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549.バナナでHIVを予防.6-3-10.
キーワード:エイズウイルス、HIV、レクチン、エンベロープ、細胞侵入阻害
 
ミシガン大学のDavid M. Markovitz教授らは、バナナから抽出したレクチン(BanLec)がエイズを引き起こすウイルスHIVの細胞侵入を阻害する抗ウイルス剤として有望であると発表した(A Lectin Isolated from Bananas Is a Potent Inhibitor of HIV Replication. J. Biol. Chem. 285:8646?8655.2010) 。一風変わったこの研究成果の概要を紹介します。
 
最初にレクチンについて簡単に説明します。レクチンとは、細胞膜を形作っている糖たんぱく質や糖脂質の糖の部分に結構するタンパク質の総称です。細菌、植物の種、動物の体液や組織中にレクチンは含まれ、構成糖と結合することにより、細胞の凝集や細胞の分裂などを引き起こす作用があります。バナナから抽出されるバナナレクチン(BanLec)は、ウイルスの粒子表面にあるエンベロープの構成糖のマンノースと結合すると云われています。
 
エイズのウイルスHIVは、依然として米国でもまん延しており、経済的に貧しい国では爆発的に感染者が増加し、莫大な治療経費と人的被害をもたらしています。コンドームの使用は、きわめて有効なのですが、正しく使用されなければ高い予防効果は期待できない。性行為において女性がほとんど支配権を持たない発展途上国では、コンドームの使用頻度は低いようです。そのため女性が自分で塗布でき長時間効果が持続する膣殺菌薬ができれば、非常に有効な選択肢になるだろうとMarkovitz教授は考えています。
 
膣と直腸からのHIV感染を阻害するために、標的細胞にHIVが侵入するのを阻害する物質が有望な候補となりえると考えられ、そこで植物に含まれる化学物質であるレクチンに注目したと述べています。
 
新鮮分離株および実験室継代株のHIVのエンベロープ糖タンパク質gp120のマンノースにBanLecは結合し、ナノモルからピコモルという非常に低濃度で抗ウイルス作用を示し、HIVのエンベロープと結合してHIVが細胞に侵入するのを阻害する成果が得られた。この成績は、これまでの抗HIVウイルス剤として使われている化学物質と同程度に有効で、性行為を介した感染の拡大防止に使用できることを示した。
 
Markovitz教授らによると、BanLecを用いた治療薬は合成化合物である現在の抗HIV薬より安く製造できるだけでなく、ウイルスが抵抗性を獲得しにくく、予防範囲も広い可能性もあると述べている。さらにHIVに対して60%の効果しか持たない殺菌薬でも20%の人が使えば、3年間で最大250万人のHIV感染を防ぐことができると云う。今回得られた成績から、BanLecは安価な膣殺菌塗布薬として使用できるかもしれないと期待を寄せている。
 
 
BanLecを膣や直腸に塗布することによりHIVの細胞への侵入を阻害することで、性行為を介したHIVの感染が防げるという趣旨の論文です。しかし、一回の塗布でどのくらいの期間に有効なのか、また一回に放出される2〜3ミリの精液中に含まれるHIV(ウイルス粒子数は不詳) の全てに有効なのかについての記載はない。1日も早く臨床試験が実施され、有効な成績が得られることを期待したい。

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