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449. インフルエンザの流行対策.11-1-2006.
キーワード:インフルエンザ 抗ウイルス薬 ワクチン ワクチン投与の優先順位
 
鳥インフルエンザ流行に対策あり?
オオカミ少年よろしく、鳥インフルエンザがおしよせてきたら、大変なことが起こるといくら脅かしても、あまり意味はありません。しかし、もし鳥インフルエンザが人間社会で大流行したら、大規模なワクチン不足がおきることが予測されます。これはまず間違いのないことでしょう。
アジアを中心に鳥インフルエンザウイルスによる鳥のインフルエンザ感染は、もうすでにおびただしい数になっています。さらに鳥インフルエンザのヒトの感染もそれなりに確認され、既に死亡例も100人のオーダーになっているようです。
「鳥インフルエンザはいつ流行するのか」との質問は、少し前から私のところにもどいています。この方々に対して個々に送ったメール文をもとにして「インフルエンザ流行の対策」と題してまとめましたので、これを紹介させてもらいます。
この冬はまだ暖かい日々が続いていますが、寒波がとうらいするとインフルエンザ流行の季節となります。鳥インフルエンザがはやるともはやらないとも誰も断言できませんが、インフルエンザにまつわる情報をまとめて紹介します。
 
抗ウイルス薬が重要
鳥インフルエンザと流行対策における抗インフルエンザ薬について、米国コーネル大学医学部のAnne Moscona博士らは、インフルエンザ流行との取りくみに抗ウイルス薬は重要であると発表しました(New Engl. J. Med. 353:1363-1373, 2005)。
インフルエンザ感染の治療薬または予防薬として承認されているのは、amantadine系のアマンタジンとリマンタジン、ノイラミニダーゼ阻害薬としてのザナミビルとオセルタミビルの4剤だけです。amantadine系薬剤は、毒性があるのみならず、A型インフルエンザウイルスにのみ有効で、薬剤耐性ウイルスの出現が認められることから、amantadine系薬の有効性は限られる短所がありますが、インフルエンザ流行時(鳥インフルエンザウイルスはH5N1のA型です)には予防薬としての使用が考えられます。
ノイラミニダーゼ阻害薬は、A型インフルエンザウイルスに限らずB型インフルエンザウイルスにも有効で、耐性株の出現率や毒性も低い特徴があります。また高齢者を含めた高リスク患者の罹患率と死亡率を改善し、成人の有症候性期間を短縮できます。さらに細菌性肺炎への二次感染罹患率を抑制し、中耳炎の発症は44%も低下するとの報告もあります(Lancet 364: 759- 765, 2004, Clin. Infect. Dis. 40: 1309-1316, 2005)。
予防薬としてのザナミビルとオセルタミビルの有効性は、70〜90%とされています。公表されているデータは少ないようですが、ワクチン接種を受けた人がさらにノイラミニダーゼ阻害薬の投与をうけるとさらに効果的であるようです。
 
新型インフルエンザワクチン
北京にあるSinovac Biotech社のW. Yin博士らは、開発中のH5N1(鳥)型インフルエンザワクチンは、健常者に対して低用量でも安全に免疫状態を誘導できると発表した(Lancet 368: 991-997, 2006)。
世界中で多くの製薬会社がインフルエンザ大流行に対するワクチンを開発中ですが、一部はすでにその有効性も評価されています。これまでの研究では、H5N1型インフルエンザウイルスのアジュバント添加ワクチンの30マイクログラムを2回接種すると免疫反応が誘導されるとの知見が示されています。しかし、2回接種が必要な1回30マイクログラムを投与するワクチンでは、世界の生産能力では2億2,500万人分しか供給できそうもありません。
Yin博士らは、18〜60歳のボランティア120例を対象にH5N1型改良型アジュバント添加不活化ワクチンについて調査しました。1.25マイクログラム、2.5マイクログラム、5.0マイクログラムまたは10マイクログラムのワクチンを2回接種しました。56日後に全ての接種量でウイルスに対する抗体が検出され、2回接種後10マイクログラム群が最もよい反応を示しました。ワクチン接種群とプラセボ群では、報告された副反応の頻度に有意な差は認められませんでした。この成績では、これまでのワクチンの三分の一の接種量で充分な免疫を誘導できることを示していると思われます。
 
ワクチン接種の優先順位
もし鳥インフルエンザが大流行したら、大規模なワクチン不足が予測され、と同時にこの恐ろしいインフルエンザに対するワクチン投与の優先順位が非常に難しい問題となりそうです。
米国立衛生研究所・生命倫理学部部門のE. J. Emanuel博士とA. Werthermer博士は、医療従事者やワクチン製造関係者の次に13〜40歳人口を優先させるべきであると発表しました(Science 312: 854-855, 2006)。一方、ベーラー医科大学・分子ウイルス学・微生物学科のW. A. Keitel博士らは、高齢者にはワクチンの高用量投与が必要であると発表しました(Arch. Internal Med. 166: 1211-1217, 2006)。病院職員や公衆衛生関係者、医療従事者、ワクチン製造関係者などへのワクチン投与が最優先されるのは、疾患の流行後もかわることはないと思われます。
しかし、Emanuel博士らは、これまで比較的に免疫能が弱いために優先順位の二番目にあげられていた乳幼児と高齢者は、優先順位を繰り下げて、10歳代の若者や若年青年(13〜40歳人口)を優先すべきと主張しています。この理由として、1918年のスペイン型インフルエンザが大流行した時、13〜40歳の年齢層の死亡率が最も高かったこと、さらに「ライフスタイルの原則」にもとづいて優先順位を評価したと指摘しています。「ライフスタイルの原則」とは、これまで人生に投資してきた期間と残りの人生の期間とのバランスにより順位を評価する方法で、これによると「思春期初めから中年までの年齢層」を優先させることになると説明しています。さらに「社会的な貢献度」からもこれらの年齢層を優先させる理由となるようです。これらの年齢層を優先させることで、食料や資源など生活に不可欠な物質の供給力が高まるからだとも指摘しています。
一方、Keitel博士らは、65歳以上の高齢者202例を対象に15マイクログラム、30マイクログラムと60マイクログラムのインフルエンザワクチンを投与した調査を行ないました。ワクチン接種一ヵ月後の検査結果では、高用量ワクチン投与群では、低用量投与群と比較してインフルエンザウイルスに対する抗体がより多く産生されており、ウイルスに対する抵抗性も強かった。現行のワクチンは、若年齢者の予防には適切だが、高齢者などインフルエンザによる入院や死亡リスクが高い人口では、一貫した成績が得られなかったと指摘しています。
 
 
いま現在インフルエンザが流行りだしたときの対策としては、小さな子供たちにカゼの症状が見られたら、インフルエンザ流行のキザシと考え、注意しましょう。できればワクチンを事前に接種しておき、抗インフルエンザ薬を予防策として用い、できるだけ人ごみの場所には出かけない。人ごみの場所には、医療機関も入ります。セキが出るようになったら2日以内にノイラミニダーゼ阻害剤の服用を開始し、マスクを使いましょう。外出さきから帰ってきたときマスクは捨てるか洗濯しましょう。ウガイと手洗いを励行し、鼻の穴も洗いましょう。夜更かしなどのフセッセイを避けて、栄養価のある食事と充分な睡眠を心がけましょう。

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