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467. 電子レンジは強力な殺菌ツール. 4-10-2007.
キーワード:家庭用電子レンジ 汚水の細菌 殺菌
 
フロリダ大学環境工学の教授で廃水細菌学が専門のGabriel Bitton教授らは、共同研究者とともに一般家庭で使われている電子レンジを用いて一般人に役に立ちそうな研究を実施し、その結果を発表しました(J. Environ Health 69: 17 - 24, 2006)。
 
多くの家庭で汚れたスポンジやブラシを皿洗い機に入れて洗浄しているが、これはほとんど効果がない。皿洗い機から取り出したスポンジやブラシは、いっけん清潔そうに見えるが、汚染はほとんど除去されていない。
 
そこで皿洗い機の代わりになる殺菌洗浄法を探し、家庭用電子レンジの殺菌能力を調べた。Bitton教授らは、家庭の台所で普通に認められる危険な細菌を大量にふくむ汚水を特別に準備しました。この汚水にスポンジやブラシなどを浸しました。そのスポンジやブラシから搾り出したサンプル液の細菌量を実験開始前に計測し、比較対照としました。同じ汚水に漬けたスポンジやブラシをさまざまな時間で電子レンジにかけ、同じような方法で細菌量を計測して、電子レンジの効果を判定しました。
 
電子レンジに2分間かけると、死亡事故をおこすような食中毒の原因となるサルモネラや大腸菌、ウイルスや細菌芽胞などの90%は死滅しました。大腸菌群の細菌は、マイクロ波に対して最も抵抗性が弱く、電子レンジに30秒間かけるだけでほとんどが死滅しました。細菌のウイルス(MS2ファージ)は、1〜2分間のマイクロ波の照射でほとんどが死滅しました。しかしながら、セレウス菌の芽胞は、最も抵抗性が強く、マイクロ波の照射による不活化には4分間もの時間が必要でありました。
 
Bitton教授らは、2001年9月11日以降に米国で起こったバイオテロで炭疽菌が使われたが、炭疽菌の芽胞は実験的に使用できないので、炭疽菌の代わりにセレウス菌を用いた。電子レンジに10分間かけることで、セレウス菌の全ての芽胞を死滅できたが、実際には炭疽菌を使用して電子レンジの効果を確認する必要があると述べています。
 
電子レンジは、金属製の器や水分のない皿みたいなものには使えませんが、短時間に照射されたものの中心から熱くする力があります。そのため合成のスポンジやブラシの類に水を含ませて、適当な時間だけ照射するとその水分の発熱でバイキンは死滅するというのが、Bitton教授らの狙いです。
 
 
今回の実験のようにスポンジやブラシの類には、電子レンジは格好の滅菌ツールになると思います。しかし、哺乳ビンなどの容器にも使えるという訳にはいきません。
10年以上も前に私も同じような試験をしたことがあります。細菌の培養液を入れたガラス製の三角フラスコを電子レンジにいれて殺菌ができるかを調べました。フラスコにいれた液量によりますが、電子レンジをかけていると、泡が出てきて、その泡がフラスコからあふれてしまいます。そのために、電子レンジの熱源のスイッチを入れたり切ったりして試験を行ないました。その結果、ある程度の効果はありますが、4分間もの長時間の照射は出来ませんでしたので、完全に死滅させることは出来ませんでした。
しかし、電子レンジと電気洗濯機を上手に使うと、洗濯機の内容量に匹敵する液量の細菌を培養することができます。病気や食中毒を起こすようなバイキンの培養に洗濯機は使えませんが、池や雨水にいる細菌などを増やすのには便利な道具になります。

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