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410. 高齢者の帯状疱疹とワクチン. 8-22-2005.
 
帯状疱疹
水痘と帯状疱疹という異なる二種類の病気は、水痘帯状疱疹ウイルスVaricella zoster virusと呼ばれる単一のヘルペスウイルスによって引き起こされます。一般に子供に多くみられる水痘=水疱瘡(みずぼうそう)は、水痘帯状疱疹ウイルスの感染により引き起こされ、発熱と発疹を主症状とする良性の疾患です。主に気道を通して感染し、局所のリンパ組織で増殖したのち肝臓や脾臓で増殖してから、全身に疱疹が出現します。皮膚に達したウイルスは,毛細血管内で増殖して水疱を形成します。水痘が治った後も脊髄後根神経節(知覚領)や顔面にある三叉神経節にウイルスは潜伏して増殖しないで存在し続けます。何らかの刺激でウイルスの増殖が再活性化すると、神経に沿って皮膚に表れ帯状疱疹となります。非常な痛みを伴うようです。初感染の初期にはウイルス治療薬としてアシクロビルがあり、ウイルス感染の予防には弱毒生ワクチンが開発されています。
水痘は治ってもその原因ウイルスである水痘帯状疱疹ウイルスは、体外に排出されるこくなく、神経細胞などに潜伏感染の状態になり、増殖もなく生き続けています。何がしかの刺激が原因で潜伏状態から覚醒し、ウイルスは増殖を開始し、神経に沿って皮膚に達します。小児期の水痘とことなり、帯状疱疹の痛みは大変だとよく聞きます。免疫能が弱くなるとウイルスの増殖はより活発となるようです。
 
ワクチン接種の効果
カリフォルニア大学サンディエゴ保健医療センターのM.N.Oxman教授らは、予防ワクチンの接種により高齢者の帯状疱疹と帯状疱疹の神経痛の罹患率が著明に低下したと発表しました(N. Engl. J. Med. 352:2271-2284, 2005) 。
それによると60歳以上の成人3万8,546例を対象に大規模な試験を行ないました。被験者のうち帯状疱疹の確定診断を受けた患者は957例で、そのうちワクチン接種群は315例、プラセボ接種群は642例でありました。帯状疱疹後神経痛患者は107例で、そのうちワクチン接種群は27例、プラセボ接種群は80例でした。ワクチンの接種により帯状疱疹による疾病負荷が61.1%、帯状疱疹後神経痛の発生率が51.3%低下したことを見出した。疼痛と不快感の平均持続期間がワクチン接種群では21日、プラセボ接種群では24日と少なくなりました。このワクチンの最小効力は、水痘予防のために承認されているワクチンの14倍以上であると述べています。最後に米国の65歳以上の高齢者の約35%はインフルエンザワクチンの接種を受けてなく、約60%は肺炎球菌ワクチンを受けていない。帯状疱疹が生活を変えるほどの消耗性疾患で、ワクチンによりこの疾患を半減あるいはそれ以下に減らすチャンスがあると述べている。
 
抗癌剤や免疫抑制剤を投与されているガン患者や臓器移植者などは、免疫能が低下しているので、水痘(水疱瘡)や帯状疱疹に罹りやすくなります。白血病を患っている患者が多い小児病棟などで、水痘の院内感染が流行ると大変な問題となります。そのような折りに用いられるように水痘帯状疱疹のワクチンが開発されています。そのワクチンを高齢者に用いても有効であったとの報告を紹介しました。

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