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451. 日本人男性のY染色体.11-24-2006.
キーワード:日本人のルーツ Y染色体 遺伝子分析 縄文人 弥生人
 
聖母大学の村上純子教授は、モダンメディアという雑誌(2006年6月号)に「日本人のY染色体」と題する随筆を書いておられます。その内容がとても面白いので、ここにその概要を紹介します。そのうえで村上教授の随筆に引用されている徳島大学の中堀豊教授の発表を調べましたので、日本人のルーツについてもあわせて紹介します。
 
日本人のY染色体
DNAは、細胞の核とミトコンドリアのなかにあります。核のDNAは、細胞が分裂するときに小さく折りたたまれ、いくつかの固まりとなって分かれます。この固まりを染色体といいます。染色体のなかに性染色体と呼ばれるものが一対あり、男性だとXYで、女性はXXという組み合わせになります。そのためY染色体のDNAは、父親から息子へと遺伝して受け継がれていきまい。一方ミトコンドリアのDNAは、母親から男女の子供へと遺伝していきます。
男性であることを規定するY染色体は、たいした働きもせず、不必要なところばかりが多い染色体であるらしい。たしかに、Y染色体は5,000万 塩基対程度の大きさのDNAを含むにもかかわらず、遺伝子は27個しかない (普通なら数百個はある) 。そのうえ、Y染色体には多くのDNA多型が存在し、必ず男性の系統を受け継がれていくことから、男性の世界的な系統図を作成するのに非常に役立つようです。その結果、日本人男性のY染色体は、4種類に大別され、うち2種類は縄文系、他の2種類は弥生系であることが判明し、両者ともに大陸からの移住組であるという。
徳島大学の中堀豊教授によると、Y染色体からみる限り、日本の男性は大陸の落ちこぼれらしい。すなわち、大陸から押し出される形で到来した1度目の落ちこぼれである縄文人と、2度目の落ちこぼれである弥生人が、あとは太平洋に落ちるしかないところで、お互いをほろぼしてしまうことなく、まさに窓際族同士、仲良く自然を享受しながら生きてきたのが日本の男性なのだそうだ。ちなみに、日本人に伝わったタイプは、大陸ではほぼ消滅してしまった (滅ぼされてしまった) そうである。

男の祖先DNAでルーツを探る
睾丸や精子の形成に関係するのがY染色体で、Y染色体に書き込まれた文字数は6,000万個になります。他の染色体に比べて、Y染色体の多型は極端に少なく、200カ所ほど見つかっているが、Y染色体のDNAのある特定の場所に挿入されたおよそ300塩基からなる『YAP』(ヤップ)という部分があります。
中堀豊教授らによれば、Y染色体のYAP多型は東アジアでは日本人にしか見られず、昔から日本にいた人たち特有のものと考えられている。日本人で数パーセント見いだされ、それもアイヌ人、沖縄人で頻度が高い。宝来聡教授(アリゾナ大学)の研究ではアイヌ民族の88%にYAPがみられるという。ところが、韓国をふくめユーラシアでも、この遺伝子はほとんど見つからず、日本以外で唯一見つかるのはチベットだけであるという。世界的に見てもそのほかには黒人にしかみられない変わった遺伝子型である。このことから、ヤップがあるのが縄文系男性、ないのが弥生系男性と判断できるというのです。
また中堀教授らの研究グループは、1999年にY染色体にあって胎児期に睾丸を作るよう命令する「SRY遺伝子」の465番目の塩基が、人によってC(シトシン)かT(チミン)かの違いがある「多型」であることを発見した。中堀教授は、1)YAPの有無、2)SRY遺伝子の465番目の塩基がCかTか、3)DXYS5Yの塩基の違いという、Y染色体中の3つのDNAの型をもとに、日本人の男性を縄文系と、タイプの異なる3つの弥生系の4つに分類したYAP+タイプ2の集団は、都市部では北から南まで均等に分布し、金沢、福岡、大阪、札幌のいずれで調べても、人口の約25%程度を占める。しかし本州や四国の山間部では5割を占めていた。弥生人に追われた縄文人という通説にほぼ合致する結果である。
日本の男性は1万年以上前から日本列島に住んでいた縄文人と、縄文時代後期に大陸や朝鮮半島から移住してきた弥生人にルーツを持っているのである。ついでながら、中堀教授らのグループの研究によれば、縄文人の系統とされる「タイプ2」の男性の精子数は、弥生人系より2割以上も少なく、2〜4倍も無精子症になりやすいのだそうです。

母親の系譜
宝来聡教授などの研究グループは、外見の特徴から白人に由来すると考えられていたアイヌの人々のルーツを探るため、1960年代に採血された血液からミトコンドリアDNAを分析し、さらに、縄文の人骨5体のミトコンドリアDNAを分析して、アイヌのルーツが縄文人であることを突き止めた。さらに、東アジアの5つの集団のミトコンドリアDNAを分析し、日本人の成り立ちを調べた。それによると、本州では、日本人固有のタイプは4.8%、それに対して韓国人や中国人と共通の配列を持つ人がおよそ50%に達し、アイヌや沖縄と共通のタイプを持つ人が4分の1であった。現代の日本人が北アジア人、特に韓国人に最も近い遺伝的類似性を持っていることを確認した。このことは、弥生時代以降に大陸や半島から日本へ遺伝子の拡散が生じたとする従来の説と一致する。さらに、宝来教授らは太平洋を隔てたアンデスの先住民が、日本のアイヌや沖縄の人々と非常に近いことを示したのである。つまり、1万2千年前に日本列島に移動し、縄文の文化を築いた集団がいた。それから1万年後、別の集団が再び日本列島に渡ってきて弥生文化を築いたのである。
 
「日本人男性のY染色体」は、微生物とは関係ありませんが、DNAの分析から新しい情報が得られる良い例と思い紹介しました。ある地域のある民族との近縁関係を調べる手段として、ここに紹介した染色体DNAの分析法があります。これ以外にもB型肝炎ウイルスやCJウイルスの遺伝子を分析し、その多型から推測した成績も報告されています。今回の報告内容に限らず、アンデスの先住民と日本のアイヌ人や沖縄人が近縁であるとの結論が導き出されるようです。

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