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493. 牛乳の細菌がクローン病の原因.4-30-2008.
キーワード:クローン病、ヨーネ病、牛乳の細菌、パラ結核菌
 
クローン病とは
ヒトの原因不明の慢性の炎症性腸疾患で、世界的に広く存在します。クローン病の原因はまだ良くは判っていません。クローン病が最もよく起こる場所は、小腸の最後の部分の回腸と大腸です。しかし、口から肛門までの消化管のどの部分にも起こることがあります。初期症状で最も多いのは、出血を伴う慢性的な下痢、けいれん性の腹痛、発熱、食欲不振、体重減少などです。これらの症状は数日間から数週間続きますが、治療しなくとも治まります。しかし、一度発作を起こしただけで完全に回復することはきわめてまれです。
 
パラ結核菌とは
昭和29年発行の戸田新細菌学に「パラ結核性腸炎菌(牛腸炎菌)」という項目があり、半ページほどに簡単な説明があります(新しい版には記載がありません)。学名はMycobacterium paratuberculosis, Johne's Bacillusと記載されています。戸田新細菌学には次のような説明があります。その一部を紹介します。
1895年にJohneとFrothinghamが牛の慢性腸炎の腸内容から発見した抗酸性菌で、結核菌と比較してやや短く太い形で、培養はきわめて困難である。この菌は、牛に腸炎を起こすがモルモットには病原性を示さない(ヒト型結核菌はモルモットに病原性を発揮します)。わが国にはこれまでに本菌による流行例はない。本文では「パラ結核性腸炎菌(牛腸炎菌)」を単にパラ結核菌と呼ぶことにします。
 
牛の細菌がヒトのクローン病の原因
イギリス・リバプール大学のJon Rhodes教授らは、牛にヨーネ病を起こす細菌の一種がヒトのクローン病の原因となる可能性について消化器官系の学術雑誌に発表しました(Gastroenterology 133: 1487-1498, 2007)。
 
イギリスでは、クローン病は人口800人に1人が罹っていると言われる慢性の炎症性腸疾患で、疼痛、出血や下痢を伴います。
牛では、パラ結核菌がヨーネ病と呼ばれる下痢を伴う消耗性疾患を引き起こすと考えられています。このパラ結核菌が牛乳や乳製品を経由してヒトの体内に侵入するのではと考えられています。またクローン病患者の組織では、大腸菌の数が増加していることもよく知られています。
 
Rhodes教授らは、上に記載したような背景から、パラ結核菌について検討し、パラ結核菌から放出されるある複合分子が、細菌などを貪欲に食うマクロファージ(大食細胞)が体内で大腸菌を貪食する能力を妨げることを見出したとしています。
またRhodes教授は、「クローン病の組織から発見されたパラ結核菌が、どのような役割を果たすのかについては、これまで論議が分かれていた。この研究成果から、この細菌は糖類を含む複合分子を放出することが判った。この分子は、マクロファージが腸に内在する大腸菌を貪食する能力を抑制している、その結果大腸菌の数が増加する」と述べています。
 
研究チームは、パラ結核菌に対する抗菌薬の可能性について、臨床試験を開始しているとも報告しています。
 
 
クローン病は、慢性の炎症性の腸疾患で、疼痛、出血や下痢を伴いますが、最初は治療をしなくても治ることがあります。しかし、完全に回復することはなく、再発を繰り返しますから、一生お付き合いすることになります。
この報告にあるように、パラ結核菌が原因であることが判明したら、牛からの感染を予防できるようになり、さらに治療も可能となりましょう。しかし、パラ結核菌とは、結核菌に似ている細菌ですが、病原性はないものと考えられています。これまでに363. 細菌によるヨーネ病とクロン病.を掲載してあります。少し古い情報と比較されるのも面白いかと思います。

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