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533. イグ・ノーベル賞授賞式に参加して.10-15-09.
キーワード:イグ・ノーベル賞、ハーバード大学、オペラ
 
イグ・ノーベル賞への招待
自分でもよく知らなかったイグ・ノーベル賞と呼ばれるものを貰ってきました。受賞者の選定は、どのような経緯を経て誰が決めていのか、受賞の意味は何であるのかなどについては、いまも私には判りませんし知りません。お恥ずかしい話です。
 
しかし、何とはなしに判ったことは、毎年1000件にもなる候補論文を選び出し、何段階かの選考委員会の選考の後、そのなかから「彼らの独自の基準(これが不明)」に合致する10名の個人または団体を受賞候補として選び出しているようです。
 
4月上旬のある日、イグ・ノーベル賞事務局から「あなたはイグ・ノーベル賞の受賞候補者にノミネートされています」との連絡が入り、最終的に決定したらこのイグ・ノーベル賞を受けてくれますかとの問い合わせがありました。受賞候補者に選ばれていることを絶対に授賞式まで秘密にしておいてくださいと強くクギを刺されました。
 
今年2009年度は19回目の授賞式であるとのことおよび1000件のうちの全体で10名だと聞いて、ありがたく頂きますと答えました。その後にもあなたはイグ・ノーベル賞の受賞者に決まりましたとの連絡は全くありませんでした。
 
次から次へとメールによる情報(Infprmation)が届くようになりました。例えば、10月1日に開催されるイグ・ノーベル賞の授賞式では、ノーベル賞受賞者からイグ・ノーベル賞の賞状や副賞が贈られます。その時60秒以内で受賞の挨拶をしてください。また10月3日には5分間で受賞記念講演をお願いします。但し、交通費は自己負担でお願いしますともありました。
 
スピーチは、まず面白おかしく聴衆を笑わせるような導入部で始め、そのうちになるほどと考えさせるようなスピーチを期待していますとの希望が書き添えてありました。英語でなくても聴衆を笑わせるようなスピーチなんてとても難しくて出来る筈がないと私は思いました。スピーチの原稿とPPT(パワーポイント)などのスライドの原稿は、X月X日までに事務局に届けてくださいとのことでありました。
 
イグ・ノーベル賞の受賞式
米国東部のマサチュセッ州ボストン市の郊外には、米国屈指の名門校ハーバード大学があり、そこに隣接してこれまた米国屈指の名門校マサチュセッ工科大学(MIT)などが数多くあります。そのハーバード大学にサンダース・シアターと呼ばれる古色豊かな大ホールがあります。この大ホールでイグ・ノーベル賞の授賞式が行われました。
 
一部の関係者を除いて一般の人達は、3500円ぐらいの入場料を払って授賞式の会場に入ります。たちまち1,500席の会場は満席になり、立っている人も大勢いました。
 
聴衆からみてステージの右側に20人ほどのノーベル賞受賞者が3列に着席し、
受賞者10名はその後ろに二列に座りました。ステージの真ん中から左の方には、実に様々な道具があり、また多くの人たちが椅子に掛けていたり立ったりしていました。
 
ステージの左右と中央に身体全体を銀色に染めた3人の女性が強力な懐中電灯を手に持って立っていました。シルクハットとタキシード姿の実行委員長が演壇に立ち、第19回イグ・ノーベル賞2009の開催を宣言しました。ノーベル賞受賞者の紹介から始まり、色々な組織の役員や委員、オペラ歌手や楽団員、ボランティアの方々が紹介され、賑やかうちにイグ・ノーベル賞の授賞式が始まりました。
 
一呼吸おいてオペラの前奏が始まり、男女2人のオペラ歌手の美声がホール一杯に響き渡りました。そのオペラの適当な合間に受賞者が1人ずつ呼ばれ、各受賞者のお付きの者に導かれてステージの真ん中に立ちます。受賞者の氏名、所属、受賞の内容などがシルクハットとタキシード姿の実行委員長から紹介され、ノーベル賞受賞者の先生と握手をしてから副賞品を頂きました。
 
次に受賞の挨拶をするのですが、会場の聴衆が大笑いをするものですから、時間がどうしてもオーバーして60秒以内では終わらない人が時として出ます。すると小学ニ三年生と思われる小さな女の子がステージの裾から現れて「話をやめてください、私と一緒に壇からおりましょう」とカン高い大きな声で叫び、講演者は女の子に根負けしてスピーチを終わらせざるをえなくなります。するとその仕草を見ていた聴衆がまた大笑いをするのです。
 
田口文章さんの出番です
サンダース・シアターの入口を入ったところの受付で「田口です」と名乗ったら、「田口さんは生物学賞の受賞者」です、また「田口さんの業績は一番素晴らしいのでファイナルを飾ってもらいます」と最初に言われました(一番の高齢者へのリップサービスと思われる)。最後の受賞者ですから、全員のスピーチなどを聞いて参考にする暇がありました。
 
私が紹介されてノーベル賞受賞者の先生の前に立ちましたら、その先生は「生物学賞の受賞おめでとう」と力強く握手をしてくれたのは良いのですが、いつまでも手を放してくれないのです。二人で手を上下させていつまでも手を握っているものですから、聴衆はヤンヤと囃したてていました。そこでサイコロ2個からなる奇妙な副賞を頂きました。
 
日本から手のひらサイズの小さなパンダの人形を持参していましたので、予定外の行動なのですが、そのパンダを聴衆に見せながら、本日ここにお集まりの皆様に私に代わってパンダがご挨拶いたします「Risky(今年度の共通テーマ、意味不明)」と言いました。これがどうしたこと大変に受けました。
 
またパンダは、面白い魅力的な外観の動物だが、パンダの糞は動物の糞のようには見えず、笹の葉や茎などがほとんど未消化のまま排泄され、その糞は動物の糞特有の悪臭がないので、良い実験材料でその上取り扱いが容易でしたと言うと、非常な笑いを誘うことができました。
 
意外なところで聴衆が大笑いすると、どうしても一息いれてしまうものですから、予定していた60秒のスピーチの途中で小さな女の子が私のそばに来て「話をやめてください、私と一緒に壇からおりましょう」とカン高い大きな声で叫び始めました。もうすぐ終わるから数秒静かにしてくれないかと諭しても叫び続けるものですから、それではこのパンダをあげるから黙ってくれと言いましたが効果はありませんでした、それで急きょスピーチをやめました。女の子はパンダを誇らしげに持って行ってしまいましたので、これを見ていた聴衆から大喝采を貰いました。
 
イグ・ノーベル賞受賞記念講演
10月3日の講演会は、会場をハーバード大からMITに移し、500人ほどが入る階段式のホールで行われました。席に座れないで立っている人が大勢いました。私はまた最後の発表でした。
 
少しふざけて「Feces Innovation Today」というタイトルで、パンダとシロアリの糞から分離した細菌たちが地球環境の保全に貢献し、日本国内で排出されるバイオマスを処理して回収できる水素ガスで100万台の水素燃料電池車を150日間走らせることができると話しました。予定の5分間で終了できました。
 
その後にフロアーから多くの質問が出されました。米国東部、特にニューイングランド地方の人達の会話のスピードは、南部の人達と比べて非常に早口なのが特徴です。そのため一部の質問は聞きとれませんでした。すると司会役がこんな意味の質問だと言い換えてくれました。それで何とかその場を過ごすことができました。
 
終わりに一言
このイグ・ノーベル賞という企画は、一部ふざけているように見えますが、半分は科学的であり真面目なものでした。この種の企画や発想は、日本人には絶対にできないもので、完全に「ヤンキーのエンターティメント」だと思いました。スウェーデンで行われるノーベル賞受賞者の発表直前にハーバード大学で行い、オペラの演奏が授賞式に色合いを添えているなどよく考えられているとの印象を受けました。
 
賞状には4人のノーベル賞受賞者がウィトネス(証人)としてサインがしてありましたが、副賞は一辺が20センチぐらいの黄色いスポンジのサイコロが2個組み合わされた奇妙な意味不明なものでした。このユーモアを解せなくて「なんだこんなものと」と怒ってはいけないのだと自分に言い聞かせながら帰ってきました。
 
学術的な価値の低い実験成績と考えられる内容であったとしても、文字にして書き残しておくと、なにかの折りに誰かの目に留まることがあり、記録して残しておくことの意味を教えられたような気がしました。
 
またこれまでに私は自分の発表を女房に聞いてもらったことはありませんでした。自分の年齢や体調を考えて、今回は女房と一緒に出かけ、人生における最初で且つ最後かも知れない講演をイグ・ノーベル賞の受賞記念講演会の会場で聞いてもらいました。
 
 
 

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