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496. 携帯電話と癌リスク.5-21-2008.
キーワード:携帯電話、高周波、耳下腺、発癌、
 
テルアビブ大学の腫瘍・放射線疫学科のS. Sadetzki博士らは、携帯電話を多用する人は耳下腺腫瘍の発生リスクが高いとの研究結果を学術雑誌に報告しました(Cellular Phone Use and Risk of Benign and Malignant Parotid Gland Tumors?A Nationwide Case-Control Study、携帯電話の使用と耳下腺ガン(良性・悪性)の発生リスク、Am. J. Epidemiol. 167: 457-467, 2008)。
イスラエルでは携帯電話の普及が早く、多用者の多い国として群を抜いており、高周波の暴露を受けている国民の数が多くなっています。また地方では設置アンテナ数が少ないため、地方で使用する携帯電話では通信の質を保つために高周波の出力を強くしているのだそうです。
 
現在、ほとんどの先進諸国では携帯電話が普及していると推測され、技術革新により携帯電話はより安価で、誰にでも入手しやすくなってきています。そのため、小児を含む大多数の人が携帯電話を利用し、その使用頻度は増加の一途をたどっているようです。
 
今回の研究には、良性耳下腺腫瘍の402例と悪性耳下腺腫瘍の58例の症例を対象とし、対照の健康人は18才以上の1266例と比較した。携帯電話の使用頻度、平均通話時間など、携帯電話の詳細な使用状況を被験者に質問した。
 
その結果、携帯電話の多用者は良性および悪性の耳下腺腫瘍に対する高いリスクにさらされており、携帯電話を顔の横に当てて使用する多用者は携帯電話を使用しない人に比べ、耳下腺に腫瘍が発生するリスクが約50%も増加することが突き止められました。
 
Sadetzki博士は、「もはや携帯電話のない生活には戻れないが、高周波への暴露を減らし、健康被害のリスクを最小限度に抑えるための警告を発することが必要だ」としています。
 
その対策として、常にハンズフリーの機器を使用し、会話するときは携帯電話を体から離しおくことを推奨している。また携帯電話での会話の回数を減らし、通話時間も短くすることも予防効果が期待できるとしています。
 
 
1年ほど前に「463. 携帯電話と発癌」という話題を紹介しました。この報告では、携帯電話と脳腫瘍などの発生リスクとには関係が見つからなかったとなっています。しかし、イスラエルでの今回の結果は、携帯電話との距離が一番近い耳下腺との関係を調べ、腫瘍の発生リスクが約50%も増加することを明らかにした。国内でのこのような調査研究は多分行われていないと思われます。しかし、いま現在「迷惑メール、出合系サイト」などから子供を守る対策が必要でないかとの論議が盛んにおこなわれています。Sadetzki博士は、論文の中で「携帯電話は親子間のコミュニケーションを容易にすることは認められるが、小児に何才から携帯電話を与えるかについては熟慮するする必要がある。小児がハンズフリー機器を使っているか、携帯電話を使う回数が多くないか、総使用時間が長くないかなど常に注意する必要がある」と述べています。

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