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427. 脳炎を起こすニパウイルスによる感染症. 6-10-2005.
 
ニパウイルスの発見
脳炎を主な症状とし死亡率の高い新しいエマージングウイルス感染症の原因ウイルスであるニパウイルスについては、1999年の曖昧模瑚「139.マレーシアの新しい脳炎. 4-17-99.」として掲載してあります。数年まえの紹介文ですが、いま読んでみると私にはそれなりに面白く感じられます。
今回は日本国内でも患者の発生が危惧される死亡率の極めて高い脳炎のウイルス感染症が、ブタまたはオオコウモリとの直接接触による感染の広がりが判明してきました。マレーシアで始まった脳炎症状を起こす感染症に続き、バングラディシュで発生したニパ様ウイルス感染症の研究の進展状況を紹介します。オオコウモリの生息地に旅行される方は慎重に行動されることを期待します。
 
ニパウイルス感染症の出現
1997年マレーシアの養豚地帯で脳炎症状を示す患者が出始め一人が死亡しました。1998年の10月には成人男性に脳炎が流行し、1999年2月までに15名が死亡しました。同時期に養豚地帯のブタに激しい呼吸器性疾患の大流行が観察されています。1998年から1999年にかけてニパウイルス感染症の患者総数が265名になり、死亡率は約40%でありました。この時期にマレーシアからブタを輸入したシンガポールで、11名の感染者が出て、そのうち一名の死亡が確認されました。
1999年3月にマラヤ大学のサンプルからVero細胞(アフリカミドリ猿の腎臓から確立された日本産の株化細胞)に多核巨細胞を形成するウイルスが分離され、電子顕微鏡で160〜300ナノメーターnmのパラミクソウイルスが観察されました。ウイルスが分離された村の名前からニパウイルスと命名されました。
 
自然宿主と感染経路
マレーシアに生息するオオコウモリと食虫コウモリを捕らえて、血清中のニパウイルスに対する免疫抗体の測定が行われました。その結果、オオコウモリ5種類からの血清に免疫抗体が検出され、最大で27%の抗体陽性率でありました。その後、オオコウモリの尿や唾液からニパウイルスが分離され、感染したヒトから分離されたウイルスと遺伝子配列が一致することが分かりました。オオコウモリがかじった果物からもウイルスが分離されることから、ブタがこれらと濃厚に接触したことにより、感染したと推測されています。
1999年の流行後マレーシアではニパウイルス感染症の発生は起こっていません。しかし、オオコウモリにニパウイルスは定着し維持されているので、患者の発生がなかった地域のオオコウモリでも抗体の保有が報告されています。
これまでの流行とは別にバングラディシュで脳炎症状を呈する疾病の流行が観察され、2001年から毎年のように死亡例が報告され、既に55例の死亡例が報告されています。このバングラディシュでの流行は、ブタとの接触歴のない若者の発症で、死亡率は70%にも達するようです。オオコウモリとの接触またはオオコウモリがかじった果物などからの感染が疑われているようです。ヒトからヒトへの感染はないようです。
 
診断と治療
ヒトの臨床症状は、脳炎が主であります。潜伏期間は4日から18日で、発熱から始まり、頭痛、眠気が起こります。重症例では3日から30日後に昏睡に陥り死亡します。患者の尿や咽頭ぬぐい液にウイルスの排泄が認められ、看護者での抗体価の上昇例も見られています。ブタ以外の動物では、イヌ、ネコ、ウマで認められています。診断のためには、ウイルスの分離、RT−PCR法によるウイルスの検索、免疫抗体の検索がなされています。有効な治療法はないので、オオコウモリの生息地への旅行は慎重にすべきと思われる。
 
 
ブタを介さない感染者の発生では、感染経路の調査研究が諸外国では進行中です。WHOやCDCは、この類の感染性ウイルスを扱うにはP3以上の隔離実験施設と感染実験はP4隔離実験施設で行うようにと警告を発しています。従って、現在のところ日本国内ではP4施設が稼動していませんので、このウイルスの感染実験は行われていません。感染実験を伴う研究は、P4実験施設をもつフランスやアメリカで行われています。ワクチン開発の研究もP4施設をもつ諸外国と共同研究にならざるを得ないのが現状のようです。日本に近い国での感染流行ですから、国内でも研究ができ、旅行者などにも適切な情報の提供ができることが望まれる。

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