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379. 尿中のレジオネラ菌の検査. 11-25-2004.
 
早期診断が望まれるレジオネラ症 
Legionella pneumophila(本文ではレジオネラ菌と略称する)によるレジオネラ症は、スーパー温泉といわれる大型の浴槽をもつレジャー施設、豪華客船のレジャー浴槽、老齢者施設などでの集団感染、大学病院などを含む医療施設での循環式浴槽による感染などか報告されています。レジオネラ菌は、レジオネラ症を引き起こす病原体です。レジオネラ症は、診断されると直ちに届出が必要な新4類感染症に指定されています。近頃になっても新聞などのマスコミにも本菌による事故が報道されています。
ある細菌による感染症と診断するには、原因と考えられる病原菌がどの患者さんからも検出、より詳しくは培養して分離される必要があります。これは「コッホの原則」の第1番目の要件であります。ところがレジオネラ菌を人工的に増殖させることは必ずしも容易なことではありません。特殊な培地を使い、特殊な手技で数日間も培養する必要があります。
レジオネラ症は、ヒトからヒトへの感染は起こらないと言われていますが、レジオネラ菌による肺炎は急激に進行し、重篤になると死亡する率が高く、そのうえ抗生物質が効きにくいため本症は早期に診断が付けられることが望ましいのです。ある種の抗生物質が無効である理由は、レジオネラ菌が自然界ではアメーバーや生体内では食作用のある細胞の内部で増殖する特徴がるため、細胞内への移行性が悪い抗生物質は抗菌作用を発揮できないのです。
 
痛くない新しい検査法
レジオネラ症を診断するための検査法には、概ね4種類の方法が用いられます。最も特異性が高く基準となる方法は、当該細菌を増殖させて感染力のあり生きている細菌を検出する方法で、これを細菌の分離培養法といいます。この方法は、迅速性にかける欠点があります。現在はやりの遺伝子を増幅させて検出するPCR法は、迅速で且つ微量で結果を出せますが、医療保険に適用されてなかったり、特別な機器が必要で、偽陽性が起こる可能性があります。昔から広く用いられている免疫抗体を検出する方法は、感染初期には免疫抗体が作られていなかったり微量であるために検出されなかったりの欠点があります。一方、病原体を増殖させないで、タンパク質または抗原として把握する方法は、迅速性から段々と広まりつつあります。特に尿を検査するサンプルとして用いられれば、患者にサンプルを採取するのに苦痛を与えることがありません。
レジオネラ菌体の表層にあるLPSと呼ばれるリポ多糖が感染した患者の尿に感染早期から検出されることが判ってきました。そのLPSを免疫学的に検出する方法のキットが多くの国から販売されています。このキット法は、平成16年から健康保険に適用されるようになりました。保険に適用になることは、その検査法に問題が少なくそれなりの利点があるからです。またその成績も他の方法より優れています。東邦大学病院から公表されている成績を一部改変して、下の表にまとめてみました。
 
表 検査法と診断率
      検 査 法         患者数      陽性例      陽性率  
     尿中の抗原検出法       185      121     63.2% 
   血清中の免疫抗体の定量法     191      72     37.7% 
    培養による細菌の分離      123      40     32.5% 
     遺伝子の検出法        121      73     60.3% 
村上日奈子、モダンメディア 50 (4): 86-91, 2004を一部改変
 
表の最上段の尿中の抗原検出法が痛みを伴わない検査法です。免疫抗体を検出する検査法や培養して菌を分離する方法より検出陽性率が二倍近く高いことがわかります。この尿中のレジオネラ菌のLPSを免疫学的に検出する方法は、尿が1ミリあれば3時間ほどで結果がでます。別な表現をすると、尿中抗原の検出法は、患者に痛みを与えないで検体の採取ができ、感度と特異性が優れ、短時間で結果が得られる特徴があります。一方、不利な点は、レジオネラ症は単一のレジオネラ菌種Legionella pneumophilaによってのみ引き起こされる病気ではなく他にも原因となる菌種が存在することが判っています。それらの菌種を検出できないことが現時点での欠点と思われます。
 
レジオネラ菌は、湿った土壌、湖沼や河川などの淡水や温泉水などの自然環境と冷却塔、循環風呂などの人工的な環境水に生息しています。レジオネラ症は、レジオネラ菌を含むエアロゾルの吸入や汚染水の吸引により経気道感染によって起こると考えられ、ヒトからヒトへの感染はないと言われています。ヒトの感染は、糞便を介した水系感染と私は考えていた時期があります。色々な人たちの協力を得て糞便から当該菌の検出を試みたことがありましたが、結果は全て陰性でした。ところがどうしたことか当該菌の表層物質の一部であるLPS(生きている菌ではない)が尿に排泄されるようです。これは間違いのない事実です。不思議なことも現実として起こるものです。まだまだ解らないことだらけのようです。

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