435. 口腔内の細菌が全身病の原因.6-20-2006.
キーワード:口腔細菌 歯周病 全身病
子供の頃はよく虫歯に悩まされ、夜も寝られないこともありました。そんなときにはお袋には大変なめいわくをかれました。現在は虫歯はないのですが、歯グキがやせ細る傾向が観られ、いずれは義歯のお世話にならざるを得ないものと覚悟しています。これは寂しく感じますが、ある意味の自業自得なのですから仕方がありません。
数名の歯科医師が土日も診療してくれる「オオキ歯科医院」が自宅の近くにあります。院長の大木先生は、年齢は私より相当に若い方ですが、なにごとにも積極的で、学術的な診療をされ、母校の大学でも学生たちに講義をされています。大木先生からこれまでに色々なことを教えてもらいました;歯磨きが適切になされていないと、歯グキのポケットに白いものがあり、これは食べ物の残りかすではなくバイキンの塊なのです。このバイキンにより歯周病(歯槽膿漏)となり、最悪の場合は全ての歯が抜け落ちてしまいます。さらに口腔内のバイキンが体内に入りこむと、全身をかけめぐり、意外な病気の原因となりますとも。
先日オオキ歯科医院の待合室の壁に「歯周病が原因で死ぬって・・・?」と書いてある色つきのポスターが貼ってあるのに気がつきました。そこには「早産の危険率が7.5倍」とあり、よく読むと口腔内が健全な人と歯周病疾患のある人との差を示しているようでした。そこで受付のお嬢さんに「このポスターを貰いたいが余分なのがありますか」と聞いてみた。そうしたら大木先生が診察室から出てこられて、「余分にはないが、ポスターの内容は10年近く前のものです、早産の危険性などは七倍にも高くなります・・・、コピーをあげましょう」と言ってくれました。受付のお嬢さんが親切にも、三枚に分割して複写してくれました。
このポスターに書いてある内容の概要を紹介します。
「歯周病が原因で死ぬって・・・?」は、「カリフォルニア大学・歯学部Michael G. Newman教授の発表:日本口腔健康医学会資料参考・日中新聞掲載記事引用」と出典が明記してあり、臨床歯科インフォームド・コンセント推進の会の発行と記載されていました。
大きく人体の解剖図が描いてあり、次のような臓器に印がつけてあります。
≪肺:呼吸器系疾患、心臓:心臓血管病、すい臓:糖尿病、子宮:早産。≫
健全な口腔内の人たちと歯周病疾患のある
人たちとの全身病罹患率の比較調査
心臓発作の発症率 2.8倍
脳卒中・脳梗塞の発症率 3.0倍
早産の危険率(2,500g以下の低体重児出産) 7.5倍
胃ガン・胃潰瘍・腎炎・糖尿病
呼吸器系疾患(誤嚥下性肺炎、ぜん息、咽頭炎、気管支炎)
歯垢・歯石の1mg(千分の一グラム)には、約2億個の細菌がウヨウヨし、それらの細菌・膿を毎日飲み込んで直接に各臓器に、また同じ細菌が歯グキ内の血管を通じて体内の臓器へ、全身をムシバミ全身病を誘発!!と書いてありました。この内容とほぼ同じ事を大木先生からはまえもって聞いていました。
歯のかみあわせが悪いと、肩こりの原因になることがあるとは聞いたことがあります。胃ガン・胃潰瘍はピロリ菌などを想定すると可能性はあるのかと思います。口からノドにつながっていることから、化膿を起こす細菌により呼吸器系疾患も可能性は考えられます。しかし、心臓発作、脳卒中・脳梗塞、早産や糖尿病などは、口腔内の細菌との因果関係を理解するのは少し難しいように思えます。心臓発作、脳卒中・脳梗塞などは、細菌が増殖して塊を作るからと推測することが可能なのでしょうか。早産と糖尿病は、ホルモンとの関係から結果として危険率が高まるのかしれません。いずれにしても「たかが歯周病」と簡単に考えすぎると危険な落とし穴があることをこのポスターは、警告しているものと思いました。
歯垢(しこう)の耳かき1杯は、1ミリグラムほどにあたり、そこには数千万個から10億個くらいの細菌がいると言われています。歯周病を起こす細菌には、酸素を好む種類もいれば、酸素を嫌う種類の細菌もいます。このような多くの種類の細菌が少量であっても毎日体内に入り込む可能性があると考えると、色々な全身病を引き起こす可能性が高くなるのかもしれません。歯のみがき方で歯周病は防げるようですが、普通の人の歯みがきは磨いたことにならないそうです。