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523. A型ボツリヌス毒素が前立腺肥大症に有効. 5-10-2009.
キーワード:前立腺肥大、ボツリヌス菌、ボツリヌス毒素
 
シュレースウイッヒ・ホルシュタイン州立大学(独キール)の泌尿器科のS. Boy博士らは、色々な薬剤が効かない良性前立腺肥大症(BPH)患者に、A型ボツリヌス毒素の局所への投与が有効かも知れないと報告しました(Der Urologe A 47: 1465−1471,2008)。
 
BPHの治療には一般に降圧剤の一種のアルファー遮断薬などが使われます。これらの薬剤には、平滑筋の緊張を抑え、また前立腺自体を縮小させる作用があります。但し、低血圧、頭痛、インポテンスなどの副作用が懸念され、常に十分な効果が得られるとは限らない欠点もあります。薬物療法で効果が出ない場合には、前立腺切除術が検討されます。この場合にも出血、膀胱頸部の硬化、インポテンス、失禁などの副作用があると云われています。
 
BPHに対するA型ボツリヌス毒素の使用は、比較的に新しい治療法ですが、局所麻酔下で実施可能な最小侵襲の治療であることから注目されていています。注射は、経会陰的に行われることが多いが、直腸または尿道を介して行われることもあります。
 これまでに実施された複数の試験から、A型ボツリヌス毒素はBPH患者の大半に有効で、自覚症状だけでなく、前立腺容積、残尿量、最大尿流量などの客観的な指標も改善することが示されています。
 
注射部位数は、試験によって異なるけれども、2〜10部位ていどで、作用は少なくとも1年間は持続していた。副作用発現率は総じて低く、全身性の副作用はこれまでに報告されていない。
 
BPH患者に対するA型ボツリヌス毒素の作用機序はまだ解明されていない。Boy博士らは、平滑筋の緊張を低下させることによるものと推測しているが、前立腺細胞の委縮によるものとの報告もあります。
 
A型ボツリヌス毒素の注射は、将来的にBPH患者に対する有効かつ副作用の少ない治療法となりうる可能性を秘めていますが、一般的に推奨するには時期尚早であり、今後さらに比較試験を実施し、データーを蓄積していく必要があると述べています。
 
 
ボツリヌス毒素
食中毒の原因菌としてよく知られているボツリヌス菌は、非常に強い神経毒であるボツリヌス毒素を産生する。ボツリヌス毒素はタンパク質で、細菌毒素としては最初に結晶化された毒素です。
この毒素の作用は同じであるが免疫的な抗原性が違うA, B, C, D, E, F, Gの7種の毒素が知られています。その内でA型の毒素はこれまで知られている全ての生物毒の中で最も毒性が強く、ヒトに対する致死量は1μg(1gの100万分の1)といわれています。この毒素は加熱に比較的弱い(100℃で1分、85℃で10分)が、酸性では抵抗性です。
また、ボツリヌス毒素は、神経-筋接合部や自律神経のシナプスへ作用して、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を阻害するので、弛緩性の麻痺をおこします。そのため筋肉の緊張などを和らげる目的でA型ボツリヌス毒素の注射が行われています。

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