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398. EBウイルスと子宮ガン.5-10-2005.
 
アフリカにバーキット・リンパ腫という悪性腫瘍があります。このリンパ腫の細胞にウイルス粒子が存在します。このウイルスを見つけ出したエプスタイン(Epstein)とバー(Barr)という二人の科学者の頭文字をとってEBウイルスと呼ばれるようになりました。
EBウイルスは、≪ヘルペスウイルスに属するウイルスで、世界的には伝染性単核症、アフリカではバーキット・リンパ腫および中国では上咽頭癌の原因となるウイルスです。ウイルスの人から人への伝播は、接触による感染で、米国ではキッス病とも呼ばれます。EBウイルスは、思春期以降に初めて感染した場合、伝染性単核症(俗称ナマケ病)を発症します。悪性疾患としては、バーキット・リンパ腫や上咽頭癌を引き起こす。ワクチンなどの予防法は確立されていません≫(微生物の用語解説から転用)。
子宮ガンを引き起こす主な原因体は、パヒピローマウイルス=乳頭腫ウイルスと呼ばれます。パピローマウイルスは、≪子宮癌を起こすウイルスで、ウイルスの人から人への伝播は、接触によります。ウイルスは遺伝子の違いより50以上の遺伝子型に分けられます。16、18、31、33、35型は子宮癌組織、5、8、17、20型はある種の皮膚癌の組織中に検出されます。ウイルスは細胞での培養が困難なため、DNAの構造の違いによりDNA型別で診断されています≫(微生物の用語解説から転用)。
 
このEBウイルスが子宮頸ガンの病原性に重要な役割をもつ可能性がありそうだとの報告の概略を紹介します(MT7-1-04)。ポーランドのM. Wal博士は、子宮頸部ガンへのEBウイルス関与の有無を調べる目的で、21~43歳の19例の女性の子宮頸部ガンを調べました。19例のうち、軽度の患者10例を1群とし、中等度か重度の患者9例を2群とした。さらに子宮頸部ガンの認められない26例(21~43歳)も同時に調査しました。
それぞれの検体についてEBウイルスとヒトパピローマウイルスのDNAの有無をPCR法とELISA法で調べ、各患者の血清についてはEBウイルスにたいする免疫抗体をも調べた。
 
調査の結果、1群では全例がヒトパピローマウイルス陰性(100%)、2例がEBウイルス陽性(20%)であった。2群では全例がEBウイルス陽性(100%)で、7例がヒトパピローマウイルス16型が陽性(77.8%)ヒトパピローマウイルス陰性は2例(22.2%)であった。EBウイルス抗体は、1群と2群ともに認められた(100%)。一方、26例の対照群では、16例(61.5%)がEBウイルスとヒトパピローマウイルスともに陰性で、EBウイルス陽性が8例(30.8%)、ヒトパピローマウイルス陽性が2例(7.7%)であつた。Wal博士は、今後さらに研究を進める必要があるが、この結果はEBウイルス頸部ガンの病因に関与していることを示す証拠だと結論しています。
 
2群の患者9例の全例でEBウイルス陽性(100%)であったとの結果は、子宮頸部ガンにEBウイルスが関与している証拠のようにも判断できます。しかし、健康人でなくても26例の比較対照の患者では8例(30.8%)がEBウイルス陽性であった。9例中の9例(100%)と26例中の8例(30.8%)との間に統計処理すると有意の差が認められるのかもしれない。しかし、EBウイルスは、普通の人でも感染している普遍的に存在するウイルスだけに、慎重な結論続けを期待したい。

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