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364. 増加する野生鹿とライム病. 6-10-2004.
 
ライム病
新興感染症にライム病という耳慣れない病気があります。空気感染や水系感染による感染の拡大が考えられないライム病は、爆発的な流行にはならないが潜在的な患者は多く存在すると考えられています。ライム病の患者の増加は、人が破壊した森林の人工的な回復のなかで、マダニの吸血対象となるシカなどが増加したこと、ヒトが野生動物の領域に進入していることなどが要因として挙げられています。
 
ライム病は、アメリカのコネチカット州ライム地方で1975年に見つけられたことから、ライム病の名前が付けられました。1982年にライム病の病原体は、マダニが保有するスピロヘータ様の微生物Borreliaであることが明らかになり、Borrelia burgdorferi(ライム病ボレリア)と命名されました。
 
ライム病の病原体は、シカなどの野生動物を保菌宿主とし、マダニを媒介としたてヒト、家畜、愛玩動物に感染する。症状は、多彩で皮膚、関節、神経、循環器と前進にも現れ、診断がつけられれば治療が可能となる。
 
ライム病ボレリア
ライム病の病因菌は、スピロヘータ科ボレリア属に分類され、Borrelia burgdorferiを含めて10種類の存在が明らかにされています。本菌は、マダニが媒介し、4〜30マイクロメーターの長さで、0.18〜0.25マイクロメーターの幅で緩やかなラセン状を呈し、7〜11本の鞭毛を有する。本菌の培養は、31〜34℃微好気性条件下で数週間おこなう。北海道のようにマダニが多数生息している地域では、一見健康な動物やヒトでの抗体保有率は5〜25%であると言われています。
 
ライム病の症状は、皮膚、神経、循環器、筋骨格系に種々の症状を呈する。ライム病に唯一特徴的な病態は、紅斑のみである。紅斑は、はじめ均一な小紅斑であるが、しだいに遠心性に拡大し、数十センチになることもある。世界的に動物のライム病は、イヌとウマが多い。国内のイヌのライム病では神経症状が主体である。
 
予防と対策
ライム病は、病原体と媒介動物が明確になっているので、これらとのかかわりを避けることが最も効果的な予防対策です。媒介動物のマダニは、草原や森林に生息し、その地域に侵入してきたヒトや動物を標的にして吸血をする。マダニによる刺傷では痒みや痛みを伴わないことがあり、皮膚にマダニが付着していることを見逃してしまう可能性がある。皮膚に吸着しているマダニを見つけた場合は、ピンセットでマダニの虫体の頭部を捕まえて取り除くことが肝腎のようです。遺伝子組換えワクチンの開発が検討されています。
 
自然環境に人工的な手を加えたり、地域の活性化と称した乱開発などにより、そこに生息している動物が餌を求めて場所を移動し、植物の植生が変わってきます。その上、他の動物の生息地に新たな動物が入り込むことになります。草木に付着しているダニは、本来無害なのかもしれません。しかし、シカの血液を吸い込んだダニは、シカが保有していたライム病の細菌を新たに保有するようになると考えられています。自然の生態系を変えてしまうと、そこに新しい生態系が構築され、新しい生態系は二度ともとには戻らないものです。人間の欲望による行為から新たな感染症(新興感染症)が人間社会に入ってきて人間が悩まされるのは「自業自得」としか考えられません。さてどうしましょう。

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