入され、世界的には動物由来の感染症の爆発的な流行が珍しくない状況になってきました。そこで2003年11月5日に「感染症法」の一部改定がなされました。
微生物学や公衆衛生学の分野では、動物と人間との間で自然に伝播する病気を「人畜共通感染症」と呼ばれてきました。厚生労働省は、人畜共通とは人間と動物を並列に考えているようにも解釈されることから、人間の健康を中心に据えて「動物由来感染症」という言葉を用いるようになってきました。
 
話題の動物由来感染症
まだ日本国内での発生は認められていませんが、感染症法に取り入れられた新興感染症について簡単に説明します。
1. ウエストナイル熱
主に野鳥が感染源となり蚊が媒介するウイルス病です。1937年にアフリカでの報告が最初で、その後アフリカ(ウガンダ、エジプト)ロシアやイスラエルなどで報告されています。999年にはアメリカでウエストナイル熱が突然として流行し、その後カナダやメキシコでも流行の範囲が拡大しています。アメリカでは1999年には7名、2002年には284名、2003年には208名の死亡者が確認されています。
 
2. 鳥インフルエンザ
1997年に香港において鳥インフルエンザに18名が感染し6名が死亡しています。鳥インフルエンザで人間が死亡する場合には、もちろん鳥類の感染死はひさんな状態になります。2003年2月に鳥インフルエンザウイルス(H5N1)により中国で新たな死者が報告されました。2003年4月にはオランダでH7N7型ウイルスがニワトリに流行し、247名の感染者がでました。このようなウイルスを高病原性鳥インフルエンザウイルスと呼びます。
 
3. 新型肺炎(SARS)
2002年11月に中国で発生した原因不明の肺炎が2003年2月には香港を経由し、中国、香港、台湾、シンガポールなど27国に拡大しました。感染力がとても強く約8,100名の感染者と774名の死亡者がでました。患者のなかには患者を診た1,700名の医療従事者が含まれていました。
原因は、ヒトコロナウイルスと名づけられた新型のウイルスで、ハクビシン(白鼻芯)やタヌキ(狸)などの関与が考えられています。生態系における感染源は特定されてなく、ヒトの感染経路も必ずしも明確にされていません。
 
動物由来感染症の現状
動物由来感染症は、世界で200種以上あると言われています。主な動物由来感染症について説明します。
1. ペスト
世界では毎年1,000名を超える患者が発生していますが、日本国内ではここ70年近くペストの発生はありません。重要な感染源は野生のげっ歯動物で、ノミが媒介して感染が拡大します。1998年アメリカで捕獲されたプレリードッグがペストに罹り大量に死亡し、大変な問題になりました。ネズミに限らずプレリードッグやリスも重要な感染源となる。日本国内へのプレリードッグの輸入は禁止となりました。
 
2. サル痘
山崎光夫の著書「ジェンナーの遺言」にサル痘という言葉が出てきますが、一般の人にはあまり馴染みのない病名かと思われます。1970年に初めてヒトの患者が報告され、現在までに1,000例ほどの患者が西アフリカや中央アフリカで発生しています。アメリカでは2003年アフリカから輸入されたアフリカオニネズミからプレリードッグを介して70名以上の患者が発生しました。
 
3. 狂犬病
世界では毎年1千万人ものヒトが曝露後の予防措置を受け、そのうち5万人もの死者が出ています。日本国内で50年以降患者はでていませ、世界でも珍しい狂犬病の清浄国です。感染源は、イヌ、キツネ、アライグマ、スカンクなどで、主に感染動物に咬まれることで感染します。
 
4. ラッサ熱
1969年にアフリカ・ナイジェリアで最初の発生があって以来、西アフリカ一帯で毎年20万人から30万人が感染し、そのうち15%程度が発症しているようです。死亡率は10数パーセントと言われています。感染源は、マストミス(ヤワゲネズミ)で、直接接触や排泄物を介して感染します。
 
動物の輸入
2002年頃までの動物の輸入については、サル類で規制があったのみで、狂犬病予防法や家畜伝染病予防法などでイヌ、ネコおよび家畜で検疫があったのみでした。そのため非常に多くの動物種と動物数を無条件で輸入していた状況にありました。
2002年に財務省より公表されている貿易統計によると、輸入動物の総数は約4.4億とあり、哺乳動物だけで85万頭以上(ハムスターだれでも68万匹)、げっ歯類80万匹、は虫類約88万匹、鳥類約17万羽となっています。
2003年から省令と感染症法の改定で下の表に示す動物が新たに措置の対象に指定された。
 
表 感染症法の改定で追加された指定動物
指 定 動 物 対 象 疾 患 措 置
サル エボラ出血熱、マールブルグ病 原則輸入禁止
プレリードッグ ペスト 輸入禁止
イタチアナグマ、タヌキ、ハクビシン SARS(重症急性呼吸器症候群)
 
輸入禁止
 
コウモリ リッサウイルス感染症 輸入禁止
ヤワゲネズミ ラッサ熱 輸入禁止

ペットが可愛いと思う条件に「小さい」という共通項目があるように思います。飼いはじめは小さいから「カワイイ」と感じ「デキアイ」していたペットも図体が大きくなると「カワイイ」から「コワイ、メンドウ」に感じることもあるのでしょう。心ある人は別にして、無責任な人は「元ペット」を人目につかない所に放してしまうようです。それが繁殖して外来種の野生動物となってしまうこともあるようです。そこで感染症の問題が新たに起こる可能性があるのです。検疫されてない動物が数多く輸入され、病原微生物をもったままの動物が身近に飼育されていて、それが放されて生活環境に存在しているのです。どうしたら生活環境を安全・清浄に維持できるのでしょうか。皆で知恵を出し合う必要があると思います。

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