434. 新しい神経系(?)のトスカーナウイルス. 1-6-2006.
イタリア中部のトスカーナ地方で1971年に発見されたトスカーナウイルスは、あまり研究されていないので、ウイルスの性状も病気の伝播の仕方もよくわかっていません。そのためほとんどの医師は、このウイルスの存在すら認識していないようです。しかし、「サシチョウバエによって媒介されるウイルスで、短期間に感染地域が拡大し、中枢神経系に感染するリスクがある」と、マルセイユにある地中海大学のウイルス学者Remi N. Charrel氏は警告を発しています(Emerging Infectious Diseases 11:1657-1663, 2005)。
かつてウエストナイルウイルスは、われわれが気がつかないうちに血液製剤に紛れ込んでいたことがあります。30例以上のヒトが献血を介して感染したことがあり、また移植した臓器により感染した例も知られています。
欧州の地域によっては、トスカーナウイルスは髄膜炎や脳炎の原因となっていますが、病原体としてはあまりまだ知られていません。北米にウエストナイルウイルスが伝播したため、節足動物によって媒介されるウイルスに対して、保健当局は強い関心を示しています。
トスカーナウイルスの侵淫地域は、イタリアとポルトガルと当初は考えられていましたが、現在ではフランス、スペイン、スロベニア、ギリシャ、キプロス、ドイツ、トルコなどでも検出されています。これらのことからウイルスの侵淫地域は、広がっているようです。さらにポルトガルから帰国したスエーデン人からもウイルスが検出されていることから、旅行者にとっても懸念材料となっているとCharrel氏は述べています。
節足動物によって媒介されるウイルスには、日本脳炎、黄熱、エウストナイル病、デング熱などを引き起こすウイルスが多く含まれます。密林の野生動物がウイルスの自然宿主で節足動物がウイルスを媒介する病気は、一般的に駆逐するのはたいへんにやっかいです。トスカーナウイルスも人間社会に深く潜り込んでこないことを期待したいものです。