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373.コイヘルペスウイルスはどこから来た.9-4-2004.
 
コイのウイルス病
2003年11月に茨城県の霞ヶ浦でコイの大量死が観察され、コイヘルペスウイルスの感染が確認されました。ウイルス学を勉強していた者でもこれまでにコイヘルペスウイルスとは聞いたことも教わったこともありませんでした。霞ヶ浦は、食用コイの大生産地で、年間1万トンの国内生産量の食用コイの50%を生産していたところです。2004年3月末までに養殖コイの全数を感染拡大の防止を目的に処分しました。食用コイの品不足となりましょう。
 
農林水産省の調査によると、茨城県でのコイヘルペスウイルス病の発生より数ヶ月前に岡山県の河川でコイの大量死があったことが判ったようです。その時の死亡魚の一部の資料からコイヘルペスウイルスが検出されたので、霞ヶ浦よりも前に岡山県でコイヘルペスウイルス病が発生していたようです。これらのことから国内での最初のコイヘルペスウイルス病の発生は岡山県におけるものと考えられています。
 
1996年に英国のニシキゴイ養殖場で原因不明の大量死があり、今から考えるとこれがコイヘルペスウイルス病の最初と考えられるようです。2000年に水産動物関係の学術雑誌に1998年にイスラエルとアメリカでコイの新しいウイルス病が発生したことが紹介され、これによりコイヘルペスウイルス病の存在が世界に知られるようになりました。
 
2003年に日本国内でコイヘルペスウイルス病が発生しましたが、それまでにアメリカ、イギリス、ベルギー、オランダ、ドイツ、イスラエル、インドネシア、台湾、イタリア、デンマーク、オーストリア、フランス、スイス、ルクセンブルグ、ポーランドなどの15カ国でニシキゴイのコイヘルペスウイルスによる感染死が報告されています。
 
ニシキゴイの商取引に伴うニシキコイの移動により感染が世界に広まったと考えられています。霞ヶ浦では食用コイの感染による大量死でしたが、東欧諸国では古くから食用コイの養殖は盛んですが、東欧諸国の食用コイにはどうしたことかコイヘルペスウイルス病は発生していないようです。
 
コイヘルペスウイルス
koi herpesvirus (KHV)が病原体の英語による表記です。「Koi」とは錦鯉を指し、食用の真鯉は「common carp」と呼ぶのだそうです。分類的には「Koi」も「common carp」もともに同じ種「Cyprinus carpio」に属します。koi herpesvirusという綴りからも判るように、このコイヘルペスウイルスは錦鯉で流行した病気で、錦鯉の取引により世界に拡大していったと考えられています。
 
コイヘルペスウイルスは、「Cyprinus carpio」にしか感染せず、コイに近いキンギョやフナにも感染しないと考えられています。コイの大量死が発生した場合、コイ以外の魚が死んでいないことが重要な情報となります。
 
これまでにコイ、キンギョ、ウナギ、チョウザメやサケなどからヘルペスウイルスが分離されています。これら魚類のヘルペスウイルスは、哺乳類、鳥類や爬虫類からのヘルペスウイルスとかなり性状が異なると報告されています。コイヘルペスウイルスは、コイの鰓(エラ)や脳由来の培養細胞で増殖・分離できますが、コイ以外の魚類由来の細胞では分離できません。
 
コイヘルペスウイルス病になると、コイは餌の食いが悪く、水面をフラフラと泳ぐようになる。外観的な症状は、エラの膨化、体表の出血、目の落ち込みなどであり、エラの異常が最もよく観察されます。その他、腎臓の炎症や心筋の壊死も報告されていますが、国内のコイでは観察されていないようです。
 
コイヘルペスウイルスに感染してから症状がでるまでの潜伏期は、水温やウイルス量により異なるが、一般的には2〜3週間と考えられている。泳ぎが緩慢になってから死亡するまでの期間は、1〜2日と短い。コイヘルペスウイルス病は、水温が20〜25℃で最も発生しているが、15℃でも発生するが、13℃では感染しても発症しない。また30℃の水温での発症はなく、コイは免疫を獲得すると報告されている。
 
コイヘルペスウイルス病の伝播は、感染魚との接触は必要とせず、水を介しての感染である。天然河川でのコイヘルペスウイルス病の発生は、コイヘルペスウイルス病が発生した養殖場からの排水が原因と考えられています。
 
「コイヘルペスウイルスはどこから来たのか」、この問に対する適切な回答は難しく、簡単には記載できません。茨城県の霞ヶ浦の食用コイの大量死から端を発したコイヘルペスウイルスの天然河川でのコイの死亡にまで拡大してきています。コイの意味がニシキゴイであるとすると、今後国内のニシキゴイへのコイヘルペスウイルスの感染拡大が懸念されます。ワクチンの開発に期待が寄せられています。
「コイヘルペスウイルス病について」、飯田貴次著、モダンメディア50(7):151-156,2004を一部引用させてもらいました。

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