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481. 糖尿病性潰瘍のウジ療法.10-10-2007.
キーワード:糖尿病  MRSA  ウジ療法
 
「糖尿病」とは
 細胞のエネルギー源となるブドウ糖の血液中の濃度をコントロールしているインスリンというホルモンの異常により血液中のブドウ糖濃度が異常に高まる病気で、さまざまな特徴的な合併症をあらわす危険な生活習慣病の一つです。
 
「合併症」の一つ
 糖尿病が悪化して、毛細血管などで血液がスムーズに流れなくなり、手足の末端などから潰瘍(局所的な死)がおこることがあります。足の末端から腐りだしますと、足を切断するようなことにもなります。
血行障害によるトコズレや糖尿病性の足潰瘍の部位に「緑膿菌やMRSA」が付着して増殖しだすと、効果的な治療薬が少ないので、患者さんには心理的にも経済的にも大変な痛みを伴います。
 
「糖尿病性足潰瘍のMRSA療法」について
 病巣をウジで治療することについては、「244. 生きているウジを用いる新しい生物手術と389. 無菌ウジで傷口感染の減少 」ですでに触れています。今回ここで紹介したい情報は、多剤耐性菌の代表であるMRSAの感染病巣に生きているウジを付着させるとMRSA除去の治療効果が高いということです。
 
 英国マンチェスター大学内科のAndrew Boulton教授らは、MRSA陽性の糖尿病性足潰瘍患者を対象にウジ療法を行い、MRSAに対して優れた除去効果を示したことを発表しました(Diabetes Care 30: 370- 371, 2007)。
 
 臨床試験の対象者
 MRSAに感染した慢性糖尿病性足潰瘍が3週間以上持続している18才から80才までの13例を用いた。ウジ療法は、ヒロズキンバエの無菌状態の幼虫(病巣面積1センチに約10匹)を潰瘍部に4日間置いた。病巣部は、ウジを圧迫しないよう特殊な包帯で保護をした。ウジ療法は、MRSAの除菌が完了するまで何回か繰り返されました。実施回数の平均値は3回、平均実施期間は19日でありました。
 
 治療の成績
 検討した13例中12例で足潰瘍部からMRSAが完全に除去されました。除去に要した期間は平均3週間でありました。この数値は、従来の治療法の平均28週間と比べ大幅に短縮されました。特別な副作用も認められなかったとあります。
 今回の研究は、ウジ療法が糖尿病性足潰瘍に対するMRSAを除去することを始めて明らかにしたが、この成績が拡大しつつあるMRSA感染に対するきわめて安全な治療法として確立される可能性がある。MRSAを保有する糖尿病患者は近年増加傾向にあり、感染率はここ3年間で2倍に増加している。
 
 古くて新しいウジ治療法
 これまでに紹介した研究報告でも触れていますが、ウジ療法の創傷治療効果は、近年に発見されたものではありません。ウジ療法は、19世紀のナポレオン戦争の時代に既に認められていたようです。その当時の従軍医師は、傷を負ったが生き残った兵士らの傷口にはウジがわき、腐った組織や細菌を取り除くことで傷口を清潔に保ち、正常な組織のみを残して病巣部の治癒を促進していることを認めていたというのです。

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