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528.アルコール飲料の功罪2題.7-1-09.
キーワード:アルコール、平均寿命、乳ガン
 
@1日グラス半分のワインで平均寿命が5年延長
オランダのワーヘニンゲン大学栄養学のMarinette Streppel博士らは、1日にワインを最高でグラス半分まで飲む男性の場合、平均寿命が5年も延長する可能性があると発表しました(J. Epidemiol. & Comm. Health 63: 534-540, 2009) 。
 
Streppel博士らは、無作為に抽出した男性1,373例の心血管系の状態と50才時の平均余命を、1960年から2000年の40年間に継続して調査した。
 
アルコールが心血管系疾患および脳血管系疾患による死亡と全ての原因による死亡リスクに影響を与えるかを明らかにする目的で、アルコールの摂取量、その種類、摂取期間、体重、食事内容、喫煙歴の有無と期間を追跡調査した。40年間の調査期間に1,130人の男性が死亡し、その半数超は心血管疾患が原因であった。
 
さてその調査から判明した事柄は、次のようであった。
@アルコールを摂取する男性の割合は、1960年の45%から2000年の86%にほぼ倍増し、ワインを飲む割合は2%から44%に急増した。
Aいずれの種類であっても毎日少量(最大アルコールとして20g)かつ長期のアルコール飲酒者は、非飲酒者と比べて平均寿命が約2年延長した。20g以上の飲酒者は、平均寿命の増加の程度はわずかであった。
Bワインだけを1日にグラス半分ほどを飲む男性は、ビールと蒸留酒を飲む男性と比べて約2.5年長生きし、非飲酒者と比べ約5年間も長生きした。
Cワインの摂取は、冠動脈疾患、脳血管疾患、その他全ての原因による死亡リスクの低下と強く関連していた。
Dこれらの結果は、社会経済的地位、食事などのライフスタイル、ワイン摂取と健康の関係に影響すると考えられてきた要因などに影響を受けなかったとのこと。
 
Aアルコール1日一杯で女性の発ガンリスクが増大
イギリスのオックスフォード大学のNaomi E. Allen博士らは、女性ではたとえ1日一杯のアルコール摂取でも、ガンのリスクを増大させるとの結果を発表しました(JNCI 101: 296-305, 2009)。
 
Allen博士らは、1996年から2001年に英国の乳ガンスクリーニング・クリニックで検査を受けた女性128万296人(45才から75歳)の記録を調査した。この数値は、この年齢群の英国人女性の約4人に1人が対象となっていることを意味する。平均7年間のフォローアップ期間中に6万8,775人がガンと診断された(英国ガン登録者)。
 
検討の結果、次のような成績が明らかになった。
@1日1杯(アルコール10g相当)の飲酒は、1000人当たりの年間11例の乳ガン増加と関連することが認められた。
A口腔ガンと咽頭ガン、直腸ガンは、1日一杯の飲酒では1例、食道ガン、肝ガン、喉頭ガンでは0.7例の増加であった。
B飲酒が一杯以上の場合は、さらに多くのガンが発症することも明らかになった。
C飲酒量が一杯増えるごとに追加で発症するガンの数は、1000人当たり15例増えた。
Dまた観察されたリスク上昇は、摂取するアルコールの種類とは無関係であった。
 
 
アルコールとして20グラム(クラス半分)のワインはある意味で健康(平均寿命として)に良い影響を与えるが、10グラム(クラス一杯)の飲酒は女性の発ガンリスクを増大するとの一見相いれない調査結果を紹介しました。このアルコールの功罪は、アルコールとして10グラムでは悪い結果を生み、20グラムのワインでは良い結果を生むとも解釈できる。しかし、2つの成績は、大規模研究でまた長期間の観察であるから、簡単に否定することはできないと思う。これまでにも「104. 飲酒がピロリ菌H. pyloriの感染を予防?383. 赤ワインで前立腺癌リスク低下」と題する報告を紹介してあります。これらと合わせて比較検討されてはいかがでしょうか。

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