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480. 結核の知識に乏しい研修医. 11-1-2007.
キーワード:結核 診断 研修医
 
ジョンズホプキンス大学内科学のPetros Karakousis助教授らは、米国の研修医の多くは結核の診断と治療についての知識が乏しいようであると発表しました(BMC Infectious Disesase 7:89,2007)。
 
最近になって多剤耐性結核感染が疑われていた米国の若い弁護士が外国へ新婚旅行に出かけたが、それを誰もが止めなかった。これがニュースとして大きく報道され、非難の的となったが、それほど驚くことではないのかも知れない。
 
なぜなら、米国の内科研修医131人を対象とした調査から、結核に関する20問のテストの全体的な正解率が55%であったからです。調査結果から、医学部を最近に卒業した研修医では、潜伏性結核の診断法と治療法に関する問題の平均正解率はわずか40%であった。
 
米国疾病管理センターCDCによると、米国では1,000万人〜1,500万人が潜伏性結核に感染しており、活動性結核に転じるリスクがあると推定されているため、今回の調査結果は重要な意味をもちます。
 
発熱、セキ、寝汗、体重減少の症状から活動性結核を診断する質問と、他人に感染する可能性が高い状況についての質問は正解率がやや高かったが、それでも57%にとどまった。また現在の治療薬の毒性やHIV感染と結核感染の関連についての質問は、2問とも平均正解率が63%であつた。
 
Karakousis助教授は、今回のテストの正解率の低さにさほど失望していないと述べています。なぜ失望していないのかその理由は、若い研修医は早急に専門医に師事して、感染症の管理、感染性の疾患、肺疾患の診断、隔離、治療についての助言を受けることが可能なためであるとしています。
 
米国の研修医が結核についての知識が乏しい原因は、結核の症例を診ていないからと思われます。日本国内でも状況は似ていると思います。
少し前にある大学病院で聴いた話です。アフリカから帰国した男性が不明熱で大学病院の内科を受診しました。しかしながら残念なことに当該内科の医師達は、間歇的に発熱を繰り返す特徴的な熱型を診たことも聞いたこともなかったので、診断に困ってしまったようです。大学院生の研修医が講義で聞いたことを思い出して、寄生虫学の教授を連れてきて、診断を仰いだ。この患者は「マラリア」ですと寄生虫学の教授は即答したとのことです。
また別な大学病院に救急車で腹痛と高熱の患者が運びこまれてきました。当直をしていた救命救急部のお医者さんたちは、いろいろな検査したり投薬をしたりできうる限りのことを試みましたが、容態は改善されませんでした。翌朝になって定年間近な教授が「これは正真正銘の虫垂炎」だと診断したときは、少し遅く腹膜炎を起こしていました。幸いにしてその患者さんは、一命は取り戻しました。
虫垂炎(俗にいう盲腸または盲腸炎)を診断できない内科医などは、何処を探しても居ませんでした。しかし、どうしたことか近頃は、この盲腸炎の患者が少ないのです。そのため研修期間中にも虫垂炎の患者に巡り合えませんので、本来はそれほど難しくない診断の筈の虫垂炎も診断が難しい病気になりつつあるようです。虫垂炎や結核が判らない研修医がいてもそれほど不思議なことではないものと思われます。時代がよくなったのです。しかし、あまり歓迎される話ではありませんが。

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