425. 子宮ガンをワクチンで予防. 11-17-2005.
乳頭腫ウイルスによる二種類のガン
乳頭腫(パピローマ)ウイルスによる子宮頸ガンと尖圭コンジローマ(性器のいぼ)の二種類のガンを例に説明します。乳頭腫ウイルスは、遺伝子の違いより50種類以上の遺伝子型に分けられています。遺伝子の型が16、18、31、33と35型は子宮癌組織に、5、6,8、11,17と20型はある種の皮膚癌の組織中に検出されることが多い遺伝子型です。
子宮は、酒のトックリを逆さにしたような形をしています。子宮の先端が腟の奥に突き出ている細い部分を頸部と呼びます。子宮頸部の粘膜から発生するガンを子宮頸ガンといいます。子宮頸ガンは、40歳代から50歳代に最も多い病気ですが、20歳代の女性や80歳以上の人にもみられます。全世界で毎年470,000人の女性が子宮頸ガンに罹り、そのうちの220,000人が死亡しているそうです。全世界では数千万人の女性が子宮頸ガンの不安をいだきながら、不愉快な検査に毎年数千億円の出費を強いられていると推測されています。原因ウイルスとしては、乳頭腫(パピローマ)ウイルスの16型と18型が一番多いと考えられています。
性器の外側の部分の粘膜や皮膚面に、先の尖った小さい「性器の疣贅(いぼ)」が多発します。これを尖圭コンジローマと呼びます。女性では、腟入口、小陰唇、肛門などに、男性では亀頭や陰茎にできることが多いようです。女性では、子宮の入口や腟壁にもできることがあります。原因ウイルスとしては、乳頭腫パピローマウイルスの6型と11型が一番多いと考えられています。
4価ワクチンの完成
米国のメルク社は、パピローマウイルスに対する4価ワクチン“Gardsil”を作製し、五千人の女性に投与し、その結果子宮頸部ガンに対して予防効果のあること認めたと発表しました(MT11-17-05)。
13カ国の90施設に登録されていた女性5,300例を対象として、ワクチンを3回接種(初回接種の二ヵ月後と六ヵ月後)とその後17ヶ月間の観察を実施し、高度前ガン病変と非浸潤ガンの発生を調べました。規定通り3回のワクチン接種を受けた5,300例の女性ではガンの発生は皆無でした。ところが偽ワクチン(プラセボ)の接種を受けた5,250例では21例の発生が認められました。ワクチン接種の回数が1から2回の例や予定通りに接種しなかった例を含む5,700例を検討したら、ガンが認められたのは1例であったが、プラセボ群では36例に認められました。
ワクチン接種による有害な副作用によりワクチン投与を中止した例は皆無でありました。ワクチン接種群の有害な副作用の発生率は、プラセボ群よりは高く、最も多かったのは注射部位の反応でした。米国では約二千万人の男女が乳頭腫ウイルスに感染している。子宮頸部ガン患者の約70%は乳頭腫ウイルスの16型と18型の感染に、性器の疣贅(いぼ)の約90%は乳頭腫ウイルスの6型と11型の感染に起因するが、メルク社の4価ワクチンGardsilはこれらのウイルスにも対応しているようです。
メルク社は、米国食品医薬品局FDAにこのワクチンの承認の申請を行うと発表しているようです。FDAから正式にワクチンとしての認可が出されると、全世界に存在する乳頭腫ウイルスの感染者にGardsilはガンの予防に効果を発揮することでしょう。三年前の曖昧模瑚に「314. 子宮ガンのワクチン実用化近し」を掲載してあります。参考までに書き添えます。