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411. ブタのレンサ球菌について. 10-15-05.
 
中国で多数の死者を出しているブタのレンサ球菌による集団感染事故については、「408. ブタのレンサ球菌による集団感染. 9-15-2005.」で概略を紹介しました。その後、ブタのレンサ球菌について調べてもらい、わずかですが情報を入手できましたので、説明させてもらいます。
 
ブタでのレンサ球菌による感染症は、主としてブタのレンサ球菌Strepto -coccus suisが原因となり髄膜炎、敗血症、肺炎、心内膜炎や多発性関節炎を引き起こす。レンサ球菌の感染症が1度養豚場に侵入すると、なかなか発生を抑えられない、またワクチンもまだ開発されていないので、根本的な対処法がないので、駆逐する対応に苦慮するようです。
 
一般的な性状。
Streptococcus suisは、直径が0.5〜1.0μmの球状の菌が連鎖を形成し、
グラム染色をすると陽性に染まる通性嫌気性菌(酸素があってもなくても増殖する)です。鞭毛や芽胞はない。菌体表面に莢膜があり、その莢膜の抗原の違いにより1型から35型の種類に分類されています。
綿羊の血液を含む血液寒天平板培地上での細菌集落は、直径1〜2mmの灰白色で、菌種により完全溶血、不完全溶血と非溶血を示します。レンサ球菌を分離するには、5%綿羊血液加寒天培地を用い、37℃で好気培養することで容易に分離できるようです。最初に分離する(初代分離培養と呼びます)時は、嫌気度が高いほど分離率が高くなるそうです。私は取り扱った経験がありませんので、どのような理由から嫌気度が高いと分離率がよいのかその理由はよく判りません。最も頻繁に分離されるのは、莢膜の血清型が2型であるそうです。
レンサ球菌の抵抗性は一般的に比較弱く、55℃の加熱により急激に死滅します。また消毒薬にも抵抗性が弱く、一般的な消毒薬の普通の使用濃度で5〜10分で死滅するそうです。乾燥に対しても抵抗性が弱いので、環境中に長期間生存することはないと書いてありました。
 
予防と治療。
レンサ球菌のヒトの感染は、当該菌の保菌ブタとの濃厚な接触または汚染ブタ肉の摂取により起こっているようです。ヒトからヒトへの感染の報告はないようですが、医療従事者は患者血液との接触の仕方によっては感染する可能性がありましょう。ブタでの予防は、ワクチンがいまだ開発されていないので、抗菌剤の予防的投与あるいは消毒などの飼養管理と衛生管理の徹底による対策しかないようです。
 
 
日本海の広範な海域で「エチゼンクラゲ」の大発生による魚業の被害が拡大しているとマスコミで取り上げられています。生物が異常に発生する(数が多くなる)には、海域の富栄養化、海水温度の上昇、海流の蛇行、エルニーニョ現象などの幾つかの要因が必要と思います。そのなかで素人の私達にでも想像できるのは、エチゼンクラゲの栄養になる餌が増えたことによる異常発生でないのかなということです。本州より南の海域にその原因の元があるのと違いましょうか。ブタのレンサ球菌によるヒトの感染は、汚染されたブタ(キャリアー)または汚染豚肉の取扱い、未加熱または加熱不十分な汚染肉の摂取に原因があります。カリカリにまで焼けた肉よりは、生肉の方が美味なのだろうとは推測できますが、新鮮であっても汚染されている肉の摂取は危険なようです。

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