487. 第三大臼歯の抜歯と関節炎. 1-14-2008.
キーワード:人工関節、親しらず抜歯、細菌感染、関節炎、
今回は抜歯の身体に対する悪影響について紹介します。放射線照射による治療や免疫抑制剤の投与などを受けている患者さんに対して、主治医の先生方は「治療中に歯科医院で抜歯や口腔外科なとで歯の治療を受けるときは、事前にお知らせくださいと言うことが多くなりました。このことは、口腔内細菌の直接的な体内侵入を恐れているとは必ずしも限らないようです。
ドイツ・ハンブルグ医学研究所のHella Dyck博士は、歯科手術が原因と考えられる39歳の男性患者の事例を発表しました(Hygiene & Medizin 31: 569-571,2006)。
この患者は、膝関節症以外に健康上の問題は全く見られなかった。さらに人工関節置換術に際しては、抗菌薬の予防的投与が実施されていました。化膿性分泌物からはβ溶連菌が検出されたため、Dyck博士は「口腔内処置が人工関節感染症の原因となった可能性がある」と指摘している。というのも、人工関節置換術の3か月後に3本の第三大臼歯(親しらず)が抜歯されており、その際、抗菌薬の感染予防的投与は実施されていなかった。
アメリカでは、人工関節患者に対して歯科手術を実施する際、少なくてとも抗菌薬の予防的投与を検討するよう推奨されている。この点に関して歯科医は、少なくても人工関節の有無を患者に尋ね、術後には適切な口腔内衛生対策と口腔粘膜の抗菌対策について説明すべきであるとしている。もちろん必要な歯科手術がある場合は、人工関節置換術の実施前にすませておくべきであると指摘されています。
ひざの関節に痛みを感じている人は、ある年齢になるとそれほど珍しい存在ではないかと思います。近頃は人工関節の良いものが開発されているため、割と若い人にも人工関節の置換術が行われるようになってきていると聞きます。膝関節症の治療として、人工膝関節に置換してもらったら、手術後に人工膝関節に細菌感染が起こってしまった。その原因としては、親しらずを3本も抜歯していたことが判り、この抜歯術が感染の原因であろうとの結論のようです。この問題に関しては、未解決の問題が多く残されているように感じます。しかし、歯科手術は、未知なる感染症の原因になる可能性は否定できないようですから、必要な歯科施術は事前に済ませておくべきなのでしょう。
|