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417.ノーベル賞に輝いたピロリ菌.1-5-2006.
 
ピロリ菌のノーベル賞
2005年のノーベル医学生理学賞は、ピロリ菌発見者の二人の医科学者に贈呈されることが決まったとマスコミが伝えていました。受賞者は西オーストラリア大学のB.J.Marshall教授54歳とJ.B.Warren博士68歳で、受賞テーマは「Helicobacter pyloriヘリコバクター・ピロリの発見と胃炎や消化性潰瘍における役割」です。二人の医学者は、ピロリ菌を発見し、胃炎や胃潰瘍がピロリ菌の感染によって引き起こされること、更に抗生物質でピロリ菌は除菌できること、除菌により胃炎や胃潰瘍が治ることなどを明らかにしました。
 
ピロリ菌とは
ピロリ菌は、1981年に胃炎や胃潰瘍の患者の胃材料から分離された細菌で、1〜2μmのラセン状のグラム陰性桿菌で、菌体の端に極多毛性の鞭毛を持ち、これをスクリューのように回転させて活発に動き回っています。ピロリ菌は、尿素を分解するウレアーゼという酵素活性が病原細菌の中では最も強い菌です。胃には強い胃酸があるため普通の細菌は生きらませんが、ピロリ菌は強力なウレアーゼ活性を持つので、強い酸性状態の胃の中でも、尿素を分解してアンモニアを作り、pHを中性に保ちながら生存し増殖しているようです。産生されたアンモニアは、白血球が産生する次亜塩素酸と反応して、モノクロラミンになり、これが細胞に強い障害を与えます。
 
ピロリ菌の発見
1930年代に北里研究所の小林六造らによりイヌの胃にラセン状菌が存在している事が報告されていましたが、あまり注目されなかったようです。その後も胃には胃酸が存在するのでpHは極めて低い、そのため胃のなかで細菌といえども生息できる筈がないとの強い思い込みがありました。
J.B.Warren博士(病理学者)は、胃潰瘍や胃炎の患者の胃の出口(専門的にはpylorusという部分)にラセン状(helical)の細菌が多数集まり、そこで胃粘膜の炎症が起きていることを観察しました。
Warren博士の研究に参加したMarshall教授は、1983年にそのラセン状菌Helicobacter pyloriの分離と純粋培養に成功しました。分離されたラセン菌が胃炎や胃潰瘍を本当に引き起こす力があるのかを確認したく、Marshall教授は培養した菌液を自らが飲むという方法で、この菌が胃炎や胃潰瘍の原因になることを証明しました。
このMarshall教授の行為は、あまり褒められる方法でもないし、他人に強制もできない、ある意味では不常識な無鉄砲さが、ノーベル賞に輝く大発見に導きました。百年前にローベルト・コッホがコレラの原因となるコレラ菌を発見したとき、この説に反対を唱えた衛生学者ペッテンコーフェル教授が弟子と二人で培養したコレラ菌を飲んで、否定実験を試みました。結果は、コレラはコレラ菌により発症することを証明してしまいました。「絶対に間違いないとの信念や常識」は、時に大きな落とし穴を準備したり、逆に絶賛をあびる功績を残したりすることもあるようです。
 
胃ガンとの因果関係
ピロリ菌は、注射針のような構造物を胃の細胞に刺し込み、細胞のガン化に関与が疑われている毒タンパク質(CagA)を注入します。細胞内でこのタンパクが酵素(SHP-2)と結合して、細胞の増殖異常を引き起こすようです。日本は胃ガンの最多発国で、毎年10万人ほどが新たに胃ガンと診断されています。
世界的にこのピロリ菌は、分布していますが、胃がんの多い国(東南アジア諸国)のピロリ菌と胃ガン発生の少ない国(欧米諸国)のピロリ菌は、CagAと酵素との結合に違いがあることまで判ってきました。酵素を活性化する力が菌によって違うのです。
 
 
日本国内では毎年約5万人が胃ガンで命を落としています。胃ガンの発症にピロリ菌の感染が決定的に重要な役割を担っていることは明らかとなっています。抗生物質による最初の治療で除菌される可能性は、約85%と言われています。私は消化器内科の先生にピロリ菌の除菌をお願いして、三種類の抗生物質で治療して頂きました。ところが運悪く私の胃に生息しているピロリ菌は、抗生物質に強い抵抗性を示す性質であったため、最初の治療では85%の範囲に残念ながら入りませんでした。再度挑戦してようやくピロリ菌の感染から逃げ出すことが出来ました。
私のような年齢になりますと、殆どの人がピロリ菌の感染を受けていても不思議ではありません。しかし、「胃ガン」は恐ろしい病気ですから、ピロリ菌の検査をうけて、運悪く胃にピロリ菌を飼っていると判明した人は、除菌の抗生物質による治療を受けられることをおすすめします。
ピロリ菌については、これまでに86. ピロリ菌は胃ガンを起こす?3-23-98.381. 糞便中のピロリ菌の検査. 12-2-2004.を曖昧模湖に掲載してあります。興味のある方は読んでみてください。

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