521. 子宮ガンウイルスでノーベル賞. 4-10-2008.
キーワード:ヒトパピローマウイルス、子宮ガン、予防と治療、ワクチン
ハラルド・ツア・ハウゼン教授に2008年ノーベル医学賞
スウェーデン・カロリンスカ研究所は、ハイデルベルクにあるドイツ癌研究センターのHarald zur Hausenハラルド・ツア・ハウゼン教授に、「子宮頸癌を引き起こすヒトパピローマウイルスの発見」したことに対して、2008年のノーベル医学賞を受賞すると発表した。
ハラルド・ツア・ハウゼン教授の研究成果は、ガン治療に大きな意味を持っている。ツア・ハウゼン教授は、30年も前からパピローマウイルスを研究してきた。このウイルスの中の特定のタイプが子宮頚頑を引き起こすことを初めて発見した研究者であり、彼の研究によって子宮頚癌のワクチンが開発されている。
ハラルド・ツア・ハウゼン教授のノーベル賞受賞は、ドイツ国で79番目になるようだ。ノーベル賞の授与は、1901年が最初であるが、この100年間の国別のノーベル賞受賞者数をインターネットで調べてみた。受賞者を輩出した国の数は、26カ国に及ぶ。この国の数は、途中で起きた戦争により、国が消滅した場合もあり、また移住先での研究で受賞している場合もある。
受章者数の多い上位5カ国は、下の表のようになる。第1位のアメリカは、断突に多く、200名を超える国はアメリカのみである。第2位から第5位までの「イギリス、ドイツ、フランスとスウェーデン」は、なるほどと合点がいく科学技術立国である。しかし、第3位のドイツの場合は、世界大戦で兵士として若者が多く亡くなり、さらに東西ドイツに二分されていた背景を考えると、これからのドイツは凄くなる可能性がうかがえる。
国別ノーベル賞受賞者数(1901〜2003年)
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順位 | 国 名 | 受賞者総数 | *医学受賞者数 |
1位 | アメリカ | 274 | 84 |
2位 | イギリス | 103 | 27 |
3位 | ドイツ | 76(+3) | 16(+1) |
4位 | フランス | 49 | 7 |
5位 | スウェーデン | 30 | 8 |
*:医学生理学賞の受賞者数
全体で26カ国、そのうち日本は11位である。
資料 文部科学省調べ(ノーベル財団資料 等)
(注) 受賞者の国名は国籍でカウントしている。
但し、二重国籍者は、出生国でカウントしている。
ハラルド・ツア・ハウゼン・ドイツ癌研究センター名誉教授の略歴
1936年にドイツ・ゲルゼンキルヘン生まれる。ボン大学医学部で学び、デュッセルドルフ大学微生物研究所に勤務した。その後、アメリカ・フィラデルフィア小児病院ウイルス研究所に転出した。1969年に帰国してブルツブルク大学で上級研究員を務めたのち、エアランゲン・ニュルンベルク大学教授となる。フライブルク大学を経て、83年からドイツ癌研究センターに勤務する。
ハイデルベルク大学のドイツ癌研究センター(DKFZ)とは、1983年から2003年の20年間、彼はDKFZ基金の理事会メンバーであり、その代表である理事長も務めた。2003年からツア・ハウゼン氏は、ハレにあるレオポルディナ科学アカデミーの副会長を務めています。
1970年代から性感染症ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)と、癌との関連性についての研究に取り組む。1983年に子宮頸癌の患者からHPVのDNAを発見した。翌年には子宮頸癌患者から採取したHPV16型と18型という子宮頸癌の原因となる2種類のウイルスの培養に成功した。100種類以上あるといわれるHPVのすべてが癌につながるわけではないが、現在も世界で毎年50万人以上がこのウイルスに感染している。子宮頸癌患者の大半からHPVが見つかっており、この研究成果が病気への理解を深め、感染を防ぐワクチン開発につながったとされる。
この功績が評価され、2008年にノーベル医学・生理学賞を受賞。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を発見したフランスのリュック・モンタニエとフランソワーズ・バレシヌシとの共同受賞となった。そのほか、ドイツ功労勲章、ローベルト・コッホ賞をはじめ、レイモン・ブルジーヌ賞、パウル・エーリッヒ賞、プリンス・マヒドル賞、ドイツ癌エイド賞、ガードナー国際賞など多数の賞を贈られている。
ドイツでは子宮頸ガンは、女性で三番目に多いガンである。毎年約6,500人が子宮頸ガンを発症し、約1,600人が死亡している。HPVワクチンを接種すると子宮頸ガンの発症リスクが約70%低下する可能性があると評価されている。
ヒトパピローマウイルス(HPV)については、ウイルス学的にもまだまだ判らないことが多く残されているし、培養することも困難なウイルスです。しかし、女性の子宮頸ガンは、HPVによって引き起こされることは確実であり、性交により伝達される性感染症でもあるらしい。日本国内でも女性で三番目に多いガンであるが、子宮頸ガンに対する無知が原因で検査の受診率が極めて低い。そのため多くの女性で気が付いた時には既に進行していて手遅れになるケースが多いと聞いている。
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