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559. 歯磨きの回数と心疾患との関連
キーワード:口腔衛生、歯磨き、心疾患、関節リウマチ、抗腫瘍壊死因子
 
※歯磨きの回数の意義
ロンドン大学のRichard Watt教授らは、歯磨きを1日に2回以上行う人に比べ2回未満の人では心疾患のリスクが高まることがわかったとする成果を発表しました(Tooth brushing, inflammation, and risk of cardiovascular disease: results from Scottish Health Survey. BMJ 340; 2451, 2010)
 
この20年間で心疾患と歯肉疾患との関連性について関心が高まってきています。口腔や歯肉を含む身体の炎症が血栓の形成に重要な役割を果たすことは確認されていますが、ここに紹介する調査研究は、歯磨きの回数が心疾患の発症リスクに関係するかを調べた最初の試みであります。
 
Watt教授らは、喫煙、身体活動度、口腔衛生習慣などのライフスタイルに関するデータを解析しました。歯科の受診頻度(6カ月ごとに少なくても1回、1〜2年ごと、めったに行かないか全く行かない)と、歯磨き回数の頻度(1日に2回、1日1回、1日1回未満)を被験者に質問しました。
 
また看護師が、同意が得られた被験者から心疾患の既往歴と家族歴、血圧に関する情報を収集し採血を行った。採血の目的は、身体の炎症の程度を明らかにすることです。インタビューで得られたデータを2007年12月までのスコットランドにおける入院と死亡のデ―タと関連つけました。
 
その結果、歯科受診の頻度が6カ月に1回と回答した群の62%と歯磨きの頻度が1日2回と回答した群の71%は、口腔衛生習慣がおおむね良好でありました。社会階級や肥満、喫煙歴、心疾患の家族歴などの確立された心疾患危険因子でデータを調整したところ、歯磨きの頻度が低い被験者では1日2回の被験者に比べて心疾患発症リスクが70%も高かった。口腔衛生状態が不良な被験者はC反応性タンパク(CRP)やフィブリノーゲンなどの炎症マーカーも陽性でした。
 
Watt教授らは、「今回の調査結果から、口腔衛生(マウスケア)と心疾患発症リスクとの関連性が明らかになった。今後さらなる調査を行い、今回観察された口腔衛生習慣と心疾患との関連が、実際の因果関係にあるのか、単なるリスクマーカーに過ぎないのかを確認する必要がある」と結論付けています。
 
※歯周病の治療の意義
ケースウエスタンリザーブ大学歯学部歯周病学のN. F. Bissada教授らは、関節リウマチ患者に歯周病の治療をほどこすと、関節リウマチの症状が著名に改善されたとする成果を発表しました (Periodontal Therapy Reduces the Severity of Active Rheumatoid Arthritis in Patients Treated With or Without Tumor Necrosis Factor Inhibitors. J. Periodontology 80 :(4);535-540, 2009) 。
 
歯周病と関節リウマチとの関連性は以前から指摘されてきています。そこでBissada教授らは、今回の研究で重度の歯周病を併発している中等度あるいは重度の関節リウマチの患者40例を対象に調査研究を行いました。
 
外科的治療と口腔衛生の指導を行う歯周病治療群20例と歯周病の治療を行わない歯周病未治療群20例に被験者を無作為に割りつけました。なお全例が抗関節リウマチ薬による治療を受けており、20例では無作為に割りつけられる前から抗TNFα製剤が使用されていました。
 
その結果、6週間後、歯周病治療群では、ベースライン時と比べ疾患活動スコア(DAS28)と赤血球沈降速度および血清中のTNFα値が有意に低下しました。一方、歯周病未治療群ではこのような変化は認められませんでした。また歯周病治療群では抗TNFα治療によって出血(BOP)、gingival index (GI)が改善したが、歯周病未治療群では有意な改善は認められませんでした。
 
今回の結果を受けてBissada教授らは、「関節リウマチ患者の歯周病を治療すると、疼痛、腫脹関節数、朝のこわばりなどが軽減されることがわかった。これは新しい治療介入と云える」と結論しています。
 
 
一般人の予想をはるかに超えて歯周病(正確には歯周病菌)が全身疾患に深く関与していることがしばしば報告されるようになりました。今でもこれらの成果をあまり信用しない医科学者が多いのも現実にあるようです。しかし、ここに概要を紹介した報告は、それなりに権威のある医学雑誌に掲載されたものです。したがってでたらめな研究ではありません。以前にもこの曖昧模糊の458. 歯周病菌の心疾患や糖尿病との関係.と、435. 口腔内の細菌が全身病の原因.に歯周病菌の悪害について触れています。これらと合わせて読んでいただくと、ある程度納得が得られるものと期待しています。

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